4.5.4 記録の管理 2007.01.30
4.5.4 記録の管理
組織は、組織の環境マネジメントシステム及びこの規格の要求事項への適合並びに達成した結果を実証するのに必要な記録を作成し、維持すること。
組織は、記録の識別、保管、保護、検索、保管期間及び廃棄についての手順を確立し、実施し、維持すること。
この記録は、読みやすく、識別可能で、追跡可能な状態を保つこと。

ここでは記録が具備する要件、管理上の要点を定めている。読めば中身はお分かりだろう。要求事項であるから、これらの要件はすべて満たさないといけない。

話はちょっと変わる。文書でも述べたが、会社の業務というのはたくさんある。たとえば製造業であれば物づくりに関わること、つまり設計、製造はもちろん、その上流として資材調達、下流としての営業販売についてはいうまでもないが、それだけではなく製造部門の活動を支える人事、総務、経理、知的財産管理、・・・・そして我々の仕事である環境管理ときりも限りもない。
当然、それらすべての業務において文書管理もあるし記録管理もあるし、教育訓練もあるし・・・・とこれもきりも限りもない。以前も述べたように会社でしなければならないことは一次元のものではなく多次元である。直線ではなく平面的に広がっている。
この多様な広がりを持つ業務の手順を文書化する(規則に定める)とき、いろいろな方法がある。
たとえば、ISO9000に関わるもの、ISO14000に関わるもの、情報機密に関するもの・・・という切り口もあるだろう。
職制単位にまとめる方法もあるだろう。
総括、総務、人事、経理、営業という仕事のカテゴリーでの切り口もある。
要素、つまり記録管理は記録としてまとめる、教育は教育として、要素単位にまとめるという方法もある。

「記録の管理」というものをどういう形で対外的に説明するのがよいだろうか? と考えると、文書とまったく同じことが言える。そして、会社の現実の業務をいかにしてISO14001への適合を説明したら良いかということが検討事項となり、それが事務局の腕の見せ所である。
このとき、ISO規格を元にとか、審査員に理解しやすいように、という安易(?)な選択肢を選ぶことはシステムがバーチャルになるという危険な道でもある。
ジョン・ウェインの「危険な道」を知っているのはたぶん還暦以上だろう?

会社の規則は、その組織にあった方法を探り作り上げないとならない。どの会社でも独自の歴史があり、固有の文化がある。そういう現実を認識すれば、ISO事務局がマネジメントシステムを構築するというような発想は不遜でしかない。ISO事務局を拝命したものの仕事とは、審査員様に会社の仕事がいかにISO規格を満たしているだけでなく、それを上回っているということを説明するかということに過ぎない。他人に分かりやすくしようとか、他人が見てどう思うだろうと気にすることはない。
同じく外部の人が良い悪いなどどうこう言えるものではない。システムは審査員のものではなく、その会社のものなのだから。審査員が言えるのは管理手順がISO規格に適合しているか、いないかだけである。組織の文化を知らない審査員が、その会社のマネジメントシステムが良いとか悪いとかいえるはずがないではないか。
残念ながらこれは私の言葉ではなく審査の神様L.Marvin Johnsonの言葉である。
審査員のちょっとしたアドバイスあるいは良し悪しの判断は、審査機関の認定停止への「危険な道」となる 
具体的なことを言えば、マニュアルに記録の一覧表などを載せることもない。各部門は該当する記録をこれこれの方法(それは規格要求そのものである)で作成し、維持すると決めておけば十分である。
私などはISO規格で要求するようなことは既に各部門やっているはずだという前提(私の思い込み)で人様の会社のマニュアルを書いている。 
そしてそれぞれの部門では要求事項に対応する記録を認識して、質問を受けたとき該当する手順と記録の現物を示すことができれば十分なのである。
そして審査員は組織側が分かりやすく説明してくれるのを期待するのではなく、現実の会社の業務をみて、必要とする情報を収集し規格適合か否かを判定するのである。

わたしのアプローチは世間一般で行われている方法より簡単だなどと思われては困る。各部門の管理者も担当者も己の仕事をよく理解していないとならないことは言うまでもない。
もっとも管理者が自部門の業務、文書、記録、そして手順を説明できなくて、業務を管理できるはずはないではないか!
ISOの審査のときに準備をしたり、右往左往する会社、管理者、従業員は元々ろくな仕事をしていなかったに違いない。
環境や品質に限らず、情報管理でも、安衛法でも、公取法でも、輸出管理でも、外部監査が来たときに準備をするようでは・・・だめなのである。 




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