二人日和


監督 野村惠一 出演 藤村志保 栗塚旭


  
panchan(2006年1月8日)
(★★★★+ハンカチ)
 京都の街、京都の生活が丁寧に描かれている。
 最後の方で、栗塚が「ぼん」にひな人形を贈る。その人形を入れている木の箱が美しい。ふたの構造が、空間の遊びを利用しているのだが、そういえば家にも 昔そういう木の箱があったなあ、大工さんの道具箱のふたもそういう構造だったなあ、とふと思い出した。あの隙間の感じ、遊びの感じが、今の社会には欠けて いる、というようなことも考えた。

 老年期の夫婦の愛情(純情)物語が、京都の、そうした生活感あふれる風景のなかで静かに静かに繰り広げられる。セットではない(と、思う)空間、使い込 まれた道具の美しさが、そのまま二人の時間の美しさを感じさせる。

 かなり泣けます。

 そして、その感動のシーンよりもすばらしいのは、その後を淡々と撮っている部分。あ、時間は「感動」では終わらない。その後もつづいている。そのつづい ていく時間をたとえばひな人形を入れた木箱は生きていく。人は生きて死んでいく。そのあとも「もの」は生き続けている。そこにも命はある。もしかすると、 そうやって生き続けるもののなかにこそ命、そして愛情はあるのかもしれない。

 京都の街がほんとうに美しく見えてくる映画です。