住めば都 2010.08.14

お盆休みである。会社に行くわけにも行かない。とはいえ、家内と二人でいると、何事かをきっかけに口論となり、そのうち揉め事は大きくなる。ということでなるべく外を出歩くことにしている。
本当に私が引退したら、果たしてどうなることやら・・不安がよぎる。
離婚か別居か、見通しは暗い。

今の住まいであるマンションに来てあと2月くらいで丸三年になる。といってもほんの近くのスーパーとか、ドラッグストア程度しか行ったことがなく、周りがどんな風になっているかもわからない。家にいても暑いし、まあ今日はカンカン照りでなくて良かった 真夏の散歩も悪くはない。
と言い聞かせて、ブラブラと歩き回る。まさに徘徊老人である。

ほんの50メートルも行くと、通ったことがない道や、見たことがない家並みが続く。私の住まいははっきり言って町外れというより田舎である。林もあるし畑もある。農家も多い。ミンミンせみが鳴いている。東北ではミンミンせみはめずらしい。あぶらせみがメジャーである。子供の頃アブラゼミはとったが、ミンミンゼミはめったに採れなかった。というよりそれ以前に鳴き声が聞こえなかった。関西はクマゼミが主流なんだそうだ。
いまどきは子供がせみなどに興味がないのか、手が届くような低いところせみが景気よく鳴いている。ちょっと目を下に向けるとせみの抜け殻がたくさんある。もっと下を向くと、命が尽きたせみの死骸がごろごろしている。
せみがたくさんいるってことは悪いことではないと思う。
朝、カラスが鳴いているよりは、せみが鳴いているほうが好ましい。
しかしカラスがそこらじゅうにたむろしている。下手をすると踏んでしまいそう。本当に人が近づいても逃げたりしない。ずうずうしいやつらだ。
そういえば、死んだ親父は縁者が死ぬとからす泣きが悪いなんて言っていたが、からす鳴きが良いなんてことがあるものだろうか?
マンションには立派なごみの小屋があるので、からすがやってはこなかった。ところが最近、玄関の前に置いてあった生協の宅配の食品が入っているプラスティックケースが風で倒れて中身が出た家があり、それで味を覚えたのか味をしめたのか通路部にからすがうろうろするようになった。困ったことだ。といっても、めったにからすの食べ物が見つかることはないだろうから、そのうちカラス連中も来なくなるだろう。

少し行くと、市民農園というのがある。一区画がそれぞれ5坪くらいに仕切られていて、そこを借りた人が思い思いの野菜や果物を作っている。空きが出ると募集して抽選になるらしいが、聞くと競争倍率がものすごく高いらしい。ナスを作っても、かぼちゃを作っても、とうもろこしでも、きゅうりでも、ゴーヤでも・・なんでも同じだが、スーパーから買ってきたほうが安いしうまいと思う。 きゅうりだよ そもそも、なすなんて一度にドサッと採れてもしょうがない。毎日3個くらい取れればよいが、そんなうまい具合にはいかない。
私は家庭菜園を作ろうなんて風流な趣味はなく、家内はベランダに大葉とパセリを作っていればいいという。ものぐさな・・いや無趣味な夫婦である。
そういえば、知り合いが市民農園に当選したと喜んでいたが、お住まいの近くじゃなくて車で行かなくてはならない距離という。わざわざ鍬や鎌を車に積んで何分も走っていって、作るほどのものなのかと思う。
イカンイカン、そんなひがみというかシニカルでは、みんなの嫌われ者になってしまう。
既に嫌われ者になっているという説もあるし・・・

お寺がある。
朝通勤するとき、団扇太鼓(うちわだいこ)の音が聞こえるのはここであったか。団扇太鼓は日蓮宗と法華経だけと聞く。お経が日蓮宗ではなさそうなので、法華経なのかしら・・
残念ながら教養のない私はお経を聞いても宗派がわからない。
家族連れがお花を持ってお墓の前にたたずんでいる。いまどきの子供が親といっしょにお墓参りとは感心だ。お盆でお墓参りに来た線香の匂いが暑さを一瞬吹き飛ばす。
そういえばオヤジが死んで30年、来年当たり33回忌になるのだろうか?
私の田舎のお寺は商売っ気がないらしく、何回忌だから法事をしなさいなんて手紙が来ない。坊主もあまり手広く商売をしないで食っていくだけのつもりらしい。どんな商売もあまり手広くするとバブル崩壊する怖れがある。

細い道があるので何の気はなしに入っていくと、やがて急な坂道になった。戻る気にもなれず汗をかいて上っていく。関東平野とはいえ、まっ平らではなく起伏は結構あるものだ。登りきると少しばかりの公園になっている。見晴らしがいい。遠くに建設中の東京スカイツリーが見える。直線距離にして20キロくらいか。さすが田舎とは違い、空気にチリが多いのでかすんでいる。田舎ならもっとくっきりと見えるはずだ。
完成したら一度は行かなくてはならないと思っている。私は高いところが好きだ。池袋サンシャイン、東京タワー、ランドマーク、東京湾三大観覧車、コスモクロック、お台場、臨海公園を制覇した(自慢になるか!)


方向を変えると我がマンションが500mほどかなたに見えます。田舎の道ですからまっすぐじゃありません。ここまでグニャグニャと20分以上歩いてきました。もうTシャツは汗でかなりぐっしょりとなりました。

まあ、住めば都というけれど、悪いところではないな、と思ったのであります。
もし、8年前都会に出てくることなく、田舎にずっと住み続けていたらどんな暮らしをしていたのだろうか? なんてちょっと考えてみたりします。
中古で買った家はもう築30年以上になったはずですから、とうに建て直していたでしょう。木造プレハブで隙間の多い家だったなあ、夏はともかく、冬は隙間風がひどかった
20数年前、中古の家を買ったとき義理の母がベニカナメの苗を生垣にしろと何本もお祝いにくれた。最初は高さ30センチくらいのかわいい苗だったのだが、あっという間に2mを超えて私は汗をかきかき剪定することになった。生垣を年に何度も剪定しないとお隣から苦情が来ました。
それから、会社の同僚が自分の庭を整理したといって、とにかくありとあらゆる種類の値段もつかないような潅木をもってきてくれたこともある。親切というよりゴミ捨て場と思ったのじゃないだろうか。私は庭に隙間なくそんな木々を植えていた。
あの家もどうなったのだろう。あそこを買った方はもう更地にして建て直し、庭もゼーンブ作り直したと思う。誰にとっても住めば都だろうけど、自分の希望とおりに作り上げるのも当然だ。
そんなことを考えているうちに我が家に着いた。もう汗ぐっしょり、シャワーを浴びて頭も体も洗うとすこしすっきりする。これでビールなど飲めばまた汗が出るだけだろう。
少しは勉強しようか・・




やよい様からお便りを頂きました(10.08.15)
住めば都
口論や揉め事なんて元気が無ければできないんで、佐為さまにそれだけ元気があるという証拠でしょうか?
何にしても口論や揉め事は相手がいないと出来ないので仲良くしてください。

やよい姫様 毎度ありがとうございます。
大丈夫、ご心配なく、家内のほうが私より強いですからね
しかし、会社を辞めて365日家にいたら、発狂しますね・・私の場合。
これは月々、お金を払っても会社においてもらおうかしら・・

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