法律の調べ方 2006.11.23

法律が制定されたり、改正になると大変だ。かって有事法制なんて大騒ぎであった。有事に備える法律ができると戦争が始まると主張する人々、政党、団体がいてそりゃチンドン屋が練り歩くような状況であった。
チンドン屋と聞いてわかる人は50才以上である。
有事法制ができて戦争が起きたかどうか、それは語るまでもない。
それはともかく、「有事法制 反対!」 「有事法制 賛成!」と叫んだ人の何割、いえ何パーセントが有事法制案をお読みになったのであろうか?
まず1割はいないだろう。せいぜいが1パーセントあるいはコンマ何パーセントかもしれない。
政党や団体が作ったチラシやビラを読んだのはカウントしない。そんなものは意味がない。

私は環境屋として生活の糧をえている。環境屋といってもさまざまであるが、私はもっぱら企業が環境法規制、特に公害や廃棄物規制を守るようにするのがお仕事である。環境監査といっても多種あるのだが、私は遵法監査といって法規制を守っているかいないかを見ることが主である。
私から見ると、ISO14001の審査など・・・止めておこう
ということで環境に関する法律が改正されるとなると、案の段階からチェックし、事前に準備をしておくのが仕事である。私にとって法律案を読み、解読し、対策を練るのは日常である。

仕事に関係しない法律についても、関心がある、あるいは話題を呼んでいる法律案については斜め読み程度はしている。
本日は法律案、あるいは法律改正案はどこをみたらわかるのか、どのような改正なのかを調べる方法を示す。拳拳服膺(けんけんふくよう)するように 

今ほとんどの情報はインターネットで手に入る。
政府も情報公開をモットーとしているし、それが最終的なコスト(あらゆる意味の)低減につながると認識しているのだろう。電子政府と称しているウェブサイトがある。
http://www.e-gov.go.jp/
まずここにアクセスする。するとたくさんのリンクが並んでいる。

既に成立している法律は左側の「法令検索」というところをクリックして、知りたい法律を見ればよい。
注意として、日常ほとんどの法律は略称で呼ばれている。我々が廃棄物処理法と呼んでいるものは、正しい名称は廃棄物の処理及び清掃に関する法律であって、正式名称がわからないとたどり着かない。もっとも略称検索というのもついている。しかし略称も正式なものが決まっていて、それ以外の自己流の呼び方ではだめだ。まあ、これは正しい名称と制式略称を覚えるようにするしかない。
私の田舎では、自分の意思を持たないことを「俺の行くどこどこだんべえ」とばかにしたものだが、目的地を知らずには何もできないしどこにもたどり着かない。

国会提出中の法案は右側のほうに、「国会提出法案」というのがある。これをクリックする。
すると所管する各省庁が並んでいる。そして各省庁ごとに提出している法律へのリンクボタンがある。
ちょっとここで工夫というか知識がいる。あなたが調べたい法律がどの省庁の所管かを知らないとたどり着けない。例えば、教育基本法の改正案を調べたいとき、所管省庁がどこかわからないと困る。まあたぶん文部科学省だろうと検討はつくだろうが、場合によっては想像もつかないことがある。厚生労働省か? 環境省か? 経済産業省か? なんて悩むこともある。
困った? なんて困らないでください。  
woman7.gif 法律の基締めってのがあるんです。それは内閣法制局です。電子政府のトップに各府省・独立行政法人等(府省別)というリンクがありますから、ここをクリックし、たくさん並んでいる各省庁のなかから内閣法制局を選びます。すると内閣法制局の中に今国会(第○○回)での内閣提出法律案というのがあります。ここをクリックしますと制定・改正したい法律がズラット並んでおり、それぞれの所管省庁が併記されています。もっともここまで来てしまえば所管省庁がどこか気にすることもありません。このようにたどれば所管省庁を知らなくても良いのですが、前に述べた方がクリックする回数が少なく手っ取り早いのは確かです。

ではそこにはどのような表示がされているのでしょうか?
☆☆○○法案
☆☆☆・概要
☆☆☆・要綱
☆☆☆・法律案
☆☆☆・理由
☆☆☆・新旧対照表
☆☆☆・参照条文
と並んでいるのが普通です。中身を見ますと、 まあ、どんな法律の制定・改正に賛成するのもよし、反対するのもよし・・・なのですが、最低このくらいは読んでから発言しないと恥をかくことになります。
教育基本法改正反対声明文を首相官邸にFAX送信した中学生がいたそうですが、その子は法案をどのくらい読んだのでしょうか? 間違ってもビラ一枚を読んで、「賛成だあ〜」とか「反対だあ〜」なんて語ってはいけません。
その子を教えている先生は法律の調べ方くらいは教えたのでしょうね?
もちろん子供でなくて、大人でも同じことです。

では教育基本法を例に取り、対照表ではどんなふうに表現されているのか見て見ましょう。

現行 昭和22年3月31日

改正案 平成18年4月28日提案

前文

われらは、さきに、日本国憲法 を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。

前文

我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。

 われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。

 我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。

 ここに、日本国憲法 の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する。

 ここに、我々は、日本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する。

第一条(教育の目的)

教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

第一条(教育の目的)

教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

第二条(教育の方針)

教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。

第二条(教育の目標)

教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。

 

一  幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。

 

二  個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。

 

三  正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。

四  生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。

五  伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと

 

第三条(生涯学習の理念)

国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。

3条(教育の機会均等)

すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであつて、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によつて、教育上差別されない。

4条(教育の機会均等)

すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。

 

2  国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。

2 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によつて修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。

3  国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。

第四条 (義務教育)

国民は、その保護する子女に、九年の普通教育を受けさせる義務を負う。

第五条(義務教育)

国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。

2 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は、これを徴収しない。

2  義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。

 

3  国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。

 

4  国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。

第五条 (男女共学)

男女は、互に敬重し、協力し合わなければならないものであつて、教育上男女の共学は、認められなければならない。

 

第六条 (学校教育)

法律に定める学校は、公の性質をもつものであつて、国又は地方公共団体の外、法律に定める法人のみが、これを設置することができる。

第六条(学校教育)

法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。

 

2 前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。

2 法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であつて、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。

このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。


9条として新らたに条を設けた

 

第七条(大学)

大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。

 

2  大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。

 

第八条(私立学校)

私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。

現行 第6条2項

2 法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であつて、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。

第九条(教員)法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。

このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。

2  前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。

 

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第十条(家庭教育)

父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。

 

2  国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

 

第十一条(幼児期の教育)

幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。

第七条 (社会教育)

家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によつて奨励されなければならない。

第十二条(社会教育)

個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。

2 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館等の施設の設置、学校の施設の利用その他適当な方法によつて教育の目的の実現に努めなければならない。

2  国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。

 

第十三条(学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力)

 学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。

第八条 (政治教育)

良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。

第十四条(政治教育)

良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。

2 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない

2  法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。

第九条 (宗教教育)

宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。

第十五条(宗教教育)

宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。

2 国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。

2  国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。

第十条 (教育行政)

教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。

第十六条(教育行政)

教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。

2 教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。

2  国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。

3  地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない。

4  国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。

 

第十七条(教育振興基本計画)

政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。

 

2  地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。


さて、この新旧を見比べて、いったいどこが変わったのか? 今後、新たに何をしなければならないのか?を考えるのです。
man7.gif
ところで、教育基本法ってほとんど何も変わらないように感じるのは私だけでしょうか?
これなら何も対策が必要ではないような気が・・・




大国主命様からお便りを頂きました(06.11.27)
どうも、管理人さん。大国主命です。
最近めっきり寒くなり、野ざらしのサツマイモがなんか変わった味になってきました。
というより、3ヶ月近く野ざらしでは当然といえば当然ですが。
さて、はじめに、突っ込みたいことがあります。
チンドン屋ですが、私の住む富山では、毎年4月になるとチンドン祭りなるものがあります。ですから、富山でチンドン屋を知らない人間は、よそ者扱いになります。

それは、さておき、本題の教育基本法です。今回の改正案は、表向き自民党の改正案になっていますが、とんでもない大間違いです!
幣ブログで2回にわたって取り上げましたが、防衛省昇格と引き換えに、公明党案だったりします。
さらに、代わり映えしないといわれましたが、これもとんでもない大間違いです。
全部読んでいただければわかると思いますが、
 @男女共同参画(ジェンダーフリー)条項、
 A近隣諸国条項、
 B障害者+マイノリティー保護条項、
 C生涯教育(ゆとり教育)条項
が含まれています!しかも、Aは「愛国心の暴走の歯止めになる」と朝日が褒め称えた条項です!
まだ、民主党の改正案のほうが、少しだけマシだったりします。ですので、今回の改正については、大反対です。自民党らしい改正案に変えて、仕切りなおししてほしいものです。
というより、3年ごとに改正したほうがフレキシブルな法運用ができて良い筈、と思ったりします。

大国主命様、ご無沙汰しております。
おっしゃることはそのとおりと思います。
私の文末に「教育基本法ってほとんど何も変わらないように感じるのは私だけでしょうか?」と書いております。
私自身、法改正の必要性というか改正ポイントがイマイチと思います。
わが師KABU先生も法律というのは一般方向を示すもので、改正があってもなくても教育の正常化はできると語っています。
しかし、思うのですが、教育基本法を改正すると言うことは「変えるのだ」という意思表示であろうと
何も変えずに、まっとうな教育をしろといっても頭がおかしい人は状況を理解できないでしょう。
法律が変わったのだよ、読んでご覧、新しい法律に従って教育しろと言えばすこしは考えるのではないかと・・
まあ、その程度のことでしょう。

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