老人よ怪我をするな

21.11.11

本日は、最近私が老人であると認識したことと、その顛末を書く。
思いがけずに起きることを「青天の霹靂へきれき」という。
晴天とはよく晴れた青空で、霹靂とはイナズマの光とか雷鳴ゴロゴロのこと。
そんな事態になると思いもよらずというが、実際は空模様の変化を見逃していることが多いのではないか?
そしてそれは青天の霹靂だけでなく、突然起きたと思われる出来事すべてについて言えると思う。何事も原因があるから結果が生じるのだ。

注:私が「青天の霹靂」なんて言葉を知ったのは、山口百恵が1977年に歌った「言わぬが花」でした。年寄りは昨日のことより半世紀前のことを覚えているものです。
気になって宇崎竜童と阿木燿子は今どうしてるのかとググったら、お二人ともお元気で老人しているようです。私のように体が硬くなければよいのですが……


私がギックリ腰で寝込んだのは9月10日だった。しかし背中が痛いと感じたのは、それより早く9月5日だった……今思えば、あれは予兆だったのだ。

注:私は日記をつけてないが、手帳に日々の予定・実施したこと、小遣帳、体の調子、泳いだ距離、歩いた歩数、体重などをメモっている。まさに工場管理の基本である平常時の把握である。異常とは正常を知ってこそ言える。私はISOの申し子である。
なお紙の手帳など古いといわれるかもしれないが、私はクラウド上の電子データより実体ある手帳を信頼している。

その後しばし家でおとなしくしていたが痛みは軽減せず、とうとう我慢できなくなり9月14日に整形外科に行った。レントゲンやMRIなどで検査した結果、外傷はなく特段異常もないから筋肉痛だろうという。その日はシップ薬をもらっておしまい。

シップ薬を貼れば翌朝には腰も足も痛みは治まり、数日おとなしくしていたがまたフィットネスクラブに行くようになった。しかし数日運動をしていると、おかしいと感じた。治りきっていないのか、シップで痛みが止まっただけなのか?
また数日フィットネスクラブを休んで家でおとなしくしていた。

するとまた痛みは軽減してきた。これ幸いとフィットネスクラブで泳いでいるとまたまた……それでまたフィットネスクラブに行くのを止める。まさにバカというかアホというか、我ながら懲りない奴だ。学習能力がないともいう。


そして10月4日近くのスーパーまで行く途中、突然こむら返りのような感じになった。寒い夜 就寝中とか長時間泳いでいてなったことはあるが、温かい日中歩いていてこむら返りになったのは初めてだ。痛みがひどく脂汗が流れるとか、そんな感じで全く歩くことができません。道端に腰を下ろして時のたつのを待つ。我が家は田舎ですから、腰を下ろす場所には困りません。
普通のこむら返りならば20分もさすっていれば収まるものですが、このときは翌日になっても治りません。これは重症です。

翌日 整形外科に行きました。病院にたどり着くまでも大変。同じ医者がまたかよという顔をしております。今回はじっくりと調べます。
仰向けにベッドに寝たあっしの足を医者が持ち上げるのですが、驚くことに真上まであがりません。自分は頭のほうまで足が曲がると思っていたのに、医者が70度しか上がらんなんていうのを聞いて愕然・呆然です。

足上げ
両足を一緒に上げたらだめですよ

自分では左図のように上げているつもりだが、現実は右図のように真上までこない。

見かけは私より年上のような(とはいえ60くらいだろう)医者が、肉離れである。その原因はとにかく体が硬い、ギックリ腰もこむら返りもそのせいだという。解決するには体を柔軟にするしかないが、痛みがひどい状態ではリハビリもできないから、肉離れの痛みがなくまで安静にしていろという。
またシップ薬と軟膏と炎症を止める飲み薬をもらってきました。

それからは家でおとなしくしておりました。当初は病院の行き帰りもつらく足の屈伸などとてもとても……という状態です。
とはいえ2週間ほどすると日常生活では痛みはなくなりました。ものは試しと図書館に行ってみました。往復4,000歩は歩きます。最初の500mくらいは痛みもなく違和感もないのですが、それを過ぎるとだんだんとふくらはぎが固くなる、よく長時間歩くと足が棒になるといいますが、平地を500m歩いただけでそんな状況になるわけです。それを我慢して歩くと膝もふくらはぎも痛みだして、休憩するありさま。まだまだだと自分が納得してしまいます。


11月になってなんとか普通に歩けるようになりました。そうしますとリハビリです。
若い理学療法士に体が硬いですねと言われて……家内に言われて、医者に言われて、理学療法士に言われて……立つ瀬がない。

医者は忙しいせいか細かいことを話してくれなかったが、この理学療法士はマッサージしながらいろいろ話してくれた。
球技でも水泳でも走るでも、スポーツは楽しい。でもスポーツをするには筋肉も持久力も必要だが、スポーツをすれば筋肉が付き心肺能力が高まるわけじゃない。そのためには筋トレをして必要な筋肉をつけ、有酸素運動をして心肺能力を高めなければならない。
ところがそれだけでは柔軟性がないから、普段からそして運動の始まりと終わりにはストレッチしなければならないという。
なるほどというか、まあ当たり前のことだと思って聞いた。

ところが更に続きがあった。
ストレッチだけでは柔軟性が付かない。その前に……その前もあるのかよ?
理学療法士のたまわく、そのためにするのが筋膜リリースなんだそうだ。
私が仰向けになって足が90度まであがらない話をしたら、ストレッチも無理にしないほうがいいという。ともかく筋肉というか、腿とかふくらはぎが触って柔らかくなってからだという。


筋膜と聞いて以前会員になっていたフィットネスクラブでのことを思い出した。
どのフィットネスクラブも会員の関心を集めるために、毎日いろいろ無料レッスンをしている。初心者対象のヨガとかジャズダンス入門コースとか。そんな中に筋膜トレーニングというのがあった。

筋膜トレーニングと聞いても全く想像がつかなかったので、一度だけ参加してみた。私は好奇心だけは豊富なのだ。
体前屈
トレーナーが最初に参加者全員に体前屈をさせる。
平日の日中フィットネスクラブにいるのは皆60歳以上だ。だから体前屈をして指先が床に着くなんて1割もいない。みな床上5センチとか10センチとか。プルプルしている人も多い。

それからしたことは簡単なことばかりだった。テニスボールで、腕、太もも、ふくらはぎ、胸、足の裏などで軽く転がす。直径10センチ長さ30センチくらいのプラスチックの丸棒にふくらはぎや腰を載せて、体を前後に揺らすとか、とにかくそんなことをひたすらした。
正直言って私は何の意味があるのかと思いました。

矢印
30分でレッスン終了です。何も変わった気がしません。
するとコーチはまた体前屈をしろといいます。何のことか分かりませんがやってみま。
すると、不思議、開始時には床上10センチだった人が、余裕で床に着きます。
体前屈
電子レンジで30秒チンするだけ(ウソ)

あれには驚きました。筋膜トレーニングは恐るべき効果があるのです。
コーチはもちろん1回しただけではだめ、すぐに戻ってしまう。毎日していると柔軟性というよりも、筋肉が柔らかになりますよという。
なるほど、これはすごいと思いました。
もちろん器具を使わず、自分の手でマッサージしてもよいのです。

ではストレッチと筋膜リリースの違いはというと、比較をまとめました。

項目ストレッチ筋膜リリース
対象筋肉筋膜
目的けがの予防
そのための関節の可動域拡大
姿勢や可動障害を改善
そのため筋膜のねじれ・癒着の開放
時間ひとつのストレッチは60秒以内ひとつが90秒〜数分
主な動作筋肉を伸ばす皮膚を通して支障のある筋膜を圧迫
やマッサージする

ストレッチは意識して伸ばそうとするのに対して、筋膜トレーニングはマッサージしていると自然に伸びる感じでしょうか。

注1:ちなみに筋膜とは、筋肉を包む膜だけではなく、骨、内臓、血管、神経などを包みそれぞれの位置を支えている袋のようなものすべてを呼ぶそうです。

注2:筋膜トレーニングなのか、筋膜リリースなのかと疑問を持たれるかもしれない。理屈からはリリース(解放)がトレーニング(訓練)より合っているように思う。
ちなみに日本のGoogleで検索すると筋膜トレーニングが594万件、筋膜リリースが672万件、アメリカのGoogleではfascia training 2000万件、fascia releaseが1960万件であった(2021.11.11)。まあどちらも使われているようだ。


フィットネスクラブで筋膜トレーニングを習って私は早速テニスボールを買ってきて、毎朝 腕やふくらはぎの上をコロコロと転がしました。体が硬いのを自覚していた私は改善できると思ったのです。
テニスボール でもね、はっきり言って筋膜トレーニングは面白くない
スポーツのように楽しくない!ストレッチのように傍から見て、おおやってるねと思われることもなく、筋トレのように汗が流れてやったぞと思えることもない。
だから1週間もしないで飽きてしまいました。そのテニスボールは今も本棚に転がっています。

話は戻って、理学療法士が言うには、私は体が硬い。だからスポーツや筋トレをする前にストレッチをしないとだめで、更に日頃筋膜リリースをして筋肉そのものを柔らかくしないとストレッチもダメよとのこと、
ダメというのはもちろん、ギックリ腰になりやすい、こむら返りしやすい、ケガしやすい、老後は体が不自由になりやすい……いや、既になってますから。

年取る前から、いや私は生まれながらにして体が硬いのです。それは嘘か?
子供のとき外を走り回っていなかったということでしょう。もっぱら本を読んだり工作したりというのが好きな子供だったから。そして柔軟性とスポーツは関係が深いでしょうけど、子供レベルの遊びとか素人のスポーツくらいは体が硬くても何とかなっちゃうんですよ。
それでいままでの70年間、運動会とか徒競走とか、ボウリングとか、ごまかしてこれたんでしょう。

1980年代末頃、郡山近くにもゴルフ場がいくつもできて、ゴルフをする人が増えた。それでひとつ私もと練習場に行ってレッスンしてもらいました。翌日、体中が痛くてそれっきり。あれから30年以上ゴルフには近づいておりません。

歳をとり、体が硬くなり筋肉も弱くなって、特に寒くなる季節は不具合が起きやすくなり(医者談)、とうとう崩壊に至ったのでしょう。

何かスポーツをするとき、例えば休日に町内会のソフトボール大会があるとしましょう。
普段からスポーツをしている人なら当日スポーツウェアを着て出かければよろしいでしょう。何も準備することなしに参加して楽しめるわけです。
普段スポーツをしてない若者なら大会前1週間くらい走るとかキャッチボールをしておくかとなり、更に老人となるとひと月前からストレッチをしようとなり、私のような体が硬い老人はそういうイベントに備えて日頃から筋膜リリースをしなければとなるということです。

だけど………卓球で明け暮れている家内に呆れられるほどプールに通っている私なのに、どうしてこうなった?


風呂上がりに家内に塗り薬をふくらはぎにつけてもらいながらそんなことを話していたら、家内がふくらはぎに触ってみろと言います。 卓球 愛妻のふくらはぎに触ってみるとプルンプルンしていて、まったく固さがありません。
それに比べて私のふくらはぎはとっても固い。押してもへこみません。

もちろん家内はほぼ毎日卓球かバレーボールのクラブをしていて、ぜい肉でなく筋肉があります。腹筋など驚くほどですが、それが特段筋トレとかストレッチをせずに、普通の暮らしとクラブだけで維持しているのがさらなる驚きです。

家内が言うには、スポーツそのものは一生懸命しないけど準備運動はしっかりやっている。そうしない人は怪我をするといいます。実際に市の大会では毎年のようにボールを追いかけて転んだり滑ったりして脚や足首を痛める人がいること、ひどいのは転倒した際に頭を打って大怪我した人もいるという。
67歳の家内が若いほうですから、クラブの高齢者は80歳以上、だから皆準備運動は十分にするのだといいます。

それからクラブの目的が楽しむため、人と会うためなので、まじめにしないといいます。といってもふざけるわけでなく、上達しようという意識もない。取れないと思えばボールを追いかけることもしない。無理せず体を動かして汗をかいて、終わったらみんなでランチというのが基本パターンなのだそうです。
実は今日も家内は8時半に出かけて午前中クラブ活動で、午後は仲間とランチを食べ帰宅は4時過ぎでした。運動しているより駄弁っているほうが長いのです。それを不真面目とか熱心でないというのはお門違いで、老人クラブと思えば大変結構なことでしょう。


家内に比べて私の場合は、プールに入る前に手足の運動は何分もしません。それから水中ウォーキングを5分くらいしますが、それが準備運動になるのか、冷たい水中なら逆効果なのかもわかりません。挙句に昨日は2200メートルしか泳がなかったから、今日は2500泳ぐぞとか考えているのですから、なにをかいわんやです。
そんな私ですからケガもするのでしょう。家内のことを向上心がないなんて言えません。

そんなことで、もう十分に反省してます。
理学療法士に話を聞くまでは痛みがなくなれば、すぐにスイミングを再開……と思っておりましたが、以前より体が柔軟になったと自覚できたらにしようと筋膜リリースに励んでおります。
目安としては仰向けになって足上げが90度を超えたらとしましょう。

いやそれは無理かもしれない。せめて80度を目標に……


老人マーク 本日の教訓

老人のスポーツは、怪我するためでなく怪我をしないため。

もっとも吉田松陰さんは
吉田松陰 かくすればかくなるものと知りながら
やむにやまれぬ大和魂

と語っていました。
生まれてきたからには、思うところに突き進むのも一つの生き方でありましょう。
とはいえその道を突き進み彼は処刑され、私は怪我で再起不能になる運命か。ツライ





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