「映画ライター」なるひとのブログ(livedoorのブログは、私も開設しているが、「使い勝手」はよくない(笑))を見てみたが、80%は、(プレスの資料を使った)映画の「あらすじ」で、あとの20%は、誰もが言うような紋切り型の感想──。しかも、どこかで見たような「業界ディスクール」(笑)。「映画ライター」とは、配給会社の「たいこもち」と見た(べつに頼まれてないかもしれないけど、どうも体質的にそうなってしまうようですね)。
この方の場合、上記の映画、『ナイト&デイ』で言うなら、最後の方で、完全に、「ネタバレ」を、そうと思わず書いてしまっているんですよね(笑)。このテのの「プロ」の映画レビューを読むくらいなら、「素人」が集まっているYahoo!映画のレビューの方がユニークで読み甲斐がある。「あらすじ」が知りたいなら、映画の公式サイトで読めばいいし。
2010/10/19(火)
『シングルマン』(原題『A SINGLE MAN』)監督: トム・フォード
ヴィスコンティの『ヴェニスに死す』がいかに傑作かが再認識される映画である(笑)。
確かにセンスはいい。しかし映画はスタイリッシュなだけでは成立しない。『悪人』のレビューにも書いたが、やはり、コリン・ファース演じる主人公は抽象的人物である。具体的な実感の感じられない人物が、いかに悲しみ、絶望しようと、観客は心を動かされない。いったい、コリン・ファースはどんな気持ちでこの役を演じたのか──。
1960年代という時代をどうとらえているかも見えない。ただ、車の中にいる他人の犬に、窓の外から長いことほほを寄せて「バタートーストの匂いがする」なんてつぶやくところは面白い。実際にこういうオジサンがいたら、気味が悪い(笑)。……そうか、あまりに「こぎれいすぎて」、『ヴェニスに死す』のような滑稽さがないところが、本作を芸術から遠ざけているのかもしれない。
芸術とは、自己批判があってこそはじめて成り立つ。それがなければ、ただのファッションである。
2010/11/11(木)
『桜田門外ノ変』 監督 佐藤純彌
『十三人の刺客』に比べると、ひどく地味な映画である。しかも、カタルシスもない。カタルシスとは、見たあと、なにかほっとしたようなさわやかな気持ちになることだが、いくら待っても、そういう場面はついぞ訪れず、終わってしまう。
それもそのはず、この映画は、はじめからそういうものを目指していない。おそらく、「歴史」という大それたものの外で、犬死にした無名の武士たちの墓碑銘を刻むことを目指しているからだ(それゆえに、「変」に加わった武士たちひとりひとり、全員、どういう死に方をしたか、享年何歳かが文字として映し出される)。
それは主役の大沢たかおとて例外ではない。この、立ち姿が美しい俳優は、明治維新をすぐそこにひかえた江戸という煤けた時代背景に、うっすら華を添えているが、彼も多くのほかの武士たちと同じ運命をたどる。
吉村昭の原作より、本編の方が、よりシビアな描写であると思う。
城の石垣がいかにも作り物のように見えるとか、いろいろアラはあるが、それでも、映画の前半で早々に展開される、井伊直弼殺害の場面は、実際に立ち会っているようなリアルさがある。