4.5.2 順守評価 2007.01.27
4.5.2 順守評価です。
4.5.2 順守評価
4.5.2.1 順守に対するコミットメントと整合して、組織は、適用可能な法的要求事項の順守を定期的に評価するための手順を確立し、実施し、維持すること。
組織は、定期的な評価の結果の記録を残すこと。
4.5.2.2 組織は、自らが同意するその他の要求事項の順守を評価すること。組織は、この評価を4.5.2.1にある法的要求事項の遵守評価に組み込んでもよいし、別の手段を確立しても良い。
組織は、定期的な評価の結果の記録を残すこと。

ISO規格が96年版から04年版になったとき、改定された箇所はいくつもありますが、一番大きなものはこの4.5.2項でしょう。
なにしろ、96年版では4.5.1が監視及び測定でその次の4.5.2は不適合並びに是正及び予防処置で、順守評価という項目がなかったのです。
わざわざ1項目を設けたというのは、日本だけでなく世界的にISO認証しても法違反がそうとうあったのだろうと想像します。
もちろん規格改定前にも4.5.1の最後の行に「組織は関連する環境法規制の順守を定期的に評価するための文書化した手順を確立し維持しなければならない」という文句はありました。
でもわざわざ1項目を設けたのはそれだけ重要視したことに間違いありません。

といいますのは、
ISO審査で不適合には「重大」と「軽微」があります。重大な不適合が1件あると、即審査中止になります。(建前上はそういうことになっている)
重大な不適合とは何か?といいますと、項番がひとつまるまる欠落していることです。
つまり、96年版規格では環境法規制の順守を点検する社内規則がまったくなかったとしても、項番全部がないわけではなく、4.5.1監視及び測定の4つの要求事項の内、ひとつの要求事項の欠落ですから「軽微」と判断されたわけです。
軽微な不適合であれば、最終日に「是正が完了しないと免状が出せませんよ」とは言われますが審査は滞りなく終わり、あとで鉛筆をなめて是正報告を出せばよかったわけです。
もし重大不適合がありますと、即座に主任審査員が本社に電話して「審査を打ち切っていいか」と認証部長に問い合わせることになります。まあ相手も商売ですからすぐ帰るとは言わないでしょうが、ガイド66に従えばすぐ審査を終えて帰ることになります。
もちろん皆さんから突込みがあるでしょう。 
だって、書面審査が終わらないと現地審査に来ないのだから、現地審査に来るということはマニュアルが適合と認められているわけではないか?と
そのとおりです。
ですからもし1項目欠落していれば書面審査でだめになり、現地審査に進めないということになるでしょう。
とはいえ審査機関も商売ですから、マニュアルがどうあれ現地に来ますし、現地の審査でマニュアルについて議論するのは常のこと
まあ、いずれにしても順守評価が分家して1項目になったということは相当重要になったとご理解ください。

では、この項目で何を要求しているのかという本題に入ります。
よく勘違いされている方がいます。
この要求とは法規制を守ることと考えている人が多いです。
ここで要求しているのは、「順守すること」ではなく「順守していることを点検すること」です。
たとえば大気汚染防止法で大気測定義務があるとしたとき、大気を測定し法規制以下であることを確認することではありません。
それは4.4.6の運用管理です。
4.5.2の要求は「大気を測定し法規制以下であることを確認」しているかどうかを確認することです。
なんといいましょうか、ダブルチェックするようなものと言えるでしょうか?

具体的にはどういったことを当てはめるのかといいますと、ISOTC委員が書かれた本に事例があげてあります。
1案として、担当者が行っている仕事がちゃんとしているか管理者が定期的あるいは常時点検することもあるでしょう。
大気汚染の例で言えば、測定結果報告に管理者あるいは環境管理責任者がはんこを押すことが順守評価だと言い切ることも可能です。しかし、その理屈ですと決裁者が数値や測定方法が法規制を満足していることを確認していないとだめということになります。ほとんどメクラ判でしょうからこれはちょっとつらいところです。もちろん内容を確認しているからはんこを押しているんだというでしょうけれど
もし見逃しがあったらどう言い逃れしましょうか? 

2案として、内部監査において法に関わることを点検するという方法もあるでしょう。但しこの場合は内部監査は法律を知っている人がしなければならないし、法規制項目を漏れなく点検しなければならないということになります。
ちなみに、ISO14001アネックスA5.5参考1で『環境遵法監査はこの規格の範囲ではない』とあります。ISO14001でいう内部監査はマネジメントシステムの監査であって、法規制やパフォーマンスなどをみなくても適合なのです。ですから前提条件なしで「内部監査で遵法を見てます」とは言えません。規格4.5.5で要求するほかに遵法確認を追加しないと内部監査で順守評価しているとは言えないのです。

3案として、内部監査などと別に時期を決めて遵法点検する方法もあるでしょう。この方法では内部監査と別にまた内部点検を行わなければならないということになります。これも手間ひまが大変ですね。

このほかにもいろいろな案が考えられるでしょう。
ある会社では、親会社の監査を順守評価にあてはめると語っていた人がいました。確かにそういう発想もあるでしょうが、それはEMSの外に位置づけられるのではないでしょうか?
皆さんはそういう考えをどう思いますか?
グッドアイデアと思う人も、とんでもないと思う人もいるでしょう。

それと当たり前といえば当たり前ですが、ここで順守を評価する対象は4.3.2で特定されたものと完全に1対1でなければなりません。
これも良く見かける不適合ですが、4.3.2ではたくさんの該当法規制をあげているのですが、4.5.2で行う順守評価項目がそれより足りないというケースがあります。
しかし、そういった会社でもISO審査で合格になっているのですから、審査員はどんなところを見ているのでしょうか?
法律を守っているかどうか見ろとは言いませんが、順守評価しているかどうかくらいは確認して欲しいものです。
法律を知らなくてもできますからね 

でも、考えるとこの要求って会社が事業を進めていく上で当たり前のことではないでしょうか?
仕事というものは常にチェックされなければなりません。それは性悪説ではなく、生命体としての組織のリスク管理のために当然のことです。
もちろん順守評価する法規制は環境に限らず、公取法、輸出管理、情報管理・・・みんな同等ですよ、
いつも申し上げておりますが、環境マネジメントなんて包括的なマネジメントシステムのほんの一部・・それだけを管理するなんと発想は無理というもの。

なお、順守評価イコール内部牽制ではありません。
例に挙げた1案は業務管理そのもので内部牽制ではありません。
2案の内部監査で行うのは内部牽制でしょう。
要するに、ISO規格ではその位置づけはどうであれ、オープンループの仕事はだめですよ、必ずフィードバックをかけたクローズドループの仕事をしなさいと言っているのだと思います。


では来週に続く
 ・・・来月かもしれない 




ISO14001の目次にもどる