日本語を知らずして日本語を語るなかれ 2002.11.17

哲神様からお便りをいただきました。
非常に些細なことかもしれませんが
どうも、海の向こうからまたメールさせて頂いております。小生難しいことは上手に書けないので簡単な内容のみ発言させてください。
今回の一連の北朝鮮拉致問題で、非常に些細なことですがどうしても引っ掛かることがあります。それは新聞、テレビ、政治家皆、拉致被害者5人の処遇について北朝鮮に「返す・返さない」「戻す・戻さない」と表現しています。これが小生には実に耳障りなのです。元々彼らは日本国民であり本来なら普通に日本で暮らしているはずです。不幸にも拉致という犯罪に巻き込まれ意に反して24年間も祖国から隔離されてきた方々です。その方々がまた北朝鮮に行くことを「返す」や「戻す」とは言いませんよね?
なんとかならんもんでしょうかね。
つまらんことかもしれませんが小生は気に入らないので愚痴らせてもらいました。^^;
毎度お便りありがとうございます。
この言葉に関しては私も非常に気になっております。

広辞苑(昭和49年第二版)によりますと、『かえす』は「返す」「反す」「帰す」「還す」「孵す」の漢字の区別はありません。
  • 事物、事柄のおかれた順序、位置、状態などを入れ違いにする。
  • 事物、事柄などを元のところ、状態、人などへ戻す。
  • 時を経て事物の状態・性質を今までと違ったものとすること
しかしながら、広辞苑が絶対であるとはいえません。
また、「元」といいましても少し前の状態か、ズーット前の状態かということも不明です。

MS-IME付属の辞書によると
  • 「還す」常用外であり、野球で走者を還すなどに限定的に用いる。
  • 「反す」常用外であり、上と下、表と裏をひっくり返す、畑の土を返すなどに用いる。
  • 「帰す」人を祖国に帰す、家に帰す。
  • 「返す」事物を白紙に返す、借金を返す。
これは広辞苑よりは哲神様や私の感覚に近いような気がします。

拉致(誘拐)され、日本に戻ってきた方々がまた北朝鮮に行くことを「返す」と表現することは広辞苑の上記語義からすると、必ずしも間違いとはいえないような気がしてまいりました。
もっともとにかく北朝鮮に返せ、戻せと語っている方々は拉致問題が北朝鮮に不利益にならないように活動してきた人たちと重なることを思えば、語義的に正しいからその言葉を選んだのではなく、拉致された人が北朝鮮に住むことが正常である、正しいことであると国民に伝えたいからその言葉を選んでいることは明白であると考えます。


まあ、北朝鮮支持者もこのようなおかしな言葉を使っておりますが、北朝鮮はそれに輪をかけておかしなことを言っております。 「日本が(拉致された一時帰国者を帰す)約束を破り、この問題解決を難しくした」
というのです。
まあ、盗人猛々しいとまで言わずとも「問題を起こしたのは北朝鮮じゃないか?」と言いたくなります。
でも北朝鮮はその疑問を呈する前に回答してくれております。
「問題を起こしたのは日帝の植民地支配である」そうです。アッケ!
なるほど、はるか60年前に日本(断っておきますが、朝鮮は日本の植民地ではありません。日本だったのです)に属していたことが、現在の飢餓、貧窮、国家破綻をもたらしたそうであります。
まさしく主体思想とは想像力豊か感嘆いたします。
それ以降の朝鮮戦争はなかったのでしょうか?金日成の支離滅裂な国政はなかったのでしょうか?


もっとも、人々に偏ったイメージを植え付けようとしておかしな言葉をつかうのは今に限ったことではありません。
以前某新聞にこんな見出しがありました。
『自衛隊の戦車が我が物顔に公道を走る』
我が物顔とは「他人のものを自分のものだという顔つき、態度」(広辞苑)だそうです。
ご存知かもしれませんが、戦車には車検があり、方向指示器があり、大型特殊免許を有した自衛隊員が道交法にしたがって走行しております。我が物顔ではなさそうです。これを我が物顔というのなら某新聞社が取材に赴く場合も『○日新聞社の記者は国道を我が物顔に走っている』と書かねばなりませんね。

哲神様のお便りをネタにいささかキーボードが走りすぎましたが、私の感じていることはまったく同じです。
こういった言葉を使う人たちは日本国民にすこしでも偏ったイメージを植え付けようとしてがんばっておられるのでしょう。

日本語を語るには日本語をもっとよく勉強せねばならないと感じます。



偏向発言される方々へ
『日本語を知らずして日本語を語るなかれ』とお伝えせねばと考えるところです。




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