saitota様、お久しぶりです。香港の鈴木です。
石破防衛庁長官の談話が前に問題になったようですが、それに関してちょっと北朝鮮に対するアクションについて書きました。
読んで頂ければ幸いです。
「数千人もの犠牲者が出るのが分かっていても他国が攻撃してくるのをただ待っていてる、というのが憲法の解釈ではありません。攻撃を受ける立場については、私達の憲法では考えられていないのです」と、石破防衛庁長官は説明しています。
北朝鮮に関するアクションで私がいいたいのは、専守防衛の一般論を述べたいわけでも、憲法解釈などという不毛な議論(観念論)を述べたいわけでもありません。対北朝鮮の軍事的脅威に対する行政の対応はどうするのか、という具体策です。
昭和20年の敗戦以降、日本国は、米国の核の傘に入っていることをいいことに、政府も国民もマスコミも防衛論に関して、観念論、一般論に終始し、何らの具体策も策定しようとはしません。私は、具体策を話したいのであって、観念論を話すつもりはありません。
以下、
- 北朝鮮が弾道ミサイルの標準を日本に合わせている、ということは疑問の余地はない。それが、日本の純国内設備に標準を合わせているか、在日米軍基地に標準を合わせているかは不明であるが。
- 北朝鮮が、しばしば日本を非難する、「日帝の北朝鮮への侵略主義」というのが、国内に対するプロパガンダであり、日本国が北朝鮮に対して侵略的な意図は全くないことは、明白。いまや領土的野心を持った侵略が経済的に割に合わない、というのはみな了解しているでしょうからね。
むしろ、まだ北朝鮮への送金を停止してもいない良い国ですよね、日本は。
- つまり、侵略の意図のない国にミサイルの標準を定めているのは、恫喝・脅迫以外の何者でもない。米軍基地のみに標準を合わせています、とは北朝鮮は一言も言っていない。
日本の原発・政府中枢組織にミサイルの標準を合わせている可能性が高い。
- 北朝鮮が、日本を資金供給源として頼りこそすれ、現体制を存続したままでは、日本・韓国を除いての経済復興は、国際的な資金供給国がないので不可能。特に、日本の第2次大戦時の戦争賠償金は、金正日体制は大いにあてにしている。
- よって、ミサイルを発射して、経済的・国際政治的に不利になる事態を招く可能性は低いかもしれない。
- しかしながら、金正日体制の不安定性は、金正日自身が軍部を完全に掌握しているか不明。軍部の独走でミサイル発射に踏み切るおそれもある。
- いかに米軍の軍備が優れていようと、北朝鮮がミサイル発射を行ったら、在日米軍の軍備では迎撃は不可能。
- よって、自衛隊の迎撃力を高める必要があるが、現行のPAC2の質・量とも日本全土を防衛することは不可能。たとえ、PAC3を導入しても、PAC3の迎撃力は完全ではないため打ち落としが出る。
- このアクションは、日本国が起こしたことではなく、北朝鮮が、自国の恫喝外交、脅迫外交、現政権の保全を狙ってのアクションである。
という事実認識を私はしております。これをもとに、日本国が、
- 北朝鮮のミサイルの迎撃をすることは、妥当−そりゃ、ガンを突きつけられた側がやる行動は、降伏か抵抗かに決まってます。私はミサイルが落ちてきて、「ああ、攻撃されましたね」なんて確認してからアクションを起こすという間抜けな真似はイヤですね。
- 迎撃ミサイルの増強は妥当迎撃ミサイルは、北朝鮮に標準を合わすとか、そういったものではないので、攻撃兵器ではありません。弾頭も相手のミサイルを迎撃する程度の弾頭しか積みません。
−PAC2、3をノドン・テポドンに対抗するミサイルと勘違いしている人がいる。不思議です。
- 条件付き集団的自衛権の行使は妥当
石破防衛庁長官は、国連決議或いは日米安保条約に合わせて日本国も防衛行動を起こすといっているのであって、日本国独自で、北朝鮮のミサイルサイトを攻撃しなければいけません、などとはいっておりません。日本の軍事力でそんなことできるわけもなし。
さらに、この件は、北朝鮮に対しての集団的自衛権の話です。北朝鮮に対してでしたら、米国が攻撃されての自衛権の発動というのはあまり起こりえない。日本が攻撃されての米国との集団的自衛権の発動、ということになります。
−テポドンが3段式に改良されても、米国に届くかどうか、軍事技術はそれほど甘くないでしょう。三菱重工ですらH2ロケットで随分苦労しているわけですから。北朝鮮の国力と三菱重工の売り上げとどっこいどっこいじゃなかったでしたっけ?
- 米国が北朝鮮の核施設を宣戦布告なしにピンポイント攻撃することは、熟慮を要する。基本的には反対
−ピンポイントで核拡散は防げるでしょうが、イラク人と違って、そういう意味では腑抜けではない北朝鮮人ですので、リスクが有りすぎると。
−放射能汚染を必要最低限に抑える攻撃が考えられない。
- 米国が北朝鮮のミサイル施設を宣戦布告なしにピンポイント攻撃することは、場合によっては賛成
−腑抜けではない北朝鮮軍が破れかぶれでソウル侵攻などを起こさないように、通常戦力も叩くことが必要。
−ABC兵器がないことを確認。
−主に軍属のみの被害になるので、北朝鮮が姿勢を変えなければやむなし。
−対話路線が行き詰まったときのみ行使する。
- 上記4,5の在日米軍施設利用は賛成
- 国連決議を経た北朝鮮に対する経済制裁には賛成
−別に国連決議ったって、北朝鮮への債権を持っている国って、何カ国あるのか。ほとんどが日本・韓国・中国・ロシアです。国連決議といっても関係ない国が多すぎるので意味ないのですが、日本人は錦の御旗がお好きだだから。コンセンサス取りやすいという政治的な意味だけ。
- 海上自衛隊の自衛艦と操船要員を臨時に海上保安庁に移設し、領海内の警備を徹底
−いくら自衛隊と海上保安庁が仲が悪いといっても、この時節、余計な予算はないのだから、自衛隊が機能しないのなら、海上保安庁に移設した方がより有効ではないのでしょうか?海上保安庁ならどうどうと巡視ができる。
(変な話です)
- 戦争賠償金の具体的補償方法の提示と、その供与条件の提示
−拉致家族を人質に取っているのだから、こちらも戦争賠償金を人質に取っても構わないのでは?
- 朝鮮総連の経済・政治活動の停止
- 朝鮮総連系信金への補償停止
- 公安庁がリストアップした北朝鮮系企業の活動の停止
という行動を選択する、という考えですが。
自衛なんだから、軍事行動だけが自衛行動ではないはずですよね?9〜12などを北朝鮮がカードを切る毎に日本も切っていくというのはどうでしょうか?例えば、核処理を×月×日までに停止しなければ、朝鮮総連の経済・政治活動を停止させます、
というカードは?今度多国間交渉で、日本を意図的に外そうとしたら、こういったカードを日本も切る。いやいや、テロをやられるおそれもあるので、いよいよの時以外は、切るのは危ないかな。
朝鮮総連に関してはたいした知識がありません。活動停止の意味があるのかどうか・・・
古い話で恐縮ですが、1950年の朝鮮戦争前夜、1月12日ワシントンのナショナルプレスクラブで、当時の米国国務長官のディーン・アチソンは、
「米国の極東防衛戦は、アリューシャンから日本列島、琉球に至る線で、これは継続的に維持され、フィリピンに連結される。
この防衛戦の外部に位置した国(朝鮮と台湾)の安全保障、軍事攻撃に対する保証はない。攻撃を受けた場合の第一次処置は、まず攻撃を受けた国民が抵抗することである。その上で、国連憲章による全世界文明の約束によるほかないだろう。」
と述べています。それから、53年、米国の極東防衛戦は、韓国を組み入れ、フィリピンを除外したぐらいで、基本的には変更されておりません。しかし、日本といえど、まず「攻撃を受けた場合の第一次処置は、まず攻撃を受けた国民が抵抗すること」であり、攻撃を受けてもガンジーしていろ、そのうち助けに行くから、という話じゃない。ガンジーしたい人はどうぞご自由に。私はパルチザンになっても抵抗する方を選びます。
PAC2、3の配備は、北朝鮮に対する恫喝になります。米国の核の傘に頼らず、自身の防衛の傘を徐々に拡げるべきだと考えます。使わずに済むなら、それにこしたことはない、持たずに済むならそれに越したことはないのですが、世界はキチガイで溢れてますので、そうはいかない。理想的平和論では、この世界生き残っていけないのが現実です。
さすがの中国もPAC3導入の話は表だってそうそう強行には反対してません。しょうがないな、と黙認だと考えます。
「目には目を、歯には歯を」
もう、「和をもって貴しとなす」なんて千数百年も前の理論はこの世界では通用致しません。内輪じゃそれも構わないのだろうけど、元寇、日清、日露戦争の時のように神風がふく時代じゃなくなってきました。日本に都合の良いときだけ「和をもって貴しとなす」と云っていましょう。国内じゃあ「本音と建て前」を通すくせに、海外では初な処女、というのが日本の外交です。
saitota様は、"Curfew"という法規的処置を御存知でしょうか?
"Curfew"というのは、外出禁止令のことで、"Martial Law"、つまり戒厳令になる一歩前の状態を云います。
私はスリランカに駐在したとき、何度もこの"Curfew"(カーフュー、とでも発音下さい)が発令されて難渋致しました。
文字通り、外出禁止ですから外に出られません。"Curfew"発令中に外に出るということは、軍隊にどうぞ射殺して頂いて結構です、ということ。いつ発令されるかわかりませんので、食料・水を数週間分確保して、電気が止まっても良いように乾電池・ローソクの準備も怠れません。外出中に発令されようものなら、その場から動けません。幸いにして、ある程度の予告が有りましたから、家にはたどり着けてましたが。
パキスタンに出張中も、ちょうど折悪しくブット政権が倒れたときで、"Curfew"を食らってしまい、あわててチャシュマというアフガニスタン国境の近く、インダス川の川岸(といっても川幅が数キロもあって対岸が見えないのです)の町から、スリランカ人のエンジニアを連れて逃げ出したことが有ります。
なぜ逃げ出したかというと、日本人である私は大丈夫(たぶん?)ですが、パキスタン人がスリランカ人のエンジニアに危害を加えるのを恐れたからです。というと格好が良いですが、私もずいぶん怖かった。その後は、パキスタン第2の都市のラフォールまで、陸路車で7時間移動して、やっとホテルにたどり着きました。
みなさん、多少は私も世界を見てきてますので、ある程度確信を持っていえるのですが、世界は怖い所です。とてもじゃないが、自分の旗幟を鮮明にしておかないと生き残れません。入国カードに宗教の欄がありますが、ここに無宗教(SingaporeじゃFree Thinkerと呼びます。まあ、No Religionでしょうか?)とでも書こうものなら、入国を拒否する国だって有ります。(←イスラム国は特に)ことほど左様に、個人でも自分の旗幟を鮮明にする必要に迫られるのです。
私が、「和を持って貴しとなす」などは世界では通用しません、
などと書いて不快感を持たれた方もいるかもしれない。
「目には目を 歯には歯を」と書いてあるのを見て、香港の鈴木は好戦的なヤツだと思われた方がいるかもしれない。
しかし、この歪な世界では、日本国内の理念が通用しないのです。
私だって、戦争なんか嫌いです。実際、兵器・死体・興奮する人々・血・手足のない子供等を身近に見てますので、こんな非人間的、或いは極めて人間的な行為はないと思います。
嫌いではありますが、それを防止するのに理想的平和論を唱え、レノンのイマジンでも歌えば戦争は防止できると云うほど私は非現実的ではない。
抑止力としての兵器という必要悪をそれを持っていること、いざというときにはどう使うか、どう反撃するか、世界に対してアピールすることは重要です。
北朝鮮は、本当はミサイルを実際に発射したり、日本に侵攻したりする意図は持っていないかもしれない。しかし、そういう意図を持っているかどうかはわからないことです。あくまで、最悪の状態を考慮して、行動計画を平時から練っていく必要が有ると云うことです。
私の話は、まだまだ具体性に乏しい。"Curfew"外出禁止令も"Martial Law"戒厳令も日本では法制化されていません。
法制化しようとすると、人権団体、左翼団体が強硬に反対するでしょう。でも、使うと云っているのではない。ある事態を想定して、使えるようにしておく、ということなのです。
何でも国連、という解決方法を述べる方がおりますが、私が出くわした紛争地帯で国連軍を見たことはありません。国連そのものが予算不足で、そうそう平和維持軍を派遣できないのです。
平和維持軍他世界の軍隊が国連軍として派遣される時、国連は兵士一人につき月1000米ドル払う必要がある。12万円が多くはないと感じられるかもしれませんが、それすらも国連は払えないときがあります。
まずは、自助努力をして、万全を尽くして、それでも国連が何も調停してくれない、そんな事態を日本も考えるべきだと、私は考えます。この問題は、米国が好きとか、嫌いとかの次元と話が違う問題です。日米安保条約を発動する前に、日本としての自助努力をしなければいけません。その後でやっと出てくるのが国連のアクションなのです。
長文で失礼致しました。 香港 鈴木