山形県立米沢興譲館高等学校
1.目的
SSH2年目の米沢興譲館高校で開催されるSSH研究発表会に参加し,来年度本校で予定されている課題研究発表会の運営方法について知見を得る。また,SSH全般への取り組み,特に大学との連携や課題研究の授業の内容・実施方法などについて参考にするために視察した。
2.意図
次の三点を中心に視察した。
・課題研究発表会の運営方法
・課題研究の内容と指導法,特に大学との連携のありかた
・SSHの全体的な取り組み
3.概要
(1)期日 平成16年2月20日 午前9時50分から午後3時まで
(2)参加者 教諭 笹川民雄
(3)日程
開会式 (9:50〜10:10)
学校長挨拶,県教委挨拶,来賓紹介
課題研究発表会(理数科) (10:20〜11:30,11:40〜12:50)(講堂 300名収容可能)
地学班 リモートセンシングによる土地被覆調査
物理班 ソーラーエネルギーについて −太陽電池による太陽光発電−
生物班 植物の分化全能性の研究
化学班 身近な現象を科学する −お湯が冷める変化を数式で表してみよう−
数学班 χ2分布を利用した独立性の検定について
講評および優秀賞の発表(山形大学工学部大場教授)
研究成果発表会(13:30〜14:50)
学校設定科目「生涯科学」および学校外学習資源の活用について
第2学年科学関連施設研修会について
SSH教員研修「数学指導法研究会」について
理工部の活動(ソーラーカーの製作と大会参加)
講評(JST職員)

4.報告事項
(1)課題研究発表会について
76名の参加者あり,そのうち県外のSSH指定校が13校参加していた。会場は300名収容の非常に立派な講堂であり,興譲館高校の施設の充実ぶりには驚かされた。また,講堂の隣には資料館があり,藩校以来の伝統の重みが随所に感じられた。課題研究発表を行った生徒は理数科2年生であり,学校設定科目「生涯科学T」(1年次)の時間に16時間,「生涯科学U」(2年次)の時間に53時間(4月〜9月 27時間,10月から3月 26時間)かけて行った成果の発表である。2年次の秋(9月末)に中間発表会を実施し,山形大学工学部の教員による研究内容や発表についての指導,助言を受けたそうである。大学との連携はこの時期から始まり,必要に応じ研究内容についてのアドバイスを受け,また,大学の実験機器を使わせてもらうという比較的緩やかな連携である。研究テーマは1年次の先端研究施設見学会などで得た知識をもとに,生徒に自主的に設定させていた。
発表は各班15分で,質疑応答の時間が5分である。秋の中間発表のときに1回経験しているせいか,礼儀正しく,落ち着いて発表していた。発表はプレゼンテーションソフトを使用し,生徒の役割分担がはっきりとしていた。内容的には高校レベルの身近なテーマや,地域に関わるテーマが多かった。その中で評価が高かったものは仮説を設定し,実験でデータを集め,それを解析し,課題が解決するまで粘り強く取り組んだ発表であった。生徒の創意工夫や新たな発見があるかどうかが評価を決めるようである。また,生徒の創意工夫がみられた研究に対しては会場の生徒や教員から質問が多く,白熱した討論がなされた。班によっては実験を行っただけで終わっている場合もみられ,課題研究の指導の難しさがうかがえた。
(2)研究成果発表会について
興譲館高校のSSHについての理念や取り組みについての説明があった。従来の理数科の目標である「科学する心」の育成を継承し,さらに @探究する力,A創意工夫する力,B表現し発表する力 これら3つの力の育成をはかるために,1年次,2年次,3年次にそれぞれ学校設定科目「生涯科学T」,「生涯科学U」,「生涯科学V」を設けていた。これは,学校内学習(自然科学基礎講座,基礎実験講座,課題研究)と校外学習(野外巡検,研究施設見学,講演会,研修会など)からなる2単位科目である。生涯にわたり「科学する心」を持った生徒を育成するという学校の基本姿勢が感じられた。
昨年度は,理数科の1年生対象の科学施設研修会を今年度はSSHの効果を広く学校に波及させるため,2年生全員を対象にして11月に,修学旅行のかわりに2泊3日で行ったそうである。見学箇所は日本未来館,都内国公立大学,筑波学園都市内研究施設などである。理数科については課題研究のテーマに関連する研究施設を班ごとに見学し,効果的な研修ができたと聞いた。また,予算面ではSSH予算として非常に高額であり,予算の3分の1を占めるものとなることを避けるため,JSTと交渉して生徒負担との一部費用の折半が認められるようになったそうである。
SSH事業として,生徒の諸活動に加え,数学を対象とした「教員研修」を5回実施し,大学の教員を講師として指導方法の改善をはかり,研究授業を最後に実施したそうである。理科だけではなく全体で取り組む姿勢がみられた。
5.まとめ(本校の課題)
来年度のSSUの課題研究Tについては,本校では校内テーマを選択する班が少なく,大学での3回にわたる実験実習(9〜12時間程度)が中心になる班がほとんどとなるわけであるが,時間的な面から大学での実験実習だけで課題研究を完結させることは難しいと思われる。そのため,大学と連携を密にして,校内でいかに指導していくかが成功の鍵となると考えられる。その際,「仮説の設定」,「実験的検証」,「データの解析」,「問題の解決」という課題研究に必要な要素を盛り込み,生徒の創意工夫のみられるものに仕上げていくことが重要であると感じられた。