コミュニケーションとはなんだろうか?
夫婦の意思疎通も、家族がお互いに理解しあうことも、近隣住民が地域の活動に協力するのも、ペットのチワワや金魚との交流もコミュニケーションのひとつであると思う。
私がたぬきやもぐらと交流するのもコミュニケーションである。
しかしISO規格ではそのような漠然としたこととか、あるいは際限のないことを求めるはずがない。明確に定義され限界を定めた範囲について実施することを要求している。
この範囲を超えたところは無関係であるが、要求している範囲を満たさないと当然不適合となる。
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92年頃、まだISO審査というのが珍しかった頃の話。私が審査員を受け入れ検査のところに案内して少しでも時間稼ぎをしようかと(それは事務局の義務でもある)対象製品以外の検査手順について説明しようとした瞬間、「それは対象外ですから不要です」と言われてしまった。いや、敵もさる者だと感心した覚えがある。
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規格でコミュニケーションの項目での要求はふたつある。
(1)内部コミュニケーションを滞りなくせよということがひとつ。
(2)外部コミュニケーションは対応するだけでなく記録を残せというのがふたつめである。
但し、外部コミュニケーションとして実施する範囲、内容をまず決めておきなさいと限定されている。そして実施すると決めた範囲については手順を文書化しておきなさい。
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文書化せよという文言はないが、実際上は必須である。
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ISOに関するインターネットや種々の本に載っている外部コミュニケーションの事例には、町内会の盆踊りへの参加、地方祭への協力、グラウンドやテニスコートを近隣住民に開放することなどを取り上げている事例を多々見かける。
そういったことは企業市民としての義務とまではいえないが、まあ評判を良くするというか少なくても恨らまれることを予防する効果はあるだろう。
しかし、それらがISOで求めているコミュニケーションなのか? といえば、そうではないというのが本日の話題である。
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私はこのウェブサイトが稚拙であることを十分認識しているので、「論点」などとかっこいい言葉を使わず「話題」程度にしておこう
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ISO規格でいうところのコミュニケーションとは何か? などと考えることはない。
ISO規格は文字に書いてあることがすべてであり、コミュニケーションについても規格文言の中に既にその答えが書いてある。
規格の文章を見るとコミュニケーションといっても一般論ではなく、その頭に形容詞句があります。
それは「環境側面及び環境マネジメントシステムに関して」です。
- 組織の環境側面とは例えば、
- ボイラーという環境側面を有しているならば
- 法に基づく設備の設置申請や変更の届出
- 公害防止管理者、統括者の届出、変更
- 測定値の報告、最悪の場合、事故の報告など
- 環境製品を環境側面に取り上げているなら
- 新製品の広報
- 他社品の情報収集
- 顧客、潜在顧客との情報交換、説明会
- 廃棄物が環境側面となっていれば
- 廃棄物業者との情報交換
- 自治体から事業者への説明会、削減要請のお手紙とそれへの回答などいろいろあるだろう
- マネジメントシステムに関することとしては、上位組織(本社・業界団体)からの指示、上位組織への報告や、地域自治体の首長との意見交換などは経営者にとってある意味責務でしょう。
盆踊りを外部コミュニケーションにとり上げるなら、盆踊りに関係する著しい環境側面がなくてはならない。
まあ、こじつければ何とでも言えるでしょうけれど・・・
私の知っている工場では毎年盆踊りを開催し、従業員だけでなく取引先や近隣住民を呼んで、ビールをふるまったりくじ引きで賞品を出したりしてました。すると少し離れたところの招待されない住民から、タイコやカラオケの音がうるさいという苦情がありました。その結果、翌年から招待券を配る範囲を広げたと聞きました。
こうなると盆踊りはコミュニケーションではなく著しい環境側面となってしまいます。盆踊りが著しい環境側面であれば、盆踊りに招待することが著しい環境側面に関わるコミュニケーションになるのでしょうか?
これでは笑い話になってしまいます。
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お断り、
私は盆踊りをしてはいけないなんていうつもりはさらさらなく、盆踊りを外部コミュニケーションの事例として取り上げていけないと言うつもりもない。ただ、それだけ取りあげて本当に著しい環境側面を忘れては困るとは言いたい。
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閑話休題
前に述べたインターネットや本で揚げている例は、企業市民の義務あるいは社会貢献的なことのような感じです。
また調達先の評価で有意な会社に対し、環境負荷低減の協力要請するような事例は、4.4.6の運用管理の最後の節の供給者への要求に該当するように思います。
同時にISO規格は要求事項
(求めていること)をいろいろな切り口で書いているので、ひとつのことがいくつかの項目に関わることもあると考えたほうが良いです。たとえば4.3.2の法規制にあることがコミュニケーションにも該当することもあります。
われわれは、ISO規格のためになにかをしなくてはならないとネガティブに考えるのではなく、今までしっかり環境管理をしていたはずだ、だからISO規格が要求していることなどすべてしているに違いない。
今までしていたことから、要求事項に該当することを拾い出せばよいと積極的に考えましょう。
ということをまとめると、外部コミュニケーションとしては、過去より必要に迫られ、あるいは法律上の義務としていることがたくさんあるはずです。
新たにしなければならないと思ってよいでしょう。
なお、『外部コミュニケーションとは環境パフォーマンスを広報することが本来の意味であった』と説明しているウェブサイトがあります。具体的には環境パフォーマンスの公表や環境報告書の発行などを意味するというのです。
この説の真偽について私は直接ISOTC委員にお伺いしたところ、完全な間違いであるとのご回答をいただきました。
ISOTC委員のご意見を承るまでもなく、ISOは文字解釈
(文理解釈)の世界ですから、事実か否かに関わらず、規格制定の経過を持ち出すのは筋違いであることは間違いありません。
それに常識的に考えて、近隣住民はリスクコミュニケーションの方が環境レポートより必要と思うでしょうね。
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リスクコミュニケーションとは
私たちは、安全にかつ安心して生活するため、私たちが住んでいる地域の様々なリスクを知る権利を持っています。
リスクとは、私たちの健康や暮らしに影響を与えることがら(地震や風水害などの自然災害、交通事故や産業事故などの人為的な災害、様々な疾病など )の危険性(危害の程度×発生確率)のことを言います。
リスクコミュニケーションとは、地域コミュニティを構成する関係者(市民・行政・企業など)がコミュニケーション(対話)を通じて、リスクに関する情報を信頼関係の中で共有し、リスクを低減していく試みのことです。
環境省ホームページより
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なんか本日はダジャレもなく格調高いものになってしまいました。
次回はダジャレ、オヤジギャグに努めたいと・・・
本日のコミュニケーション
ISO規格は書いてある文言のみである
雑音に耳を貸すな!
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