エコ製品 2005.08.16
ご注意!
私は公害や廃棄物に関する仕事をしておりますが、エコ製品やLCAについてはまったくの門外漢でございます。というわけで本日の駄文は <素人のいちゃもん> と思って読んでください。といっても私の本音ではございます。

世の中にエコ製品というのはたくさん出ております。最近はやりのグリーン購入とはエコ製品を買うことだそうであります。
「おれはかっこいいの買うんだ」とか「環境なんて関係ないわ」なんていうより、口先だけでも「環境に配慮した買い物をしてます」とか、「エコ製品を優先して選んでます」なんていいますとなんかちょっと今ふうで高尚と思っていらっしゃるのではないでしょうか?
といっても往年の女優が和服姿で何の仕事もしているようでなく液晶テレビを宣伝しているのを見ると「エコ生活たあそんなもんじゃねーだろう」と感じてしまいます。田舎の高齢の義母が日中野良仕事をして、夜エアコンもないところでブラウン管テレビを見て憩いをとっているのがエコ生活であることは間違いない。和服姿が現実離れしすぎで、私は反発を感じます。あれじゃ逆のメッセージを伝えているとしか思えん。
じゃあ、エコ製品とはなんだろうかといいますと、その定義といいましょうかエコ製品に該当する・しないはメーカーによってさまざまでありまして、エコ製品とはこれこれであると簡単には言えないようであります。
私は現在のエコ製品とはまだ真のエコ製品になりきっておらず、真のエコ製品にいたるまでの過程にあるのではないかと考えている。
そして真のエコ製品になっていない段階のものをエコ製品と称することはエゴ製品のえこひいきであり、真のエコロジーではないのではないかと感じているのである。
ボールペンなんて見ますと「リサイクル材を使用」なんて書いてあります。これを読んで、一回使ったボールペンを集めてきてそれを再び使っているとお考えのあなた・・・それは素直な考えではありますが、ぜえーったいそんなことではないのですよ。どんなものかはネットで調べるとすぐ分かります。
本日は「エコ製品を買ってます」とか「グリーンエネルギーを使ってます」という方への冷やかしでございます。

    真のエコ製品に至るまでには次のような段階があると思う。
  1. 第一世代
    エコという呼び名だけの、経済原則に基づかない製品と定義しよう。気分だけエコロジーといってもよい。
    具体例をあげる。
    fusha.gif 自然エネルギーを購入する制度がある。風力など自然にやさしく発電した電気を購入するのだから、原発で発電した電気よりkWhあたり単価が高いのはやむをえないという理屈である。これは自己満足以外何物でもないような気がする。もちろん風力発電や波力発電開発や拡大するための寄付金であると考えても良い。でもそういう考え方はすなわち第一世代、つまり経済原則に基づかないエコ製品である証拠だろう。
    熱帯雨林を使ってませんという家具もこの第一世代エコ製品のような気がする。それが自然環境にどのように関わってどのくらいの改善効果をあるのかがわからなければ、気分だけ環境保護というのではないだろうか?
    とうもろこしとかリサイクルプラスチックで作ったパソコンといっても、それがどれくらい環境負荷を減らすのかを聞かないと環境に良いのか悪いのかわかりません。バイオマスやリサイクルが効果がある場合とない場合があるだろう。
    とうもろこしからプラスチックをつくらないで、食べた方がまっとうなような気がする 
    捕鯨反対!という発想も似たようなものだろう。

  2. 第二世代
    使用段階だけとか、消費者が見える範囲だけにおいて、従来製品より 環境負荷 支出費用が少ないような製品を挙げたい。ライフサイクル全体のコストはマイナスとなってしまうものとしよう。
    smile.gif 太陽光発電というのが今おおはやりである。屋根に太陽光発電パネルをつけて家庭で使う電気をまかなうというあれである。
    私は何事もお金に換算して考える。太陽光発電システムの設置費用は、1軒につき200〜300万円だそうだ。我が家ではエアコンを使う季節で月の電気料金は7000円くらいである。エアコンを使わない季節は月4000円ちょっと
    我が家の場合、電気を最大に使う季節で計算しても投資金額を回収するのに24〜36年かかる計算になる。平均電気料金では33〜50年。太陽光パネルの寿命はメーカーのウェブサイトを見ると30年と書いてあった。これでは元を取る前に寿命が来てしまう。もっともそれ以前に家屋の寿命がきてしまいそうだ。
    あまった電気を電力会社に売るというが、はて?
    以前、私が田舎に住んでいたとき屋根に太陽熱でお風呂の湯を沸かす装置をつけた。確かに春から秋はお湯が出てガス代は少なくてすむが、冬場は凍結防止のために水を止めるので役に立たない。だから一年間のガス代の節約はたかだか2万円にもならない。あげくに10年経たずに水漏れがするようになってしまった。お金をかけて直す気にもならなかった。
    太陽光発電システムには、設置コストの負担を軽くするため、国からの様々な公的援助があるというのが宣伝文句であるが、それはとりもなおさずそういった援助がなければコストメリットがないということではないか。
    そしてその補助金は税金からでているのではないか?納税者としてはそのような税金のムダ使いをとがめなくてはいけないような気がする。

  3. 第三世代
    使用段階あるいはライフサイクル全体をトータルすると 環境保護に 支出費用が少なくなるが、初期費用が高いものとしよう。
    例として電球型蛍光灯をあげる。電球型蛍光灯が寿命が長く明るく従来タイプの白熱電球よりも省エネ・費用削減になる。しかし購入時の値段は白熱灯の方が安い。夜中に電球が切れて、近くのコンビニに電球を買いに行ってとりあえず従来タイプにしようという選択はまっとうであろう。
    このほか、電気店の店頭では省エネエアコンとか省電力冷蔵庫といったものが並んでいる。たしかに今後長く使うことを考えると、製品の値段は安いが電気をくう従来型のものより省エネタイプの方が費用対効果があるとは思えるが、購入時のお値段は高額であるのが多い。
    私は狭いマンションに住んでおり、昨年の夏の暑さはもうごめんと最近家内とエアコンを買いに行ったが省エネタイプは安物の倍以上、3倍近くもする。安いエアコンは3万で買えるのだ。私は安物を選びました。電気代で購入時の金額の差を回収するまで長生きできそうありませんから。
    狭いマンションという言葉自体が矛盾である 

    ハイブリッドカーは第二世代なのか第三世代なのか分からない。
    現時点、ハイブリッドカーはリッターあたり30キロくらい走るそうだ。同じガソリンでガソリンエンジン車の倍以上走ることになる。すごいことである。メーカーはLCAの指標を掲載しており、それはガソリン車をはるかに凌いでいるが私にはその信頼性は分からない。
    簡単に疑問の理由をあげれば値段だ。ハイブリッドカーと同程度のガソリン車とは新車購入金額は50万の違いがあるだろう。車の寿命が11年、走行距離が年1万キロとするとその間に消費するガソリンは
      ハイブリッド 10000×11÷30=3667リットル
      ガソリン車  10000×11÷13=8641リットル
      その差は4794リットル、ガソリン代で50万くらいである。
    日本の乗用車の平均使用年数は10.97年(2004年度)、平均走行距離10500km(1995年)である。
    これでは車代金と燃料代の合計は同じである。
    本当を言えば、いくら低金利時代といっても金利はゼロではない。2.5〜4.5%がふつうである。とりあえず金利は無視しよう
    バッテリーの寿命は種々説があるが車の寿命の間に1回必要というのは間違いないらしい。従来の車でもバッテリー交換は3年に一度くらいはするが値段が全然違う。もしほんとうにハイブリッドの環境負荷が少なくLCAで勝るならハイブリッド車のお値段はもっと安くていいはずである。LCAの評価と新車価格は関係ないという理屈があるとは思えない。
    ところで自動車リサイクル法ではバッテリーとタイヤの処理費用は別勘定である。ハイブリッド車のバッテリーの費用処理はどうなるのだろうか?

  4. 第四世代
    購入時、環境配慮製品が従来品より安く、環境配慮製品を購入することがその時点でコストメリットがあるもの。我々は環境のために余分なお金を支払う義務も義理もない。
    そんなこと無理な注文だよ、なんて語ってはいけない。経済原則に反した環境配慮とかエコ製品いうものが長続きするはずがない。
    もちろん今だって第四世代がないわけではない。
    事務用品のカタログで環境配慮タイプのパイプファイルが従来タイプより安い値段で載っていた。これこそ第四世代であると思った。


本日の結論

値段で選んで買ったらエコ製品だったというものでなければ長続きはしないですよ。




Tama様よりご指導を頂きました。(05.08.18)
エコロジーとエコノミー
はじめてお便りいたします。いつも楽しく拝見させていただいております。
8.16の「エコ製品」についてですが、少々思うところがあります。
佐為さまがあらかじめ門外漢であると明記なさっておりますので余計なおせっかいかとも思いましたが、一製造業者(といってもただのサラリーマン)としての意見です。
>LCAの評価と新車価格は関係ないという理屈があるとは思えない。
とのことですが、実は関係なかったりします。いや、関係あるようなLCAを組むことも出来るのですが、エコロジーを標榜する際に用いられるLCAは二酸化炭素の排出量が焦点になっており、「いかに化石燃料の消費をおさえるか」という、枯渇対策としての意味が強いのです(温暖化対策と考える人も多いですが、対温暖化に必要な数字が現状無いので象徴的な意味しか無いと考えます)。
重油を燃やす機械を使わずに人力だけで作ればLCAは低くなる・・・というわけでもなくヒトが活動するためにもエネルギーは消費されるのでバランスが難しいわけですが。再生可能であるが高価な材料を用いる等の理由で、LCAは低くなるが価格は跳ね上がる・・・ということは、実際頻繁に発生します。
#実のところ、環境に配慮しない方々の技術はエコノミーだけを追求したものが選ばれてますから、エコロジーをも考えた技術が価格で負けるのは当然といえば当然だったりします。

エコロジーというのは、あくまで「環境に」配慮するものです。個人のお財布に少々響こうとも、それが地球全体のためになるのならば(化石燃料の枯渇を遅らせて未来の子孫たちに楽をさせることが出来るならば)それ自体がひとつの「価値」である、という考え方でなければエコロジーとは言えません。

しかし、自由競争経済の資本主義な日本国のことですから、当然ながら「安価である」ということは高く評価されるべきです。エコノミーとエコロジーはそれぞれ独立であり、両立するとは限らないものですが、エコノミーでなければ商品は売れません。佐為さま曰くの第四世代でなければ普及する「エコ商品」になりえないという結論には大賛成です。

しかし、実際問題として科学技術にも限界というものがありまして(限界だらけですね^^)エコノミーでエコロジーな第四世代商品はなかなか出来ません。
世の中にはエコプレミアムなるページもありまして(→http://www.yasuienv.net/EcoPremium/index.html)、どうも第四世代はまだまだ遠いというのが現状ですね。
先に述べた理由でエコロジーをも考慮した技術が価格で勝てることはきわめてまれです。売れるようになれば量産のマスメリットで価格競争力も高まっていくものですが、最初に普及させるにはエコそのものを評価するような価値観の転換が必要でしょう。佐為さま曰くの第三世代を買うのがカッコイイという世の中になれば、その結果として第四世代も自然に増えていくことと思います。
#第二世代は実質第一世代と変わらないので、個人的には却下。
急ぎ普及させるなら、炭素税のようなものでエコそのものに価格的価値を持たせるしかないかもしれません。

tama様、じじいの繰言にお付き合いいただきありがとうございます。
読み返しまして、LCAと支出費用の混同に気付きました。
というわけで以下のとおり修正いたします。私の間違いをのこすために修正箇所は見え消しとしました。
私は本格的なLCAを論じるところまで至っておりません。
おっしゃるように『炭素税のようなものでエコそのものに価格的価値を持たせる』といいますか、国民にエコ製品を買わせるには国策としてそういった規制をすることしかないような気がします。
環境保護ではありませんが、過去より類似のものはあります。農作物に逆さやをつけたり、休耕田にお金を払うこと、旧設備の廃棄に補助金を払うようなことも誘導するためには必要な政策かもしれません。
ただ、私が具体例ですが、商品選択の第一順位にエコロジーをもってくるほど人間が成熟しておりません。
だまっていてもエコ製品を普及させるには、エコロジー製品がエコノミー製品になることしかないと思います。
安井先生のウェブサイトはときどき拝見しております。製品アセスメントの権威とは存じ上げておりますが、以前、廃棄物処理法について間違えたことを書かれてらっしゃいましたのでメールしたことがありましたがご返事はいただけませんでした。
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