写真クオリティのプリントは熱昇華型で

October 27, 1996


 デジタルスチルカメラがこれだけ話題になっているのに比べて、それを出力するプリンタについては、それほど話題になっていない。デジタルカメラの用途としては、一般的にウェブのページに貼り付けるといったことや、QV-10などのように、撮ったその場で見て楽しむといった使い方では、そもそも紙に出力する必要がないことと、解像度やプリンタの出力品質のため、いくらがんばってもプリントでは銀塩写真にはかなわないというのが頭にあるからであろうか。

 しかし、コンシューマクラスのデジタル写真でも、銀塩写真に優るとも劣らないプリントを出力することができるのが熱昇華型プリンタである。熱昇華型プリンタはもともとテレビの画面をプリントするビデオプリンタ用として発展してきたため、そういったビデオ画面のプリントの画質を思い浮かべてそれほど高画質でもないと思われるる向きも多いと思うが、それはビデオ映像の画質によるところが多く、パソコンからのデジタル画像データの出力では、かなり美しい出力が得られる。

 熱昇華型プリンタとカラーインクジェットプリンタとの最大の違いはその階調表現である。インクジェットがいくら720dpiだとか言ってもその各ドットはオンかオフの2値であって、階調はディザリングや誤差拡散といった方法によりドットの数で表現している。少し近寄って見ると、特に色の薄い部分では点々でできているのがすぐにわかってしまう。これに対して、熱昇華型は各ドット毎に256階調の表現ができ、また各ドットは隣り合うドットと完全に隙間なく塗られているので、dpi値がそれほど大きくなくても、インクジェットのようなことはなく非常に写真に近く見える。

 現在市場に出ている一般的な熱昇華型プリンタでは、ハガキサイズ専用で解像度が144dpi程度、ドット数にしてVGA画面相当の640×480が印刷できるものが多い。これだとビデオブリンタとしての解像度から考えるともっともである。デジタルカメラも640×480ドットのものが多いから、その点でも都合がよさそうである。しかしながら、この解像度ではちょっと物足りない気がする。ちょっと近づいて見ると、インクジェットのようにディザの点々は見えなくとも、144dpiでは各ドットが見分けられてしまうレベルである。

 解像度がこの倍程度になると、肉眼ではドットは見分けられないレベルになる。NECやパナソニックには、144dpi×288dpiという片方向だけ高解像度のものがあるが、何といってもシャープのビデオプリンタVP-ED100が300dpi×300dpiで完璧である。階調表現も何ら問題無く、難を言えば印字エリアが少し狭いこと、ビデオプリンターにありがちな赤色が少し強く出すぎる傾向があることくらいである。パソコンから出力するのにプリンタドライバ形式を使用せず、専用アプリケーションからのプリントしかできないが、クリップボードが使えるので、好きなフォトレタッチツールの編集画面からクリップボードにコピーして出力できるので、さほど不便はない。フィルムスキャナ等の高解像度の画像ソースがあって、銀塩写真クォリティのプリントアウト自分で出力したいならこの機種だ。

 また、最近アルプスから、従来型のA4サイズの出力できる熱転写プリンタと同じ形をしていて、プリントヘッドを取り替えることによって熱昇華プリントもできるという新機種が発表され、これはかなり期待できそうである。ただし、256階調と言っているが、実際の1ドットあたりの階調は16階調だか64階調だかで、それ以上はやはりディザリング等で実現しているようである。とはいってもインクジェット (や、熱転写) の場合とは格段に違うと思われる。ともあれ、実物のプリントをよく見て評価しないと何とも言えないので、これに関してはまた後日。


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