統計でうそをつく方法2001.11.23
ダレル・ハフという人の「統計でうそをつく方法」という本があります。今でも本屋に並んでおりますが、私が中学生のころ見た記憶がありますからかれこれ40年くらい売られているわけです。聖書には程遠くてもカーネギーの「人を動かす」の次くらい長寿命といえますか??
統計とはご存知のようにたくさんのデータを集計し、目的とする指標を得ることです。この生データの収集方法、処理方法に偏向をかければ自分の期待する結論を導き出せるという危険性があります。
統計処理は学問として確立していますし、詳細手法はJIS(日本工業規格)として定められています。正しく取られたサンプルから正しい結論が導き出されるはずですが世の中に発表される統計は怪しいものも多いようです。
統計を操作する方法はいくとおりもあります。主なものをあげますと、
- アンケートの設計を工夫する
アンケート調査はyes or noのことが多い。設問を作る時、自分の期待する回答を得るように作ることは可能です。○○を支持するか、否かという調査をする時、否定的回答がほしいなら、「○○しないほうがいいですか?」と聞けば賛成という選択肢はいりません。
最高裁判事の信任投票において一番不信任が多いのはトップに書かれた判事だそうです。人間は面倒がりやだからどうでもいいと思うときはじめのほうにマルを付けがちです。
設問の順序によってあとの質問の回答を偏向させることは良く知られています。
アンケート調査を見るときは結果だけじゃなく、質問とそのつながりをチェックしましょう。もっとも質問が明示されてないことが多いんだよね(^^)
- サンプルを偏ってとること。
統計は通常非常に多くの母集団から抜き取りでサンプルを取って調査します。ですからサンプルの取り方でいくらでも期待する結論を出せます。
デモをしている人に聞き取り調査をすれば当然一般大衆と違った偏った意見を得ることができます。そこまで極端な手を使わなくとも新聞社が自社の購読者を対象に調査すればかなり偏った回答を得ることができます。なぜなら日本の新聞はそれぞれ左右の色がついていて購読者はそれを支持している人が多いからです。
- 気に入らないサンプルを無視すること
国勢調査とは異なり、一般報道機関のアンケート調査の厳格性、信頼性はあてになりません。例えば各新聞社の読者欄の掲載基準はその新聞社の意見に沿ったものが多いことは一目瞭然です。アンケートの情報処理のさいに高い倫理基準、客観性が保たれているかは外部から確認できません。
政府や自治体の行う国勢調査をはじめとする各種調査は法律によって目的とする以外の利用を禁じられている他、秘密保持、客観性の確保などが定められています。ご安心ください。
もうひとつ注目すべきことは政府広報の統計はでた結果からいかなる施策をすべきかというつながりになりますが、新聞社をはじめとする報道機関の統計はでた結果から国民の行動を促すことが多い。つまり、報道機関の恣意によって世論を操作することになるのです。
- 数値の解釈
JIS規格や官報では「かなり」「やや」など程度を示す形容詞について○%〜○%と規定があります。けっして気分次第で使い分けているのでないんですよ!
しかし、新聞社の場合同じ数値でも取り方がさまざまであり、全く違う結論を出していることもあります。
「首相が靖国参拝に国民の70%が賛成」と言えば「おっ、かなり支持してんな」と受け取るでしょうし、「首相が靖国参拝に国民の30%が反対」といえば「反対もそうとういるんだ」と受け取るでしょう。
そういえば、アフガンの報道で元ネタは同じであるのに新聞社によってまったく異なる見解をしたところがありますね。間違えたほうは反省したのかな?
- 奥の手
やはり首相の靖国参拝の時でしたが、某新聞社のホームページに「首相の靖国参拝是か非か」という投票所がありました。そして常時そのときの賛否の割合が表示されていました。終戦記念日が近づいて賛成が70%を越していましたが、突然関連情報が一切削除されてしまいました。
気に入らないデータは消すに限るという、これ奥の手
そういえば、掲示板でも反対意見が多々書き込まれると「荒らし」と称して掲示板を閉鎖しちゃうのが常套手段みたいですね。徹底討論して反対派を撃破する力がない、いえいえ元々論理的に筋がとおってないんじゃしょうがありませんね〜
- 計算方法をいじる
次元が異なるものを同じものとして比較したりすること。3年前の調査時はAについて調査したが、今回はA'だからまあいいかなんてのたくさん見かけますよ。桃が好きかと聞いたのと、すももが好きかと聞いたのを合算してもしょうがない。
- 完全に統計手法無視
3人に赤信号の時渡りますか?と聞いて、一人が「たまに渡るよ」といったとしましょう。「33%の人が信号無視!」と言ったらどう思います。通常サンプル数により表示する桁数が定められています。もっとも3人じゃ統計以前ですけど。現実には新聞などで調査数が数十とかのものがあります。こんな時は少数つきのパーセントで言ったら詐欺同然!
信用させようとしてかえって不信感を買うと言う事例です。
なお、抜き取り検査では母数が非常に大きくても約1000個のサンプルがあれば十分と言えます。日本人一億人の意見を調べるのに正しく1000人を選んで聞き取りをすれば十分なのです。ほんとかよ〜と言うかもしれませんが、これは本当です。
みなさん、新聞、テレビで各種統計やアンケート調査結果を聞いたときは十分注意してくださいね。
冒頭にあげた「統計でうそをつく方法」安くてためになります。ぜひご一読を!!
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