ボクはあんちゃんに引かれてその大きな部屋を後にした。
今度はどんなところに行くの?
ボクはちょっと怖いような、それでいてちょっとわくわくするような不思議な気分になった。
いや、これで終わりだな。
そう言うとあんちゃんはボクの首をぽんぽんと叩いた。
こんなにたくさん人がいるところは初めてだからびっくりしたろう。
お疲れだったな。
さあ、帰ろう。
なぁーんだ、もう終わりなんだ。もうちょっといても良かったな。
ボクはすごくほっとしたんで、ちょっと強がってみた。
あ、そうだ。
ずっと、ぶわーっと、舞い上がっていたような感じだったから大事なことを忘れていた。
ボク、どうなったの?売れたの?
いいや。
あんちゃんは首を振った。
買い手はつかなかったな。まあ、もともと駄目もとだったしな。
そう言うとボクの鼻をちょっとなでた。
なんだ、そうだったのかぁ。
実を言うと「せーる」のことは、ボクよくわかっていなかったんだけど、
なんだかちょっとがっかりした気分になった。
ん?残念か?
まあ、とりあえず今日は帰ってゆっくりするんだな。
今はそうでもないかもしれないが、帰ったらどっと疲れるぞ。
そう言うとあんちゃんはにっと笑った。
その顔は意外と明るかった。
なんとなく、あんちゃんもがっかりしていると思っていたんだけど、違ったようだ。
残念は残念だけどな。まあ、しょうがないな。
そして、急にいたずらっぽい顔になってボクを見てにやりと笑った。
しばらくして、あんちゃんの笑顔の意味がわかった。
あの化け物が大きな口をあけて待ちかまえていたんだ。
そうか、帰るには、また馬運車に乗らないといけないのか。
うーん。