
8月21日(月曜日)
『ヴァージン・スーサイズ』___ソフィア・コッポラ脚本・監督+キルステン・ダンスト+ジェームズ・ウッズ+キャスリーン・ターナー
チラシには、さかんに、「ガーリーな」「ガーリーな」と書いてある。「ガーリーな映像」「ガーリーな美意識」……ガーリーってなに? 辞書を引くと、girlie... 「娘、娘っこ」とある。「軽蔑的な言葉」である。
ひょっとして日本人だけが、その気になってつかっている?
でもまー、時代は、ガーリーになっているらしい。70年代、17歳を頭に、5人の年子の、リズボン家の美しいガールたちが、ある日突然、自殺してしまう。映画を観ると、理由などはすぐにわかる。両親が、とくに母親が、厳しすぎたのだ。
ガールたちは、親という束縛から逃れるために、「自由」を選ぶ──。
ひと昔前なら、「社会ドラマ」だーね。しかし、ソフィア・コッポラは、ファッショナブルにしちまった。かる〜い、けだるいような空気。成長してゆく体を持て余す思春期の少女たち──。死んじまおうか、いっそのこと。
思えば、私の中学時代の後輩も、そんなふうに、友だち同士で飛び下り自殺をしちまった。考えてみれば、私もその少女たちと同じ時代に、思春期の少女だった。しかし、からくも生き延びたのは、ひとえに親が厳格でなかったからかも……。ま、それはありもしなかった青春の虚構かもしれないけどさ。でも、70年代という時代は、甘美な自殺が似合った時代じゃなかったか? 時代そのものが乙女チックというか……。
とにかく、よくできた映画だ。少女たちの甘い体臭のようなものが匂ってくるような。こういう繊細さを映像化しうるのは大したものだ。ひょっとしたら、ソフィア・コッポラは、オヤッサンのフランシス・フォード・コッポラ(この映画では、プロデューサー)より才能あるかも。

8月24日(木曜日)
つまり、「ガーリー」とは、ファッション雑誌で目にしたかもしれない、ファッション用語になっていて、いまこの「日記」をそんな雰囲気にしてみているのだが、「キッチュ」とも少し違うが、それ系の用語であろう。「本気で」ではなく、「故意に」少女っぽくした雰囲気っていうか……。
*
数日前、フランスの新聞『Le Monde』より、また定期購読してくれという手紙が来た。これは、日刊ではなく、外国人あるいは、外国在住のフランス人、フランス語を話す人々のための、国際版週刊紙である。数年前に取っていたが、ろくに読めなかったので、継続は見合わせていた。
今度は、宣伝文句もすらすら読めちゃって、いけそう、な感じもするし、なにより、「外国にいてもこれを読めば、すぐに現在のフランスの情報界、言論界にコミットできる」みたいなコピーには心引かれたし、おまけも、Plantu という風刺マンガを描いている画家のポストカード12枚セットがきれいな小箱に入っているのを、もれなくプレゼントという。
それに、日本ではあたりまえのことだが、フランスは長い間、こういう新聞、雑誌の申し込み封筒やハガキの「切手代」は、こちら持ちであった。しかし、このたび、申し込みの、宛先が印刷された封筒を見ると、なんと、向こう持ちであった(笑)!
さっそく、申し込んださー、一年ぶん。 
8月30日(水曜日)
『ホワイトアウト』___真保裕一原作+真保裕一+二人脚本+若松節朗監督+織田裕二+松島奈々子+佐藤浩市
お、おもろいやんかー。
けっこー、「ダイハード」してましたよ。織田裕二には、ブルース・ウィリスのような生活感(リアリティ)もセックスアピールもないけど。構成とかがよいんでせう。日本映画にありがちな、ちゃちな感じもしなかったし。
でもなー、相変わらず、日本の俳優の演技の質は、なんとかならんかー、です。そういう意味じゃ、出てはいけないべつの生活感(貧乏臭さ)がにじみ出てるって感じ。
9月4日(月曜日)
『プランケット&マクレーン』___ゲイリー・オールドマン製作総指揮+ジェイク・スコット監督+ロバート・カーライル(
)+ジョニー・リー・ミラー+リブ・タイラー
「ガーリー」の次は、「マッシヴ」である。「マッシヴ・スタッフ」、「マッシヴ・ストーリー」、「マッシヴ・キャスト」って言うんだけど、どーゆー意味? massive と言えば、「固まり」とか、「すごい量」とかいうイメージがあるけど、これは、「すごい」って意味なんだろう。「いけてる」とか。
8世紀半ばに、ロンドンに実在した強盗二人組、「プランケット&マクレーン」のハナシだ。いわば、イギリスの「西部劇」。さすが、シェークスピアの国だけあって、芝居の基礎がきちんとしてる。基礎がきちんとしてるから、崩せる。その崩しかた、というか、はずしかたが、よい。
基礎のないアメリカ映画だと、たぶん、大上段の大活劇にするところが、軽さを加えて、1時間40分でまとめる。今後の活劇のあり方を示した、お手本のような作品。
それにしても、ロバート・カーライルさまは、生活感が滲み出て、すてき! この場合の「生活感」は、「生身の人間を感じさせる」ってこと。こういう役者は、アメリカにはいない。
9月10日(日曜日)
『U-571』___ジョナサン・モストウ監督+マシュー・マコノヒー+ハーベイ・カイテル+ビル・パクストン
この映画は、漁師の倅であったマコノヒーが、漁船のみじめさだけはごめんだと、海軍に入り(このへんは、映画にはなく、彼の語りでわかる)、潜水艦の副艦長になり、次は、艦長にと、意欲を燃やしていた。しかし、
「きみはまだ艦長になるだけの力量がない」みたいなことを、上司、すなわち、現艦長から言われていた。しかし、
第二次大戦の、思わぬ戦局の展開の作戦上、ある任務を帯びて、出動することになり、そこで、彼は、さまざまな困難に見舞われつつ、艦長として、成長していく……
つー、ハナシだったらしいが、半分以上寝ていた。べつに、この映画がつまらないというわけではないが、睡眠不足のうえ、映画自体のシーンが、暗い潜水艦の中がほとんどで、目を覚ますきっかけがなかったのだ。
それにしても、マコノヒーのような、甘ったるい容貌の男は、はっきりいってタイプである(
)。どれもこれも、いかつく見える軍隊映画の中では、やはり、あのくらい甘い容貌でないと、ビルドゥングス(若者が成長していく話)映画はできないのであろうよ。
あ、でも、金髪碧眼では、アマアマにすぎるのか、髪は黒く染め、短くカットしていました。それがまた、かわいいー。
9月12日(火曜日)
『ボーイズ・ドント・クライ』____キンバリー・ピアース監督+ヒラリー・スワンク+クロエ・セヴィニー
こんな悲惨な映画の主演女優に、アカデミー賞をやってしまうアメリカはすごい、としか……。
9月15日(金曜日)
『ミュージック・オブ・ハート』____ウェス・クレイブン監督+メリル・ストリープ+アンジェラ・バセット+エイダン・クイン+キーラン・カルキン
思えば、メリル・ストリープは、若い頃からオバサンぽかったなー。しかし、そのオバサンぽさは、懐の広い演技ができるということでもある。同じくオバサンぽく懐の広い演技のできる、ダイアン・キートン(そういや、姉妹役をやったこともあった)と比べると、そのオバサンぽさに、「潤い」がある。その「潤い」が十分に発揮された映画だ。
あー、「恋人」役のエイダン・クイン(初めは「親子」かと思った(笑))、完全なる「タイプ」なんですよねー。こういう雰囲気+顔の男は、文句なしにすべて許しちゃう。ハートマークも、「大」で→
9月18日(月曜日)
『60セカンズ』___最近よくある、「ジェリー・ブラッカイマー製作」という文字だけがでかでかと宣伝され、監督は誰かよくわかんない、チラシにもすごくちっこく書いてあるにあるが…の監督+ニコラス・ケイジ+アンジェリーナ・ジョリー+ロバート・デュバル
なんやねんな、これ。つー映画。車が主役のはずなのに、華麗なるカーアクションもスピード感もない。あるのは、兄弟愛とか、友情とかいう古臭いストーリーのみ。
どうもニコラス・ケイジは、『シティ・オブ・エンジェルス』で、天使を演じたあたりから、自分を二枚目と誤解するようになったようだ。鏡をよく見ろ! 二枚目のツラか!
9月19日(火曜日)
『オータム・イン・ニューヨーク』___ジョアン・チェン監督+リチャード・ギア+ウィノナ・ライダー
よくもここまでバカみたいな要素を積み重ねた映画ができるものだ。プレイボーイと、あと一年の命と宣告された「少女」の恋。二十二歳を少女というならね。「少女」を演じたウィノナ・ライダーの実年齢は27歳くらい。しかし、未だに「子役」の雰囲気が抜けない。
かたやいい年して、いつまで「二枚目」やるのか、リチャード・ギア。
どんなつまらない映画も、必ずひとつぐらい印象に残る場面があるものだが、この映画はまったくなし。ということは、すべての場面が、息をもつかせない紋切り型(われながら、なかなかいい表現だ(笑))で埋まっているせいだろう。