第130話「異色」


そろそろオラ君の次走が決まったんじゃないですかぁ。
「きゅうしゃ」にからからとした声が響いた。
鍋井さんだな。

んん〜、一応は出たいレースは決まってるけどねぇ。
ただ、登録が多そうなんだよねぇ。
出られるかは抽選次第になりそうだなぁ。
優先出走権もないしねぇ。
高木さんの答える声が聞こえる。

そういえばボク、最近は「れーす」に出てなかったな。
でも、ボク、体調はすごくいいよ。
明日が「れーす」だとしてもへっちゃらなくらいさ。

けっ、お前ぇは大体いつも無駄に調子はいいからな。
それがレースに結びつかねぇんだけどよ。
む、むむ、大井さんだ。
それを言われるとつらいな。
まあ、でもお前ぇは、本当に不思議なくらい調子の変動が少ねぇよな。
俺もお前ぇみてぇな馬は初めてだぜ。
最後の方は感心したような口調になっている。
ちょっと照れ臭いぞ。

ねぇ、みんなは調子が良かったり悪かったりって、かわりばんこなの?
ちょっと不思議に思ったんで、大井さんに聞いてみた。
大体はそんなもんさ。
大井さんは、うんうん、と首を振りながらながら続けた。
調子が上がって来てピークになっても長くは続かねぇ、
そこから調子は下がって来て、そしてまた調子を上げていく。
その繰り返しだ。
波の大きさやら期間の長短の差はあれど、それが普通だ。
そしてボクの方に目を向けると、ちょっと肩をすくめた。
だけど、お前ぇはそうじゃねぇ。
たまに調子が悪くなる時はあるけど、大体はいい調子だ。
そして、ふぅ、と息をついた。

いろんな意味で、不思議な馬だよ、お前ぇはよ。




第131話へ
オラ日記バックナンバーへ
オラ日記タイトルへ戻る