ユー・ガット・メール(2)

監督 ノーラ・エフロン 主演 トム・ハンクス、メグ・ライアン

2月27日までの感想は『ユー・ガット・メール(1)』にあります。

みさきたまゑ(★★★)(1999年7月4日)
misaki@ceres.dti.ne.jp
http://www.ceres.dti.ne.jp/~misaki
  
ラブコメディーなのだが、わたしがこれを見た最大の理由は主演の二人が書店を やってるからだ。
子どもの本の専門店の経営はほんとに難しいのさ。他に副業でもないかぎり、とうて い黒字にはならないような気がする。
アメリカには当然、再販制度はない。いずれ日本も、再版がなくなり、大量仕入れが できない弱小書店は確実につぶれる。
閉店したメグが敵情視察にでかけ、客の質問に答えられないバカ店員にあきれなが ら、
「でも、もう絶版よ」といって少し泣いてしまう場面。階段のかげから、トムはそれ をそっと見ているんだが……。もらい泣きしちゃいましたね、またも。
今年になって3本見て、全部泣きが入ってしまった。なさけねえ。 『本の雑誌』4月号、巻頭の真空とびひざ蹴りで読んだのだが。
『ユー・ガット・メール』を本屋が出てくるからという理由で椎名さん(が、書いて んだよね?)も見たらしい。
で、なにか釈然としない、とおっしゃる。わたしがパンちゃんの採点簿に、なかなか 書き込めないでいるのも、実は同じ一点が釈然としないせいだったと、はっきりわ かってうれしい。 というのは、ふたりが恋人どうしになって、めでたしめでたし! のかげにつぶ れていった児童書専門店の悲劇がうやむやにされているってことだ。
ま、別にメグも児童文学評論家として執筆活動をしているみたいだし、古参の店員た ちもトムの巨大書店のほうで雇ってくれたみたい、という説明があるから、そんなに 気にすることはないのかもしれない。 が、しかーし。
巨大書店が進出してきたら、弱小書店は確実につぶれるということを全世界の人が暗 黙のうちに了解してしまっている。
なんだかなあ。
灘かもめ(3月4日)
seagull@d1.dion.ne.jp
後半の20分、もたもたしてるかなぁ?
あのテンポが「もたもた」なら、この作品自体もたもたしてることになると思う。
まさしく、この展開は「女性の理想」そのものだと思う。「恋愛映画」そのもの。
たいていの女性は「恋愛映画」が好き。カップルで観るときは、 男性は、つきあわされて仕方なく観るというパターンが多いと思う。
「恋愛映画」の中では、すべてが主人公の女性の味方。ライバルの女性や 恋の邪魔者なんかも、最後は主人公の女性の味方になっちゃう。
そんな展開に女性はウットリするし、男性はウンザリするんだろうなぁ(笑)。
・・などと言いつつ、私はウンザリする方だったりして(笑)。
私は女だけど、「恋愛映画」を観ても、あまり楽しめない。
思わず、「こんなにうまくいくわけない」「こんな男いるわけない」 「主人公が美女(男)だからよ」などとすぐ思ってしまう。
トム・ハンクス演じるジョー・フォックスは、実は始めから女性の理想のタイプ。
仕事もデキる、社会的地位もある、経済力もある、子供好きでペットも大事にする。
後半では、まるっきりキャスリーンのペースに合わせてあげてるし。
キャスリーンなんて、天然でかわいらしいというだけで、なんの努力(恋人をゲットする努力)もしてないものなぁ。
ジョーは、イヤな女と好きな女が実は同一人物だとわかってからの気持ちの切り替え(統合?)がとても早い。(もし、同時にお互いの正体がわかったとしても、ジョーの方が先に切り替えるだろうけども。)それが男性のテンポなんでしょうね。
ジョーがキャスリーンを、イヤな女だと思ってたけどやっぱり大好きだから恋人にしたい、と気持ちを切り替えると、映画を観ている男性は一気にジョーに感情移入する。
そして、「なにもたもたしてるんだ、もともと相思相愛なんだから、さっさとモノにしちゃえ」と思うんでしょうね。だから、観ていてウンザリするし、イライラする。
私も、違う意味でウンザリする。男性の本音はおおむね↑なのに、ジョーみたいに 女性のペースを乱さない行動をとってくれる人なんかいやしないのに、と。 でも、「女性の好む展開」だから、程度が低いとは思いません。
だって、私、ウンザリしつつ、ジョーってかしこい!!と思いましたもん。
自分はすべてを知っていて、相手は何も知らない情況の中で、メールや、計画的な 偶然を駆使して、キャスリーンをモノにしたわけですから。
しかも、当初の予定で会っていたら、間違いなく嫌われるか、さらに努力が必要に なったはずですからね。
いわば、ジョーのとった「作戦」(あえて作戦と呼ぼう)は、男性にとっても 有益なのです。女性から見て、絶対ポイント高いです。さらにホレてくれます(笑)。
私は、「キャスリーンから嫌われてるジョー」と「ショップガール(キャスリーン)と相思相愛のNY152(ジョー)」の二役を演じるジョーの作戦を楽しく拝見しましたです。
不満を言えば、ラストの「あなたでよかった」というセリフが・・・・・・(^^;)。
ちょっと、のれませんでした。私なら、ず−−−っと自分をだましてたジョーに、 イヤミのひとつも言って、さらにじらしてしまうぞ。きっと(笑)。
「ラスト20分の観方」が話題ですが、私は、どこからラスト20分なの?と思ってしまった。「軽快な前半とテンポが違う」との意見があるそうですが、私には、テンポの 違いは感じませんでした。
好きなシーンは、約束をすっぽかしたジョーが、返事を書こうか、書くまいか、 PCのある部屋の前の廊下をウロウロするシーン。ジョーの様子もおかしいんだけど、 ワンちゃんが、せわしなくジョーにくっついて、いっしょにウロウロしているのが いい!!しかも、ジョーにセリフが無いかわりに、ワンちゃんの息遣いがジョーの気持ちを表す効果音になっていて、おもしろいなぁと思いました。
あと、エレベーターに閉じこめられた時、「ここから出られたら」という話を はじめるところ。本人たちは切迫してるのに、なぜかコミカルに見えてしまいました。
ジョーの気持ちが変化するきっかけの出来事を、ここにもってくるのもおもしろい。
ところで、ただ今恋愛中の男性諸君に密告(笑)。
彼女に「恋愛映画」に誘われたら、「教育されてる」と思って間違いないです。
一緒に観るビデオに「恋愛映画」が混じっていてもそう。
女性の気持ちをわかって欲しいから、一緒に観て欲しいのです。
だから、居眠りしたら怒られるでしょ(^o^)


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