5月30日(木曜日)
やっと、5月の日記に手をつけたと思ったら、もうすでに終わりか……ひぇ〜〜である。映画はいろいろ観て、たまっている。以下にまとめて列挙する。
5/3『アザーズ』___アレハンドロ・アメナバール監督+ニコール・キッドマン
最近、パラレル・ワールドというものに関心がある。デイヴィッド・リンチ監督の『マルホランド・ドライブ』も、パラレル・ワールドを描いたものであったが、本作も一種のパラレル・ワールドを描いている。ほんのちょっと視点を変えただけで、非常に恐い。その恐さを作っているのは、ニコール・キッドマンのクラシカル雰囲気と演技力である。
5/6『キューティー・ブロンド』___ロバート・ルケティック監督+リーザ・ウィザ−スプーン
「ミーハー」が、特別検定を受けて、ハーバード・ロー・スクールに入り、りっぱな弁護士となる物語であるが、この「ミーハー」は、単なるバカではない。「ミーハー」であるときも、アタマを使っている。その使う場所をちょっと変えただけなのだ。それにしても、オシャレのコードを解しあう女たちの結束は固い。ワタシもその一人と自負しているが……。
『七人の侍』(1954年)___黒沢明監督「小倉シネシティ有楽」シネマアーカイブス・シリーズ第一弾「黒沢明の世界」より
うーーーん……志村喬は、モーガン・フリーマンに似てるぅ〜〜。藤原釜足は、赤瀬川源平に似てる〜〜。木村功が初々しい。志村の、「ほんとうに勝ったのは、あの百姓たちだ」は、歴史的名言になってしまった?
5/11『パニック・ルーム』___デビッド・フィンチャー監督+ジョディ・フォスター
フィンチャーらしいスタイリッシュなライフスタイルが、「恐怖映画」から滲み出る。しかし、これって、ほんとうは、「恐怖映画」なんかではないことは、オープニングのクレジットで、フォレスト・ウィティカーの名前を見てからわかってしまった。このヒトが出ると、たいてい「ヒューマンなお話」になるのだが、事実、その通りであった。
5/12『スパイダーマン』___サム・ライム監督+トビー・マッガイア
サム・ライムというのは、これまで、奇妙な味わいの静的な映画を作って来たが、ほんとうは、こういう派手なアクションの方が本領だという。アメリカのコミック・ファンは、身長170センチ弱のトビー・マッガイアは、イメージじゃない!と不満らしいが、だいたい、ヒーローなんて、らしからぬ方がらしい、ではないか。
5/?『隠し砦の三悪人』(1958年)___黒沢明シリーズその2と、その3。うーーーん……これらの作品を見て、なんで、外国の映画監督が、「クロサワ、クロサワ」と騒ぐのかわかった。これらの作品は、いい!のである。志といい、戦国時代のリアリティある描き方といい、庶民の視点といい。インスパイアされないこともない作品群である。武士の物語に入り交じる農民二人は、のちに「スター・ウォーズ」のロボットのモデルとなったというが、ベケットの『ゴドーを待ちながら』の二人組のようでもある。
『用心棒』(1961年)___同上であるが、こちらは、西部劇等で何度もアメリカ映画化されている。有名な『荒野の七人』は観ていないが、ちょっと前に、ブルース・ウィルス主演で、題名もそもまま『用心棒』だったと思うが、リメイクされた。なんたって、用心棒役の三船がかっこいい。ダテに「世界のミフネ」と言われたわけではなかったのだとナットク。いま、こんな役者、いやないもんね。それにしても、日本人の役者の顔は、この当時と比べて全然、だめになった。ゆえに、黒沢は、晩年の作、『乱』以下の作品では、表情が見えないほどのロングショットしか撮らなかったのではないか?
5/20『スパイダー』___リー・タマホリ監督+モーガン・フリーマン
モーガン・フリーマンの雰囲気はいい。しかし、脚本がお粗末。ひとつ、黒沢の『七人の侍』でもリメイクして、志村喬の役をやってもらいたいものである。
5/24『イースト/ウェスト』___レジス・ヴァルニエ監督+サンドリーヌ・ボネール+オレグ・メンシコフ+カトリーヌ・ドヌーブ
1946年のソ連を中国に、亡命ロシア人とそのフランス人妻を、北朝鮮人に置き換えれば、こないだの「瀋陽日本大使館」事件と状況はそっくりである。しかし、ここには、長い長い物語がある。フランス人妻はソ連の収容所に入れられて、6年の月日を過ごす。これは、例の『インドシナ』の監督だって。なるほど。あのときも、「少女」が、収容所に入れられ、白髪となって出てくる。そのとき、少女の思想は確固としたものに形成されていた……。
本作も、思想を貫くの地味な話である。カトリーヌ・ドヌーブは、中年を過ぎてから、なんかすごくよくなった。
5/27『アリ』___マイケル・マン監督+ウィル・スミス
これは、モハメド・アリの伝記ではない。彼の生き方を描いた作品である。だから、ドラマは突然、すでにアリがスターであるところから始める。なかなか志の高い映画なれど、なんか途中寝てしまった(笑)。ウィル・スミスの肉体も美しいが、スポーツ・キャスター役のジョン・ボイトは、オープニングのクレジットを見て、「ああ、ジョン・ボイトが出るんだな」と思ったものの、その後すぐ忘れてしまい、彼だとはまったく気がつかなかったくらい、「別人」であった。驚嘆&尊敬。
6月16日(日曜日)
ずっと風邪を引いて、ずるずると過している。それにしても、ほんとーに、驚異的な速さで時は過ぎていく……。映画がまた溜った。見た日付は忘れた。
『生きる』(1952年)___黒沢明監督+志村喬+小田切みき
実はゲーテの老いらくの恋も、こんなふうだったのではなかろうか? 志村喬のまなざしがよい。小田切みきのくったくなさが美しい。
『生きものの記録』(1955年)___黒沢明監督+三船敏郎+志村喬+千秋実
この高校演劇のようなテーマの扱いであるが、真摯な感じが悪くない。それにしても、被害妄想の老人を演じる三船は、(私は最後まで三船と気づかず(苦笑))、『七人の侍』で、若さがぎらぎらした風来坊を演じた時から一年しか経っていないとは、驚きである。やはり、すごい役者だ。
『インティマシー(親密)』___パトリス・シェロー監督+マーク・ライランス+ケリー・フォックス+ティモシー・スポール+マリアンヌ・フェイスフル
セックスというものには、その人の全人格が出る。従って、セックスから入って関係が、やがては深い愛に変わっていくというのは、考えてみれば、ありうるひとつの現実なのかもしれない。ドキュメンタリー・タッチではあるが、すごい俳優たちの珠玉の芸であったのだ。演劇活動が生活として出てくるが、いかにも自然でしゃれている。
『椿三十郎』(1962年)___黒沢明監督+三船敏郎+仲代達矢+加山雄三+小林桂樹+団玲子+志村喬
時代を経るに従って、黒沢映画の主役が、三船を覗き、やがて、脇へと回っていくのが見える。それにつれて、若手スター、仲代や加山が登場する。それぞえに「美男」ではあるが、やはり三船がぐんを抜いて美しい、というか、光っている。このハナシは、なかなかしゃれていて好みだ。黒沢は、やはり、時代劇の方が圧倒的によいような気がするが……。
『天国と地獄』(1963年)___黒沢明監督+三船敏郎+仲代達矢+三橋達也+木村功+山崎努
中年になった三船の、加害者を見つめる悲しむを秘めた目は、ジャン・カルロ・ジャンニーニを思わせる気品に満ちている。まさに、三船あっての黒沢だった。彼はただ、三船のためにのみ、映画を撮ったのか? 60年代初頭のハイソの暮らしは、今見ると、なんか寒々としている。