海の上のピアニスト


監督 ジュゼッペ・トルナトーレ 出演 ティム・ロス 音楽 エンニオ・モリコーネ

mark(2001年2月9日)
 導入部は楽しかったのですが、だんだんと観ているうちに主人公がかけ離れていってしまいました。これがイタリア的な大味さといったものでしょうか。アメリカ人の黒人ジャズ・ピアニストとの一騎討ちのあたり、何だかイタリアの意地のようなものを(皮肉ですが)感じてしまう一幕もあり、もう少し欲をいえば音楽の部分を密に描いてほしかったと思います。
 この点で、どうも映画の主題が私にはつかめなく、1900の"音楽"の部分が"あちら側"に留まっていたりするのは食い足りない。では、恋愛映画なのか、といえばそうでもなさそうだし・・・もっとも、全篇に流れる音楽は文句なしに一級品だし、イタリア人の陽性の心情が随所にあるから、そういう意味を含めて全体これは「音楽映画」なのでしょうね。
 ちと辛いですが採点は★★、プラス音楽に★です。
ガーゴイル(2001年2月7日)
 いいたいことは分かりますが、作品としての説得力が欠けていたように思われます。単に船に置き忘れられた赤ちゃんが、実は本家のジャズピアニストを凌ぐほどの天才で、にもかかわらず、誰にも知られずその生涯を船の中で終えた。ってことでしょう?それだったら無名で、それこそホントの意味で孤独だった男の一生を追いかける方が、華はないけどそれだけメッセージの本質が現れると、僕は思うのですが..
 ピアノの才能の説明不足といい、ラストの爆発といい、やっぱり僕は★★です。
 でも、好きな人と離ればなれになるシーンには、正直、胸が痛みました。
とみい(2000年3月23日) tominco@pop11.odn.ne.jp
この映画の結末に疑問や不満をもつ人は多いようですが、最後に現われた主人公は、友人に対しての礼儀で出てきた、「幻影」のようにみえた(歳くってなかったし)。
本当に彼は生きた存在だったのか、ということが、どっちでもいいじゃん、と思えた私は、この映画は素直に泣けました。
★★★★★
エイジ(★)(2000年3月19日)
eiji@jf6.so-net.ne.jp
ピアニストに感情移入できませんでした。
最後に、死ぬところも、船から降りれないシーンもそれが、どうしたというかんじ。
決して、悪い作品ではないのですが。
同じ監督だけど、ニューシネマパラダイスは、ものすごく好きなんですけど、この作品は、感動できなかったな。
ぼくと、同じく、いまいちだった人がっけこう、いて安心しました。
せつなさだったら仕立て屋の恋のほうがせつなかったな。
竜崎麗香(★★★★)(2000年2月26日)
toshi.ow@jasmine.ocn.ne.jp
賛否両論の結末ですが、私は「否」というより、「?」です。1900に 感情移入できず、彼の言葉は私の心には浸透してきませんでした。 トルナトーレ監督の独壇場であるはずのラストとタイトルロールの時 間、私はただ淡々と画面を見つめるしかありませんでした。
思うに、私は1900のいうところの「無限の世界」に初めから存在し ていて、船という限定された空間でのみ生きてきた彼の心理を理解す るだけの想像力に欠けているのかも知れません。周囲ですすり泣く人 が続出する中、「私は映画を見る価値のない人間なのだろうか」「想像 力が貧困なのかも」と、映画に集中できず更に引いてしまうという悪 循環(爆)。
結末に至るまではストーリー、映像、音楽すべてに魅了され、映画の 醍醐味を久しぶりに味わわせてもらいました。ティム・ロスとコーン役 の俳優さんの演技に脱帽です。
ピアノ対決のシーンですが、1900が最後に弾いてみんなが拍手を 送った曲ってそんなによかったですか?私は黒人のおじさんのジャズの 方が感動したんですが・・・
colles(2000年1月21日)
colles@sam.hi-ho.ne.jp
☆☆
この映画もともと「Legend of 1900」っていう題目なのに、それがどうして、「海の上のピアニスト」になっちゃうのだろう。
日本では「海の上のピアニスト」のほうが客がはいるでしょうけれど、内容にぴったりしているのは「Legend of 1900」です。
彼がピアノ弾きだったていうことは、つけたしにすぎないもん。
それがちがうもの、例えば、彼が絵書きであったとしても、全然かまわないんじゃない。
ピアニストなんて題目につけられたら、彼がどういうふうにピアノとであって、どういうふうに音楽とかかわって、いったのか、とか、もっと、緻密に描かれていることを期待してしまう。
結局どうでもいいけど、主人公がどんな人なのか私にはよくわからなかった。
それはLegend故なのかもしれないが・・・・、あくまで、Legendでなければならない、Legendであるはずの各場面と、そうでない場面を私は、きりわけて見ることができなかったから、この映画を、すっかり楽しむことは、できなかった。
jean(1999年1月28日)
jean@pop21.odn.ne.jp
美しい物語だと思いました。美しいだけでなく、ぬくもりがあってほろ苦くもあり、ただ、映画を見ている間は不思議と冷静でした。私の涙腺が鉄でできているせいかもしれないけど、感情を揺さぶられそうな場面が出てくるたびに、作り手の意図が気になって、つい映画そのものから注意がそれてしまいました。少年が初めてピアノを弾くシーンなど、ああ、そうきたか…これはそういう映画なのか、と別のことで感心してしまい、やっぱり集中できませんでした。こういう見方は、映画の的を得ていないかもしれないけど、この物語が完璧すぎるので仕方ないです。限られた鍵盤の上で、無限の物語を奏でる男。せまい船室にいながら、どこまでも遠くへ旅することができる…こんな自由ってあるだろうか。主人公の親友だった男も、楽器屋の主人や船の持ち主に、海の上で生きたピアニストの話を語って聞かせるけど、みんな「それは本当か」といぶかりつつ、聞き入ってしまう。心を奪われてしまう。私も聞き手の一人になりたかった。そうしたら、泣いたかもしれません。
もちろん、印象に残った映像もありました。時化の中でピアノを弾くところもよかったけど、そのすぐ前に、ティム・ロスが鼻歌でも歌うような感じで、大揺れする床の上を歩いていくところ。今思い出しても、笑いがこみあげてきます。このとらえどころのなさ、「グリッドロック」の時と同じ。あっちはヤク中のちんぴらだったけど…。(あ、でもキーボード弾いてたっけ)今回のティムは口は悪いけど、ピアノを弾く姿、様になっていました。役どころのせいか、どことなく女性的で、首すじなんかきゃしゃだし、シャツのそで口から白い手首の内側が見えて、なんかもう、思い出すだけで胸がドキドキしてもう、ちょっと今晩は眠れそうにありません。
satie(1999年12月25日)
satie@xa2.so-net.ne.jp
(この映画を採点したりすることは私には出来ません)
ピアノを弾いて生計をたてている私にとって、とても衝撃的な映画でした。
涙が流れる以前に、体中が震えて仕方がありませんでした。
私がコンサートでフルコン.ピアノの前に腰を下ろした瞬間に88個の鍵盤と、ほぼ2mの奥行きをもつ楽器がとてつもない荒野に思われ、冒頭の音を弾き出すのをためらうことがよくあります。
また、演奏会の前夜など高音部と低音部の弦が入れ替わっていたり、鍵盤の音の配列がメチャメチャになっていたり、演奏中にピアノが移動したりと、あり得ないアクシデントの悪夢にうなされることもしばしばです。
このことは、偏に演奏する自分と楽器とのあまりにも大きな隔たりに他ならないのです。
そんな卑小とも言える私自身に、この映画は大きな一撃を加えた作品でした。
船を下りることを決心したピアニストはタラップを静かに降りてゆきます。
タラップの途中でたちずさむ(アンゲロプロスの作品から言葉を借用しました)彼を見ながら心の中で叫んでしまいました。叫んだよりも祈ってしまったのでしょうか?
「勇気を出して!」だったのか「ダメだ!」だったのか自分でもよくわかりません。
おそらく彼は、地上に降りたったときから音楽家としては生きて行けないでしょう。
何故なら彼の目前に広がる摩天楼さながら、彼にとってこの地上には最早、見えるものしか見えず、聞こえるものしか聞こえなくなってしまった、目と耳の退化した人間がいるばかりだからです。
ハイテクに援用された音と、巨大なトリックに慣らされた目や耳に、海の風景や声を読みとったり聴き取ることが恐ろしい程困難になっているのです。
彼の超絶技巧を駆使した演奏をもてはやす人達はまだいるかも知れませんが、彼の演奏のなかの歌を聞き取る人は、もう誰もいないかも知れません。
ピアニストの「楽器は小さくても演奏する人間が無限なのだ」と言うセリフは私にとって余りにも痛烈でした。
天国には左だけでも、右手だけでも弾けるピアノがあることを信じています。
彼は彼自身がピアノであり、音楽であったからです。
かっくん(1999年12月24日)
kao@bio.ne.jp
あ〜せつない。せつなすぎるから、ネタバレしちゃうかもしれない。
船で出会ったあれだけの人を感動させておいて、普通だったら、陸で話題になって、彼にスポットが浴びるでしょう?
みんなの中に最初から存在してないなんて嘘だ嘘だ〜!
と、後からは色々感じたものの・・。
おもいっきり彼を孤独にすることで、この映画のストーリーは流れていくんですけど、曲がいいから、見ている間はすっかり魅了されてしまったな〜。そんな矛盾はおかまいなし。
人間観察によってできる彼の作曲シーン、大好きだな、ああいうの。
船に積もった雪のシーンも、素敵だった〜。映像的にはとっても素朴だったのに、すごく味があった。

これ以降は、ネタバレかも・・。
あ〜。主人公に、せめて両想いの恋愛をさせてあげたかった。
あの彼女との出会いには、涙が出てしょうがなかった。。。
彼にとって、船の世界が全てならば、私だったら・・・・・
私が友人なら・・・
他の船に移す!!あれだけ才能があるんだもの。陸がだめなら無理におろさなくったっていいじゃない。彼にとっては不幸なんだから。戸籍がなくったって、自由の国アメリカなら、そのくらい分かってくれる国でしょう。
って、これをいっちゃおしまいか??
エンドロールまでずーっと座ってみていた映画は久しぶりだったから、星は4つかな??
しーくん(★★★★)(1999年12月23日)
kanpoh1@dus.sun-ip.or.jp
満員の船のデッキで、ある若者が自由の女神を見つけて叫ぶ。「アメリカーーー!」と・・・少し霧がかかった中に自由の女神像が現れる。乗客はその像に向かって手を振る、叫ぶ!中には涙ぐむ人もいる(その気持ちわかります)・・・やがてニューヨークの街が現れる・・・実に美しいシーンで始まるオープニング。このシーンで、早くもこの作品を好きになりました。私は音楽映画が大好き。今年は『レッド・バイオリン』で、バイオリンが奏でる素晴らしい音色を堪能しました。そして今回はピアノ。リチャード・クレイダーマンのコンサートに行ったことがありますが、10本の指と88個の鍵盤から発せられるその音色に涙がふわっと湧き出てきたのを覚えています。好きなシーンはパンちゃんと同じで、ストッパーをはずして、まるで遊園地の“コーヒーカップ”に乗っているような感じでピアノを弾くシーン。その上を大きな大きなシャンゼリアがブランブラン揺れているのが何ともユニーク。今日見た劇場は、2年ほど前に出来たシネコンでしたが、館内にはジェットコースターも走る遊戯施設の中にあるので、ちょっと敬遠してました。予想した通りコースターが通るたびに、ゴーーッという低音と共に、客席がビリビリ振動する。しかし、それがかえって船内の中にいる様な気分になり、今回に限っては気分は最高!。もうひとつのお気に入りは、これもパンちゃんと同じですが、窓越しに見える女性への想いが、オリジナルの曲となって完成していくシーン。彼女はドキッとするほど美人では無い。しかし男性をひきつける魅力を持っている。だから私もおもわず見惚れてしまう・・・。それでは逆に、嫌いというか少し興ざめしてしまったシーン、それは天才ピアニスト、ジェリー・ロール・モートンとのピアノ対決。
<注:ここからは強烈ネタバレ有り!!!>
確かに2人の競演は見ていてスリリングではあるが、最後のナインティーン・ハンドレッドの演奏は、誰よりも速く鍵盤をたたける事のみにこだわりすぎているようで、ちっとも凄いとは思わなかった。それに手の多重撮りもどうかと思うし、必死の形相も吹き出てくる汗(というか始めから汗が噴出している)も全てがちぐはぐのような気がして・・・。タバコのシーンはおもしろかったけどね・・・。それに『後悔させてやる』と発してほしくはなかったなあ・・・彼は目で演技が出来るのに・・・・。それともう1つが、彼女が眠っている客室に浸入(?)するシーン。彼はいったい何をしたかったのか?あのシーンを見ている限りでは、ただキスをしたかっただけなの?と思ってしまう。私としてはちょっと理解に苦しむ場面でした。まあしかし、パンちゃんの感想を読んでいなかったら、見る予定ではなかったのでパンちゃんに感謝!。さて、この作品は23日の祝日に見たのですが、客はたったの十数人。予想をはるかに下回る数でした。まあその分ゆっくりゆったり見れて良かったのですが、少し離れた所に座った2人のおばさんの片方が「あ〜よく眠ってしまった・・・』美しいピアノの音色で寝てしまったのか・・・はたまた、つまらなくて寝てしまったのか・・・・・?
パンちゃん(★★★★★+ハンカチ3枚)(1999年12月15日)
泣きました。
前半は映像が魅力的です。
海に映った自由の女神というのは今まであったかどうか知りませんが、とても魅力的だった。
豪華客船の上に積もった雪、というのも美しかった。
しけで大揺れのなか、ピアノのストッパーを外してサーフィンをするように、傾くフロアを滑りながらピアノを弾くシーンで、完全に映像にはまりこんでしまった。
私はこうした今まで見たことのないシーンに出会うとそれだけでその映画が好きになる。
音楽にこころ踊り映像に揺すられ、とてもハッピーな時間が続く。
で、そのあとに主人公と少女の運命の出会いがやってくるのだけれど、ここから涙が出始めて、もう止まらない。
音楽が切なくて切なくて……。
おもわずサントラ盤を買ってしまった。で、今はそれを聞きながら書いている。
最後の方で、廃船になった船内でメーンテーマがかかると、剥き出しになった鉄骨の錆びやがらくたなどの、いわば汚く、すさんだ風景の中から、思い出が蘇ってくる気持ちになる。
うーん、私の思い出などそこにはなく、あるとすれば主人公とその友達の思い出であるはずなのに、まるで自分の思い出みたいに、あこでは何があり、あそこでは……と思い出が本当に蘇る。
ものこのあたりはスクリーンを見ていないですねえ。見えない。涙がざーざー流れる。
ちょっと一休みして、ティム・ロスが幻のピアノを弾く時は、また涙が止まらない。
映画が終わって(いわゆるストーリーの部分が終わって)、クレジットが流れている間、うん、涙をふけるかな、と思ったら……。
またまた涙。クレジットの最後の最後、「フジフィルム」の文字が出るまで涙が出ます。
目が赤くなるのが恥ずかしい人はサングラス(冬だけれど)を用意するか、夜の上映を見に行きましょう。