高エネルギー加速器研究機構(KEK

研修案内者  文部事務次官 山本哲史 様   他教授3名,大学院生1名

施設の概要

 高エネルギー加速器研究機構(KEK)は,加速器を用いて物質の根源・構造・機能を解明するために,平成9年4月に設置された大学共同利用機関である。2003年10月16日,次の3つの研究所・施設を見学した。

@放射光研究所

   磁場中で円運動する電子からの放射される光(X線)を利用し,物質の構造解析や生物のタンパク質の構造解析,さらに物質の加工などを行っている。測定装置のある小部屋が,電子の円運動の接線方向に多数個並んで いる。

A  ニュートリノの前置測定施設

   加速器で陽子を120億電子ボルトまで加速し,ニュートリノを発生させ,それをこの前置測定装置と岐阜県のスーパーカミオカンデでほぼ同時に検出し,ニュートリノが別の種類のニュートリノに変わる現象(ニュートリノ振動)を調べ,ニュートリノの質量を決定しようとするものである。施設内には,水100トンを含む「チェレンコフ検出器」と「ファイングレイ検出器」がある。ニュートリノの質量の有無は宇宙の膨張・収縮に関係している。

B Belle実験研究施設

  電子とその反粒子である陽電子を衝突させ,そのときに発生するB中間子と反B中間子を生成し,その崩壊過程における粒子・反粒子の対称性の破れ(CP対称性の破れ)を測定する施設である。現在の素粒子標準理論の検証と,現在の宇宙がなぜ反物質ではなく物質からできているかを解く研究につながるものである。

生徒の研修内容

・ 往路の車内でビデオの視聴(筑波大学,積水化学,ハザマなど)

・ 高エネルギー加速器研究機構の紹介ビデオの視聴(素粒子物理の基礎の学習)

・ 放射光研究所の見学(放射光放出の原理とその利用法についての説明)

・ ニュートリノの前置測定施設の見学(大学院生による説明と測定装置の見学)

・ Belle実験研究施設の見学(20人ずつの2班に分かれてBelle実験検出装置と加速器部品の展示室の見学)

生徒の様子

・ KEK紹介のビデオを生徒は熱心に視聴し,メモを取っていた。また,ホールの壁に素粒子物理学の年表があり,日本人科学者の名前を真剣に捜す姿も見られた。

 放射光研究所のすぐ前の盛り上がった土手の中で電子がほぼ光の速さに加速されていること, また,「和歌山のカレー事件」のヒ素の分析にこの装置の測定結果が使われたということを興味深く聞いていた。残念ながら,教授の説明がかなり長くなり,生徒の質問の時間が取れなかった。

 ニュートリノの前置測定施設では大学院生から案内をしてもらった。生徒は自分の年齢と近いせいか熱心に聞いていた。また,大学院生から,将来,大学生となり筑波に来てほしいという激励を受けた。

・ Belle実験研究施設前の展示室では電子ビームを波乗りの原理で加速するための高周波導波管,電子ビームを円運動されるための超伝導コイル,生成した荷電粒子を計測する検出器,半導体検出器などにじかに触れることができ,加速器に対する具体的イメージが生徒にわいたようであった。ここでも研究所の教授が一生懸命に説明してくださって,予定時間を超えていまい,残念ながら生徒の質問の時間がとれなかった。

・全体として物理学の最先端の内容が多く,高校1年生レベルでは完全な理解は困難であったと思われるが,ノーベル賞級の研究成果を出した,世界でも第一線級の実験施設を見学できたことは,生徒にとって,いろいろな意味で良い刺激を受けることができたのではないかと思われる。