ルトガー・ハウアーの思い出


ルトガー・ハウアーの思い出、といっても、もちろん、ルトガー・ハウアーは知り合いじゃないし、会ったこともない。
95年にオランダへ行ってきた。アイントホーヘンという、南の方、ドイツに近い街に知り合いがいて、遊びに行ったのだ。この友達、レンスというのだが、これは本当は友達ではなく、以前スペインへ行ったとき会った女の子(イボンヌ)のボーイフレンドだった。スペインへはイボンヌの母とレンスと3人で来ていた。いわば婚前旅行みたいなものだった----と私は思っていた。そのうち、レンスはイボンヌと別れ、マリンカと結婚した。(マリンカは双子で、ダブルウエディングというのをやった。双子だが二卵性なので、ピーナツみたいに、他人が間違えることはない。)
イボンヌはイボンヌで別のボーイフレンドとうまくやっているようなのだが、連絡がとれなくなった。私はレンスと連絡をとったわけではなく、愛人が小説を書くのに、オランダのことを知りたくて手紙を書き、それで関係が続いていた。(なんだかややこしい。)
で、なんとなく、ヨーロッパへ行ったついでにアイントホーヘンまで行ってみた。
レンスが駅まで迎えに来てくれることになった。
「顔も覚えていない(スペインでは、イボンヌと話したが、レンスとはすれちがっただけ)のに、どうやって会えるだろうか」
「アイントホーヘンの駅に日本人の男女が一緒にいる、なんていうことは一組しかないから分かる」
というのは本当で、レンスが私たちを見つけ出してくれた。
話はまた脱線するが、スペインのバラハス空港では、ホアンホが空港の改札口(?----小さいので、本当に改札口、という印象)で迎えてくれていたのだが、10年会わないうちに、はげて、太っていて、ホアンホとわからず、無事に会えるまでに随分時間がかかった。そのことを思うと、このアイントホーヘンの出会いは、全くうまくいった。
で、レンスの家(3階建て、庭付き----週に2回、掃除婦が来て、掃除してくれるので、とてもきれいだった)で食事をしながら、いろいろ話をした。そのとき、ルトガー・ハウアーの話が出た。
「オオ、晴代(私の愛人)は、ウトハー・ハーハーが好きなのか」
とマリンカが言った。
ルトガー・ハウアーとは発音しないのだ。何と発音しているかわからないが、息の漏れる音ばかりが耳に残った。
ポール・バーホーヘンは、ポール・ハーホーヘンという感じだった。

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