第2話「サイキョウ」


ボクは小父ちゃんが好きだ。小父ちゃんの名前は「サイキョウ」。小父ちゃんはよく、名前負けだ、って言って
笑うけど、あんちゃんは、そんなことはない、って言ってた。
どっちが本当なんだろう。小父ちゃんかあんちゃんかどっちかがうそつきなんだね、って言ったら、
あんちゃんは、どっちも嘘ついてるわけじゃないけどな、だって。よくわかんないや。
大体、名前負けって何?

小父ちゃんはボクのお母さんの従兄弟なんだって。でも、お母さんのお母さんと小父ちゃんのお母さんは
「ぜんきょうだい」で、お母さんのお父ちゃんと小父ちゃんのお父ちゃんは同じお父ちゃんだから、兄弟みたい
なもんだな、っておっちゃんが言ってた。
ぜんきょうだい?従兄弟だけど兄弟?あ〜、なにがなんだかわかんないよ。

小父ちゃんはよくいろんな話をしてくれる。昔「れーす」に出ていた時の話とか。
だけど、「だーびー」の話だけはしてくれないんだ。「だーびー」の話を聞かせて、って一度だけ頼んだ事が
あるんだけど、それだけは勘弁してくれ、って断られちゃった。その時、勝ったのは俺だ、って悔しそうに
呟いてた。
いつも優しい小父ちゃんがとっても恐い顔していたんで、それ以来「だーびー」のことは聞かないようにしている。
「しっかく」してしまったのよ、って小母ちゃんがそっと教えてくれた。「しっかく」ってなにかわからないけど、
よくない事なのかな?

小父ちゃんはその後お父ちゃんになれなくなったらしい。どういうことなのかなぁ。
「てんのうしょー」に出られなかったのが残念だなぁ、っておっちゃんが言ってた。出られてれば、
勝ってただろう、って。
小父ちゃんにそう言うと、勝てたかはわからないけど、他の奴に負けない自信はあったって笑ってた。

サイキョウサイキョウ



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