わしは定石を知らないのでいちいち考えねばならん 名文句その5 2004.11.24
この言葉はプロ棋士梶原武雄(カジワラ タケオ)九段のお言葉であります。
梶原先生は大正12年2月25日生れで勲四等瑞宝章を頂いたという大物であります。みなさまも新聞や雑誌で囲碁通信講座なんて広告で梶原先生の名前とがまみたいなお顔を拝見したことがあるはずです。
彼は木谷門下の鬼軍曹として、若手を鍛えたそうだ。といっても彼が教えた若手たちも年老いて既に引退、現在プロとして活躍しているのは梶原さんの孫弟子とか彦弟子になるのだろう。

囲碁というものは自分の陣地の面積を大きくすることを競うゲームである。 man2.gif このときお互い交互に石を置いていくわけだから自分だけ得をすることは無理だ。お互いの利益が等しくなる一連の応酬を定石(じょうせき)という。相手より自分の利益を多くするという定石は残念ながらない。もちろん自分だけが不利になる定石もない。
じゃあ、定石だけを使えば勝敗はつかないのでは? ということもない。
その部分ではお互いにイーブンの別れであっても、全体を見ると片方が得をするということは多々あり、そういうのを定石選択の誤りといいます。
小局で勝っても大局で負けてしまったという太平洋戦争のようなものです。
おばQは考えてもいい手が浮かばないだろうって!?
実はそのとおりです。私はいくら考えても定石が思い浮かびません。
話を戻しますと、梶原さんの言っていることは、たいていの棋士は定石を覚えているからいちいち考えなくとも打つ(石を置く)ことができるという皮肉でございましょう。
本当はその場その場を良く考えて石をおいた結果が定石といわれる形になるということをカジワラ先生言いたかったのではないでしょうか?
でも本当はプロ棋士ともなると定石とおりとか考えて石を置くのではなく、碁盤の石を置くべきところが光って見えるとか聞きます。
いいですね、どこに置くか考えなくとも光が道筋を教えてくれるなら私にも棋聖とか名人になれそうです。
似たようなことですが、私が監査で帳票をめくっているとはしからはしまで指さし確認して見なくても、帳票をめくった瞬間におかしい所が光って見えますよ。・・・本当です。

監査員には千里眼とか呪術師でないとなれないのです。 

まあ、この言葉、囲碁に限らず私たちの日常の行動に反映する必要がありそうです。
「信号が青になったら渡るのよ」
 本当ですか?青になっても右左を良く見て渡らなくてはなりません。
「彼が言うなら大丈夫だ」
 ほんとう? 何事も自分で考えて決めないと後悔しますよ。

人間の行動をオートマチック、自動的にするのは非常に危険なことですよ。
良く考えて行動していればオレオレ詐欺には引っかからないかもしれません。
本当を言いまして、私もまだオレオレ詐欺の電話を受けた経験がないのであまり自信はありません。 

book.gif 勉強というのにはいろいろな方法、手段があるでしょう。
本を読むというのもそのひとつです。
でも本を読んで何事かをつかんだという経験がおありでしょうか?
私の経験ですが、昔塗装をしていて大先輩にパワー社の「塗料と塗装」を読めと言われて買い求めました。
私が買ったのは30年も前ですが、この本今でも売られています。値段は私が買ったときの4倍くらいになっています。
さて一生懸命読みましたが、なかなか頭に入りません。その後、何年も塗装に従事していてガスクロなんかで分析もしました。その後、気が向いてこの本を読み直しますとことごとく理解でき頭にスット入るんですね。
自分が知っていることのみ本を読んで理解できるとは、なんという矛盾でしょうか? 
相手を理解することは相手の中に自分を見つけることだという言葉もあります。まったく知らないことについて本を読んでもそこから学ぶことはできないのではないかと思います。
何事も自分の頭で考えることに価値があると思いますし、自分の頭で考えられないことはそもそも理解できないことなのでしょうか?


さて、本日の言葉を考えなくてはなりません。

人間は考える葦である。
考えない人の頭は、帽子掛けに過ぎない
  オソマツ



最後に再び梶原先生のお話に戻りましょう。
go.gif この御仁、名言を多々残している。そのひとつ、
「今日の蛤(ハマ)は重い」

きっと盤上の戦いが厳しかったのでしょうねえ、長考に次ぐ長考、扇子を開いたり閉じたり、昔ならタバコの吸殻が灰皿からあふれ・・・まあ、そんな雰囲気が伝わってきます。
このとき棋士梶原ではなく詩人梶原なのかもしれません。
もっとも、この言葉いやみかもしれませんよ。はまとはハマグリつまり白石のこと、
白石を持つのは強い人と決まっていますから、この短い言葉にも「わしはデフェンディングチャンピオンだ」という意味も込められているのです。
ところで梶原さんと碁を打った方は「今日の黒石は軽い」とでも言ったのだろうか 

その2 「碁はオワ」

もう形勢の決まった碁は終わりだということ、
私なんか10目以上差がついても未練がましく時間切れまで待つほうであります。
まあ、これは人好き好きということで・・・


「本日はこれにてオワ」



ひとりごとの目次に戻る