草戸千軒

木の葉形鋸

このはがたのこぎり

木の葉形鋸と鑿(のみ)

 日本中世において広く使われた鋸(のこぎり)で、寺社の建立の由来を描いた寺社縁起絵巻の中にも数多く登場します。
 現代にまで伝わる実物資料が存在していなかったため「幻の鋸」とまで言われていましたが、草戸千軒町遺跡で鎌倉時代の実物資料が出土したことによって、絵巻物に描かれたとおりの鋸が存在していたことが明らかになりました。
 木の葉形鋸は、絵巻物の中ではすべて横挽き(木目と直角の方向に切る)の鋸として描かれています。おそらく、室町時代になって製材用の縦挽き鋸である「大鋸(おが)」が出現するまで、木材を縦方向に鋸で製材することはなかったのでしょう。その代わりに、木材に楔(くさび)を打ち込んでいる情景は多く描かれていることから、木材を木目の方向に打ち割ることによって製材していたと考えられます。
 写真は、復原された木の葉形鋸と鑿(のみ)



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1996-1998, Yasuyuki Suzuki & Hiroshima Prefectural Museum of History, Fukuyama, Japan.
Last updated: June 10, 1998.