遠いコンサート・ホールの彼方へ!
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大阪フィルハーモニー交響楽団
第340回定期演奏会

2000年7月13日 19時 フェステイヴァル・ホール

プログラム

ウォルトン
ヴィオラ協奏曲 

ショスタコーヴィチ
交響曲第4番 ハ短調 作品43

指揮:井上道義
ヴィオラ独奏:深井碩章


大フィルが大健闘

 ウォルトンは、正直楽しめない演奏でした。NHKホール並に大きく、響きもデッドなフェスティヴァル・ホールには、地味な響きで音もそう大きくはないヴィオラによる協奏曲はそもそも酷だと思いますね。それに輪を欠けたのが独奏ヴィオラの不安定さで、音程がしょっちゅう外れたりかすれたりして、聴いていて困りました(因みに使用した楽器は初演者であるパウル・ヒンデミットの楽器を使用との事)。また、オーケストラも次のショスタコーヴィチに精力を注ぎ込みすぎたのか、どうにも演奏に乗っておらず最終楽章に顕著な作品の持つ小気味良さが欠けていました。何とも、ウォルトンのヴィオラ協奏曲がいかに詰まらない作品かということを聴衆にすり込ませてしまっただけに終わり残念な結果でした。

 一方、休憩を挿んで待望のショスタコーヴィチの交響曲第4番。滅多に演奏されない曲ですし(私は今回を含めて3回しかナマで聴いたことがない)、楽譜の正確な再現はとてつもなく難しい曲なので、それなりの演奏あるいは最後まで大事故がなければ良しとしなくてはならないかなあと思っていたところ、私が大阪フィルハーモニーを聴くのが初めてだということで、大阪在住のFCLASのある知り合いからは、「何が起きても怒ってはダメだ」と念押しされ、さらに別の大阪在住の知り合いからは、「大フィルの実力から見て、第1楽章だけで少なくとも3箇所はこけるところがある」と言われ、こりゃまいったなあ、今回の大阪行は完全な無駄足に終わるかと思ったのですが、終わってみれば大フィルは大健闘していました。
 勿論、ソロ楽器で怪しげな旋律も随分と聞かれましたし(ファゴットの音が変だったなあ)、もう少し強弱の「弱」に配慮して欲しいところもありましたし(木管が一本調子っぽいのが気になりました)、合奏が乱れてしまい、それまで腰を振ってノリノリに指揮をしていたミッチーが、ただの棒振り人形になって必死に建て直しを図っていたところも何ヶ所もありましたし、(当初の想定していたとおり)第1楽章のフガートの部分は弦の刻みが弱くて音が転んでいましたし、全合奏で決めるところをもっとバシッと決めて欲しかったし(これは「弱音」への配慮が弱いことと、合奏の精度が今一甘いことに起因している)、だからといってシロフォンと金管でむやみやたらに音響を縁取りして弦と木管をかき消さんでほしい、とか色々細かく注文を付けたい部分はありましたが、終わってみると大事故は無く、かつてタバシュニク&N響の演奏で聴いたように天井が抜けるんじゃないかという響きも聴かれ(第3楽章はお疲れのようでそれほどの衝撃は無かったのですけどね)、交響曲第4番を「聴いた」という満足感に浸れました。
 それにしても聴いている最中はミッチーの解釈云々する所ではなく、終わったところで、聴いている身にもかかわらずホッとしましたよ。