ピンバッジ

20.09.03

毎度お笑いを一席
毎度ばかばかしいことを書いているが、本日はそれに輪をかけてくだらないお話を一席

私が勤め先が変ったのは2002年だった。それまで働いていた田舎の会社は、1970年頃門の出入りはフリーパスだった。しかし1990年頃からだんだんと厳しくなり出入りの際にガードマンが社員証などを確認するようになった。
とはいえ、従業員は数百人しかいないから、みな顔見知りでバッチをつけてなくても、社員証を忘れても少し説明(言い訳)すれば出入りさせてくれた。

会社を変わり東京に出てくると、さすがにそんなに甘くはなかった。JRのスイカとかクレジットカードのようにICが入った社員証を、駅の改札口のようにタッチして出入りした。社員証を忘れた場合は、人事課の担当者を呼んで本人確認をしてもらう必要があった。同じ職場の同僚などではだめで、人事を呼ぶと当然、あいつはいついつ社員証を忘れたと記録に残ってしまう。だから結構真面目に運用されていた。

他方、社章バッチをつけろと言われたことはない。皆、社章のバッチを着用しているのかと見まわすと、誰もつけていない。偉い人は外部の方とお会いするのも仕事で、そういう時に備えて普通は社章を付けているものだが、私から見て偉い人(ほとんどがそうだが 笑)も付けていない。
クールビズは2005年からだが、それ以前から夏はノーネクタイでOKという会社が増えていた。私の勤め先もうるさいことを言わなかった。考えてみるとビル管理会社が空調の温度設定を仕切っているから、管理会社が協力を求めると、店子はそれに従うしかなかったのだろう。21世紀は礼儀作法より省エネが正義だから。
ともかく5月頃から9月頃まで上着なし、ノーネクタイという服装で勤務している人が多かったから、社章を付けることもなかったのだろう。
ともかく私にとっては気楽・快適な格好で通勤も勤務もできたのはうれしい。

ある朝、出勤時にその"改札口"で同僚がシャツにバッジをつけているのに気が付いた。社章だろうかとしげしげと見ると、彼は外して見せてくれた。それはカンガルー🦘のピンバッジだった。オーストラリアに旅行した時の記念だという。いい大人が恥ずかしくもなく「素敵でしょう」とのたまわく。
えっ! 会社に来るのに社章以外のバッジを付けていいのかと驚いた。都会の会社はフリーダムだ。
おっと、社章でもないピンズ(ピンバッジ)を大の大人がつけるのを見たのは、その同僚が初めてだった。それまではピンバッチは子供のおもちゃと思っていた。

その後、職場でなにかのことから社章の話になったとき、社外で勤務先を知られることは芳しくないこと、紛失したりすると大問題になることなどから、必要ないときは着用しないのだと言われた。なるほど、郷に入っては郷に従えだ。だけどそうなると社章のバッチは、そもそもなんのためにあるのか?

退職するときは社員証も社章バッジも会社にお返しするわけだが、めったに着用することがない社章バッチは、そのときになってなくなっていること……というかどこにしまったのか忘れてしまい、始末書を書く人が多いという。その話を聞いたとき馬鹿な人もいるものだと笑ったが、私も定年退職時に社章紛失の始末書を書いた。その会社で始末書を書いたのは、それが最初で最後だった。


嘱託勤めを辞めて引退した。毎日が日曜日ですることがない。
それまで私は猛烈サラリーマンだったから全くの無趣味である。スポーツ観戦もコンサートにも行ったことがない。
40前後のとき、会社で嫌なことがあり、精神的に逃げるために数年間囲碁に凝った。もちろん仕事しなかったわけじゃない、残業してから碁会所に通ったのだ。
碁盤 ある年冷やかしで出た県の昇段大会で、初段クラスで2位になり半額で2段免状をもらった。ならば囲碁が趣味といえるかもしれない。
退職してから公民館の囲碁クラブに顔を出した。そのときはもう15年以上碁石を持ったことがなかった。免状2段・自称3段で入ったが、やってみれば十分3段で通用した。通用したが、初心者ばかりで相手がいない。有段者は碁会所に行って、公民館はマイナーリーグらしい。
互先たがいせん(力量が同等)ならともかく、4目とか5目置かせて打つのは、あまり面白くない。とはいえ退職直後は状況を知らないので1年ほど近くの2か所の公民館の囲碁クラブに通ったが、自然と足が遠のきやめてしまった。
でも碁会所で碁を打つために900〜1200円も席料を払うなんて、定年退職者にはとてもとても……いや、お金があってもばからしいじゃありませんか。

その後、市が開催する老人大学とか、邪馬台国の講演会、古事記の勉強会などにも顔を出したがいずれも1年通えばおしまいだ。
老人大学は1年で修了、二年目も通うなら別の科目を取ることになる。科目といっても陶芸、園芸、紫式部、パソコン、郷土の知識とかそういうものだ。
邪馬台国も古事記も、どんどんと新しい発見とか研究があるわけではない。資料が限られていること、天皇陵の発掘ができないことなどから、過去の研究・学説を一通り聞けばもう新しい情報はなく1年でおしまいだ。

家内は田舎にいた時も千葉に来てからも友達を作るのがうまく、近隣とかクラブとかいろいろな方面で友人を作り、仲間たちと旅行に行く。 バスツアー 旅行といっても高額なものでなく、数日のバスツアーだ。しかし私が定年する頃は、友達の夫も定年する時期となり、奥さん連中が集まって旅行というのがなかなか難しくなったようだ。ということで家内が旅行に行こうと私を誘う。
出張以外、旅行なんて行ったことがない私である。特に温泉なんて入ったことがない。食わず嫌いならぬ行かず嫌いであったが、家内のお誘いで出かけるようになった。
初めて行ったのが上高地と黒部ダムである。
いや、実に面白い! 旅行とは楽しいものだったのだ。

出張すると職場に食べるものをお土産に買ってくるのが職場の習慣だった。まあたいしたもんじゃなくて、福岡なら「通りもん」、札幌なら「バターサンド」、仙台なら「萩の月」程度であったが。
引退するとお土産を持っていく職場はないし、近所付き合いがあるわけではない。だから旅先でお土産を買うこともない。
家内は行った瞬間がすべてという人間で、思い出なんてイラナイ、記念写真もいらないという人間である。
それで私は自分の記念になるもの、自分へのお土産を買うことにした。とはいえでかいものとか高いものもいらない。まんじゅうを食べるのも好きではない。行ったことの証になるものがいい。
ということでピンバッジを買いました。

昔(私にとっての昔とは1970年代かな?)山に登ると、チロリアンハットと呼んだ帽子に、山の名が入ったバッチをたくさんつけている人が大勢いた。 山登り 帽子に付けきれないときは、勲章のように服に付けていた。
あれは登山記念バッジというらしいが、その山でしか買えないらしい。たくさん付けているのは、俺は多くの山を登ってきたぞという証明であり自慢なのだろう。
もっとも今はネットで山バッチが売買されている。「○○山のものがほしい」「山バッチ売ります。百名山そろっています」なんてのを見かける。山に登らなくても百名山のバッチを集めることができる。
山バッチを止めるのは昔は安全ピンだったような気がするが、最近はタックピンばかりだ。これは流行なのだろうか?

参考:タイタックとかピンバッチなどのピン留めをタックピンというそうだ。

ともかく黒部に行ったとき山バッチを買いました。そのときはたくさん集めようなんて思いもしませんでした。


家内とはその後いろいろ歩きました。前に言ったように家内はさまざまな友人グループと旅行していたので、年4回として10年ならば40回、一回の旅行で数か所の名所旧跡を回ります。日本全国で行ったことがない県がひとつかふたつしかありません。それで私に、行きたいところを言え、どこでも案内してやるといいます。

松岡修三
札幌雪祭りで見た
松岡修三の雪像
その後、2013年はお伊勢参り、箱根、宮古島、2014年は出雲大社、2015年は札幌雪祭り、四国巡り。それ以降も毎年2回くらいは出かけています。
もっとも2019年末から2020年は新型コロナウイルス流行で旅行どころではありません。まあ雌伏の年とでもいいましょうか。

今は国内ツアーというのはとても安い。北海道4日間なんて羽田・札幌の航空券往復より安い。お伊勢参りは新幹線と在来線で東京・伊勢の往復乗車券より安い。それなのに屋根のあるホテルに泊まり、朝晩の飯もついている。不思議としか言いようがない。
いったいどういうからくりになっているのでしょう。確かに豪勢な夕食なんてのは出てきませんが、私が出張した時食べていた飯よりうまいことは間違いない。温泉もあるし気が向けば温泉卓球もできる。極楽、極楽、


ところで、山に限らずどこに行ってもピンバッジがあります。なんとか岬、なんとか渓谷、水族館、動物園、アメリカ軍や自衛隊の基地祭、札幌雪まつりでは毎年オフィシャルバッチがあります。行った記念にと買います。いくら高くても1000円はしません。せいぜいが300〜600円。
ピンバッジのケース
1ケースに10個入ります。
ケースは数十個あります。
3・4年するとだいぶバッチが溜まります。3個4個なら帽子に付けるというのもありますが、もう付けきれません。100円ショップでプラスチックのケースを買いまして、そこに1個ずつ収納しました。
もちろん収集するだけではありません。そこからランダムに取り出しては帽子とかバッグに付けてアクセサリーにしています。日替わり定食ならぬ、日替わりバッチです。
考えてみれば女性がブローチとかネックレスをTPOに合わせて身に着けるのと同じですか?
ピンバッジなどTPOを考えると、どんな場合にもつけないのが正しそうだけど


ところで、最初の頃はエクセルに、入手日、場所、お値段、写真、その他特記事項をインプットして台帳を作りました。しかしそのあとに、台帳を作ってどうするの? どんな意味があるのか? と思い至り止めました。
どうせ自分へのお土産、思い出のためでしょう。いつどこで買ったかなんてどうでもよくて、どこで手に入れたか忘れたなら忘れてもいいじゃないですか。

もちろん気に入ったものは大事にするし、身に付けることが多いですね。気に入ったもののひとつはグアムの紋章です。
グアムの紋章 グアムのホテルのコンビニで、2ドルくらいで買ったものですが、お気に入りでした。あるときショルダーバッグに付けてたらなくしちゃいました。悲しかったです。ネット通販を探したのですが、同じものがないのです。
補足しますと、グアムの紋章は公式に決まっているものですからいわゆるパブリックドメインで、それを印刷したりグッズを作って販売するのは自由です。ですからいろいろなものに使われていて、ピンバッジも多様なものが売られています。周囲にグアムの有名な風景があったり、形状がデフォルメされていたり、正式な色調でなくサイケ気味とかいろいろあります。私は正式な紋章だけのシンプルなものが気に入っていたのです。
いつかまたグアムに行ったとき買おうと思っていたら、昨年、娘夫婦がグアムに行ったとき、それを知っていた娘がお土産に買ってきてくれました。それも安物じゃなくて本体も豪華で、プラスチックケース入りの13ドルもしたという高級品、紛失したら問題になりそうで着用できません。


私がピンバッチを集めているということを知った娘の婿さんは、ピンバッチを入手すると送ってくれます。幻になりそうな2020東京オリンピックの記念ピンバッチは全種類セットを送ってくれました。
婿さんの趣味はネットにアップされた企業のアンケートとかクイズに回答することで、毎晩何通もメールを出すといいます。景品は缶ビールが多いそうで、缶ビールは買ったことがないと豪語しています。
どこかの企業がアンケートをしていて、その賞品が東京オリンピックの公式バッチ詰め合わせだったそうです。ありがとう!

東京オリンピック ところがいただいたオリンピック記念のピンバッチのひとつをを服に付けていて、なくしてしまいました。ショックでした。セットは全部あるから価値がある。まず婿さんに申し訳なかったし、私自身がっかりしてしまいました。幸いというかその後、洗濯するときに自分のズボンのポケットにあったという…申し訳ありません!
本当を言えば、その公式バッチはピンで止めるのではなく、布地の表裏からマグネットで挟み込む方式でした。マグネットでは布地が厚くなるととたんに力が弱くなり、バッチを止めるのには不適じゃないかなと思います。
あっ、言い訳はいけません。

私の趣味を知っていて応援してくれる人はほかにもいます。
姪はディズニーランドとか遊園地に子供たち(私から見て大甥、大姪)を連れて行くと、必ずピンバッジを買って送ってくれます。最近のディズニーランドのピンバッチはサイズが大きすぎる感じがしますね。あまりでかいのを付けると大人は恥ずかしい。


というわけでピンバッチ集めは、私の趣味になりました。
どんなピンバッチが好みかというと、市場価格とか希少性にはこだわりません。とにかくデザインと色調が好きか嫌いかってことです。絵柄とか全体のデザインがかっこよければ、企業のノベルティでもなんでも気にしません。新製品発売キャンペーンのスローガンでもいいのです。要するに見た目が100%で、不細工とださいのは不可。
かっこいいのを集めるのも結構大変なのです。

葛西臨海水族園には、ご当地バッジが5種類くらいあるのです。ところが自動販売機ではなくガチャポンで、何度やっても3種類しか出てきません。欲しいのが出るまで3度くらい行きました。
一度横須賀の海上自衛隊の基地祭に行って、かっこいいピンバッチがあったのですが、ものすごい人で買えませんでした。その後、楽天か何かでみつけて買いましたが、欲しいのは絶対に欲しいです。
ネットオークションでは、希少品では数千円とか中には万単位の値段のものもありますが、たいていは売値の倍、せいぜい1000円です。
また行った記念であるという気も薄れました。行ったことがない土地やイベントのものでも、見た目が良ければ欲しいし、身に着けます。そういう意味では私はいいかげんな人間なのでしょうけど、自分が好きなピンバッチを付けてうれしければハッピーじゃないですか。
たいしてお金もかかりませんし、他人から見たら無価値、私に似合っています。なによりも保管場所がくわないのがグッドです。
定年後の趣味で奥方に嫌われる第一位が陶芸、第二位が絵画、第三位が楽器だそうです。
陶芸は使い道がない作品が増えて場所をとり、捨てるに捨てられない。絵画も5枚十枚ならかわいいけど、月に2作としても余命20年ですと、なんと480枚、キャンバスでお宅が埋まります。売れたらいいですね。楽器は……まあヴァイオリンとかトランペットならともかく、コントラバスとかドラムですともう夫婦喧嘩決定です。


ところで会員の徽章とか社章なんてのも、ヤフオクでも楽天でも大量に出展されていますが、社章をオークションなどで販売するのは合法なんでしょうか?
すごいのは各社ランダムに何十個入りで何万円なんてまとめ売りもあります。

私は社章ではないですが、沖縄に行ったときアメリカ軍の階級章を買ってきました。おっと本物かどうかわかりません。本物にしても一等兵じゃあまり値打ちはなさそうです。


私の宝物というか愛着があるのをいくつかあげます。
一番の宝物は前に述べたグアムの紋章ですが、お気に入りはたくさんあります。

あまり高額なものは持っていない。もともとデザインの好き嫌いで集めているので、いくら市場価値があってもカッコ悪いのは欲しくない。


うそ800 本日のきっかけ
述べたように集めたバッジは100円ショップで売っているプラケースに入れている。ところが増えればプラケースを買い増ししなければならない。数日前ダイソーで買ってきて、本日は台紙を作ったのです。まあそんなことをしてたので駄文を書きました。
なおピンバッチ収集はメジャーな趣味のようです。飾るには布地は重さで平滑を維持できないから、周囲を枠に固定した皮革に取り付けて展示するのが良いということを聞きました。あるいはリングケースの枕に入れるとか、これも真面目にすれば大金がかかりそうです。
やはりプラケースに入れて置き、気分に合わせて着用するくらいがよろしいかと……

2020.09.05追加
私がピンバッチをなくすことが多いように受け取れた方、
拉致した人を返せ あなたは正しい。でも思うんですよ。ピンバッチは使われるために作られたなら、大事にしまっておくのは生まれてきたかいがありません。
着用してナンボのはずです。ですからゲットしたピンバッチは身に着けたり、持ち物につけたりして使います。それが生まれてきたものに対する敬意であり報いることでしょう。
そして着用中に落ちたりすることもあり、どなたかから「それ素敵!」なんて言われたら差し上げることもあり、それでよいのかと、
死蔵され何の己がピンバッチ お粗末




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