4.5.1 監視測定 2007.01.21
本日の講座は 4.5.1監視及び測定です。
組織は、著しい環境影響を与える可能性のある運用のかぎ(鍵)となる特性を定常的に監視及び測定するための手順を確立し、実施し、維持すること。
この手順には、パフォーマンス、適用可能な運用管理、並びに組織の環境目的及び目標との適合を監視するための情報の文書化を含めること。
組織は校正された又は検証された監視及び測定機器が使用され、維持されていることを確実にし、また、これに伴う記録を保持すること。

規格の文言の分量はあまり多くないが、その意味を正しく理解している人が少ないのではないかと危惧している。
woman7.gif まず言葉の定義である。前にも述べたように、監視とはモニタリングの訳であって定期的あるいは継続的にウオッチするということに過ぎず、悪いことをしないように見ているという意味はない。
測定はメジャメントの訳で正否あるいは合否を判定できればよく必ずしも数値でなくてもよい。
いずれにしてもこの規格項番で要求しているのは是正を含まず、チェックに限定される。是正するのは次項の4.5.3の役割である。

監視する対象は何か?
多くの人は環境実施計画と答えるだろう。もちろん、環境目的・環境目標を達成したかというのもある。それは間違いではないが、監視対象の ほん の一部に過ぎない。
ここで言っている監視対象はそればかりではない。規格に記述している、「著しい環境影響を与える可能性のある運用の鍵」となる特性はたくさんある。
それじゃあ、一体何があるのか?と悩むことはない。
規格の4.1から4.4に記されていることすべてが約束(手順)とおり運用されているかどうかを見ることである。
省エネが目標達成したかを確認することと、文書管理が規則とおり運用されているかということは同等に重要なのである。 逆に考えれば業務すべては監視(言い方が悪ければ管理)されなくてはならないことは明白である。
あるテーマが目的目標からはずれ維持管理項目となったとしても、監視測定が必要であることは当然だ。
例えば、Rohs規制に対応するために開発を含めて活動することははじめは目的目標になるだろうが、いったん技術開発と運用の仕組みができた後は誤って混入しないことを管理することになる。そのとき混入しないためのシステムが運用されていることを確認することは必要でしょう。それが監視及び測定であると考えていただきたい。
個々の製品において混入しているか否かはシステムのパフォーマンスではなく、製品あるいはサービスのパフォーマンスであるが、会社の中では管理上区別することもないだろう。

監視測定を「内部監査で点検します」という回答が予想される。
もちろんそういう方法もある。しかし、運用のすべてを内部監査で見ることは事実上不可能であるし、内部監査の本来の目的は内部牽制であって、日常管理ではない。
「内部監査で点検します」と回答を受けたところでは、内部監査で十分な監視測定をしているか拝見しております。 
woman.gif 「そんなにたくさんの項目を監視測定なんてできません」なんておっしゃてはいけません。
管理者とは管理するために任じられるわけであって、管理者が日常業務として行うことが監視測定であり、それに続く処置であり是正であるわけです。
それがマネジメントでありマネジャーです。

私がいつも、ISOとは元から会社でしていることを外部に説明することと言っている。
それは間違いではないが、従来からの業務がすべて正しいとか、それだけで規格に適合するという意味ではない。
規則で決まっていることを従来からの日常業務で管理監督していないものがあれば、ISO認証を機に管理を追加しなければならない。
どの会社でも不足している監視及び測定項目はある。例えば使い込みに上司が気づかなかったというのもあるし、公害測定記録を改竄していたというのも監視測定が機能していなかったといわれても反論できないだろう。
要するに環境に限らず監視測定というのは会社の管理上重要で基本的な機能なのである。
「監視測定を内部監査でします」というなら管理者はいったい何をするんだ?

おっと、書面上の監視に囚われてしまいました。
工場では監視すべきことは、種々排水や排気ガス、騒音、振動、pHなどの測定もあります。
また、監視とは人によるものだけでなく、自動的な監視、連続測定などもあります。
もし機器を使う場合、測定値に見合った精度が必要です。そのためには精度が大丈夫か確認しなければなりません。校正するには国家標準や標準液など確立した方法でしなければなりません。機器の精度の確認記録は保存しておかなくてはなりません。

現場といってもpHのように誰が見ても環境に関わるものだけではなく、
 ・物の積み方は水平・直角・平行とか、
 ・危険物倉庫のそばには駐車しない、
 ・防液堤の排水口は排水時以外は常時閉にする、
 ・特定化学物質使用場所には許可された者以外入場しない、
 ・毒物庫の施錠は遵守されているか
  ・・・・などなど、
こりゃたくさんあるのです。


本日の問いかけ

誰ですか?
監視対象は環境実施計画だけと答えた方は?

man2.gif


かたこり様からお便りを頂きました(2013.03.04)
4.5.1 監視及び測定について
監視測定項目一覧表などというリストに鍵となる特性をリストアップしているのをネット等で見かけます。
個人的に監視測定は、「法規制違反や事故防止など様々な目的」、「担当、その上司、事業所長といった各階層」において、適当な方法で実施されており、鍵となる特性は「これです」と自社判断する必要はなく、審査員が判断する事だと思っています。

「鍵となる特性」は自社で判断して特定しておくモノなんでしょうか、審査員が判断するモノなのでしょうか。

また、業務があれば、監視測定は当たり前だと思います。「当社は鍵となる特性を監視測定する」ことを環境マニュアルに記述しているのをネットで拝見したりします。これにはどんな意味があるのでしょうか。記述していないとダメなものなのでしょうか。

かたこり様、毎度ありがとうございます。
おっしゃる通り、ネットで検索すると監視測定項目一覧表というものがたくさん見つかります。そこには公害防止のための測定項目や環境実施計画の紙ごみ電気の使用量など多様なものが掲載されていました。
正直言いまして私が正しくこの監視及び測定を理解しているかどうか自信がありません。といいますのはネットでISOコンサルなどが語っているのを見ますと、私の考えとまったく異なるものが多いからです。そんなものがたくさんありますので、私が正しいのだと言い切るほど自信過剰ではありません。
ともかく私の考えを申し上げます。
私は環境側面というものも一つの概念であって、著しい環境側面とはこれこれですとリストアップしておくようなものではないと考えています。以前勤めていた会社では、会社の環境改善計画を策定したとき考慮した事項を著しい環境側面としていました。ISO規格とは逆ですね。そしてそれはISO審査の際にそのように説明しただけで、社内では著しい環境側面などとは呼び習わしていませんでした。
なお著しい環境側面を決めるのに、点数つけなどはしていません。我々が議論した結果、これを著しい環境側面にしたという論理で、そのように説明していました。審査員から異議はありませんでした。もっとも私は異議を認めませんが。
なんで著しい環境側面がでてくるのかといいますと、規格では「著しい環境影響を与える可能性のある運用の鍵となる特性を定常的に監視及び測定する(4.5.1)」とありますので、まず著しい環境側面とは何かをはっきりさせておかなくては次に進めません。
ですから著しい環境側面はたくさんあり、それらの監視しなければならない特性など星の数ほどあるわけです。排水のデータにしても法律で定められた測定項目もありますが、運用上は例えばCODでしたら代用特性として紫外線吸光光度で行うこともあり、PHなら法で定める定期的なもの以外に常時監視もあり、どこまでがISOでいう監視測定項目なのかとなれば、私はわかりません。
しかし企業として法を守り事故を起こさないために、さまざまな方法で異常が起きる前に見つけて対策ができるよう余裕をもって傾向をみているわけです。というと我々がしている監視測定項目は一覧表にできるような少数ではなくものすごい数になります。それを一覧表にして何か意味があるかと思えば何も意味はなさそうです。
ということで、著しい環境側面の項目についてどんな監視をしているのかという質問には、著しい環境側面ごとの管理手順書(もちろん手順書という名称ではありませんが)に定められている測定項目や監視項目を示して、このようにしていますと説明していました。
確か、一度審査員に「一覧表にした方がわかりやすい」と言われたことがありましたが、「我々はそんなものいらない」と回答した記憶があります。
そのへんのニュアンスが、かたこり様のおっしゃる「自社で判断して特定しておくモノなんでしょうか、審査員が判断するモノなのでしょうか」に対応するかわかりません。
「この側面については何を見ているのか?」という質問に対しては「この手順書(範疇語です)ではこれとこれを定めてます」くらいは受査側がいわないと審査員も困り果てるでしょう。
それから環境マニュアルについては、そもそも環境マニュアルというものはISO規格にありません。なぜ我々が作成しているかと言えば、審査契約あるいは審査登録ガイドといったもので環境マニュアルを作成することが要求されているからです。そして認証機関によって環境マニュアルに何をどこまで書けと要求しているかは異なります。ですから認証機関の要求に合わせてマニュアルを書くことになります。
ISO規格の「shall」はすべて書けとあれば、「当社は鍵となる特性を監視測定する」と書くことになると思います。
ただ多くの会社ではそのように書いているのを知っていますが、それも全く意味がないと思います。それは規格の単なるオウムがえしですから。本来なら「当社は鍵となる特性を監視測定する手順を○○に定める」としなければ意味がないと思います。ISO14001ではありませんが、ISO9001では品質マニュアルでは「文書化された手順又はそれらを参照できる情報(4.2.2b))」とありますからそれに倣えばですが。もちろん○○は固有名詞ではなく一般語あるいは範疇語でもよいわけです。
ということでかたこり様のご質問の回答になったかどうか自信がありませんが、


かたこり様からお便りを頂きました(2013.03.05)
返信ありがとうございます。
途中、文章が切れてますが、何となく理解しました。
審査という行為がなければ、考えもつかない疑問なのかもしれませんね。

審査行為がなければ、監視測定項目をリスト化する発想も、わざわざ環境マニュアルを作成して、監視測定することをルール化することで悩むこともないでしょう。
ただ、必要なことを適切に管理する。問題があれば直す。
それだけですよね。

規格はただ当たり前の事を明記しているだけだと思っていますが、やはり、審査が絡むと当たり前のことが当たり前ではなくなる。
審査制度が認められない原因のような気がします。

くだらない審査なんかやめてしまえば一番良いのですが、それは数年後に審査制度が自滅すると思ってますので、それは時間が解決するとして、とりあえず、排水の日常監視、排水・騒音・振動の定期測定、目標の進捗監視をマニュアルに記述して、後は審査のなりゆき任せで対応しようと、決断しました。

ありがとうございました。

かたこり

かたこり様、毎度ありがとうございます。
おっしゃることすべてに同意です。
ただ、認証機関によっては規格から適合を調べるのではなく、会社の実態をみて適合を判断するところもあります。本来はそうでなければならないのですが、ほとんどの認証機関は規格から始まります。実力がないのか、審査とはそういうものだと考えているのか、どうなのでしょうか?
数年後かどうかは定かではありませんが、たぶん現在のような認証制度は制度疲労で消滅するでしょうね。
そうなることを期待します。


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