草戸千軒

土師質土器

はじしつどき

13世紀後半の土師質土器

 釉薬(うわぐすり)をかけずに焼いた、いわゆる素焼きの土器です。中世には、各地域ごとに素焼きの土器が焼かれており、「かわらけ」「土師器」などと呼ばれることもあります。椀・皿といった食器の形をしたものが最も多いですが、鍋などの煮沸容器もあります。
 土師質土器の椀・皿は、食器の形をしていて大量に出土していることから、かつては中世民衆の代表的な食事の容器だと考えられていました。しかし、作りが雑で使いにくいこと、壊れていない製品が大量に埋められている場合が多いことなどから、日常的な食器というよりは、儀式などの場で、象徴的に使われていた道具だったと考えられるようになってきています。(写真:13世紀後半の土師質土器)
 草戸千軒では、井戸や溝あるいはごみ捨て穴などの施設を埋め戻す際の儀式で大量に消費され、繰り返し使うことなく穴の中に埋められたようです。SK1300という番号の付けられた穴の中からは、1.3トンもの土師質土器の椀や皿がまとまって出土しており、個体数に換算すると少なくとも3万枚ほどの椀・皿が埋められたことになります。


suzuki-y@mars.dti.ne.jp
1998, Yasuyuki Suzuki & Hiroshima Prefectural Museum of History, Fukuyama, Japan.
Last updated: June 10, 1998.