名曲の部屋

この部屋は、僕の好きな名曲をいくつか選び、その曲についてと、その曲のCDについて解説してしまおうという部屋です。
目次

ブルックナー7番 ブルックナーの交響曲について


ブルックナー 交響曲第7番ホ長調

1883年9月5日完成。ブルックナーの交響曲作品の中で初めて大成功した作品である。アダージョ楽章が完成する直前にブルックナーが師として尊敬していたリヒャルト・ワーグナーが死去し、そのため、アダージョ楽章のクライマックスの後の部分はワーグナーへの葬送の意が入っている。もっともアダージョ楽章がワーグナーの死を予感して書かれていたこともあり、全体を通して葬送曲と言える。例えば、調性の点から見ると、1楽章がホ長調で2楽章が嬰ハ短調(主調と平行調)という関係はベートーヴェンの英雄交響曲を真似たものであると言われるし、自筆譜の研究によると、アダージョ楽章の練習記号「W」の部分(ワーグナーの頭文字)の記譜は感情的に乱れている、という。作曲順は3楽章、1楽章、2楽章、4楽章の順である。ワグナーチューバが2・4楽章にだけ使われているのは、この作曲順によるものであろう。

第1楽章 あまりに美しいチェロ主体の第1主題がブルックナー開始の弦のトレモロの中から始まる。史上類をみない長さの主題である。第2主題はワーグナー的な∽形を持つ主題で、第3主題はアレグロ楽章本来のリズミックなものである。
第2楽章 この楽章で有名なのはシンバルとトライアングルの使用に関する問題である。ブルックナーは、シンバルやトライアングル、(8番の)ハープという楽器について、「交響曲楽器ではない」のだから本来使いたくないのだが、他に自分の表現に値する楽器がないから使っている、と発言している。ただ、7番のシンバルとトライアングルについては、最初から使用するつもりはなかったと思われる。完成した後、指揮者のアルトゥール・ニキシュの提案にいより、ブルックナー自身の手で追加されたといわれている。問題なのは、その後、自筆譜のその部分に「無効」という文字が追加されていることで、更に問題なのが、その「無効」という文字を書きこんだのが誰だかわからない、ということである。
第3楽章 かっこいい曲である。
第4楽章 第1楽章第1主題を変形したリズミックな主題で始まる。よく言われるのは前の3楽章と比較し、この楽章だけ短いし、内容も乏しいことである、が、この楽章は非常にブルックナー的であるし、構成要素はたしかに少ないが非常に充実した曲であるというのが僕の考えである。ブルックナー休止を多用する点や、「偉大なるワンパターン(フジテレビのマエストロ)」という点。生成を繰り返し繰り返し、偉大なる頂点に達するという、単純で素朴な構成がブルックナーらしいと思うし、大変充実している。ところでこの楽章のブルックナー休止における間の取り方はなかなか難しいようで、僕の趣味に合うものはなかなか少ない。なぜか、休止の部分だけ、しっかり降ってはいるのに、早くなる指揮者が多いのである。日欧の装飾文化の違いを見るに、この間の取り方は日本的なもののかもしれない。最後は”ブルックナーの枠主題”といわれる、例によって第1楽章の第1主題が再現されて終る。

この曲の名盤について

この曲は他のブルックナーの後期交響曲と比べ、所集しているCDが少ない。10枚ちょっとくらいであるが、20枚以上は聞いたことがある。この曲は先述した通り、4楽章の総休止の部分を始めとして僕の趣味に合うものが少ないのである。一般的に名盤とされるのはカラヤンの最後の録音演奏、マタチッチの死の直前の録音、最近ではラトルのものも名盤と言われるかも知れない。チェリビダッケの正規盤も名盤であろう。この中で1枚選べと言われれば、非常に迷うが、カラヤンのものを推薦する。なんといっても録音が綺麗だし、ベルリンフィルの実力もすごい。
先に、この曲の所有CDが少ないと書いたが、それには訳があって、高校の時に買ったCDがあまりに素晴らしい出来だったためなのである。ほとんど奇蹟のようなライブ録音であり、このCD購入以後、7番のCDは買う気があまりしなくなったのである。7番は前3楽章については名盤と言えるCDがたくさんあるのだが、4楽章だけはこのこのCDに勝るものが見当たらないのである。また、この指揮者とオケにしてはかなり上手い演奏でもある。演奏の場が残響7秒以上であったことがこの演奏を素晴らしいものにした一因であることは確かであろう。その場とは、ブルックナーゆかりの聖フローリアン教会である。指揮者は朝比奈隆、オケは大阪フィルである。75年の演奏であるが、録音も素晴らしく、是非聞いて欲しいCDである。正直、このCDさえあれば、他のCDは聞かなくてもいいかもしれない。念の為書くと、20年後の朝比奈とは全く次元の異なる名演である。


ブルックナーの交響曲について

まだ工事中なり。書くことは、ブルックナー指揮者、ブルックナー開始(始原の霧)、ブルックナーの波動運動、ブルックナーリズム、ブルックナー休止、ブルックナーの枠主題(両端楽章)、などの用語的なものの解説、彼の性格、版の問題、などなど。いつ書き始めるか、全く不明。


このページは早稲田大学政経学部政治学科5年,早稲田大学交響楽団OBの吉田大志が個人の責任で 作成しています。注意はしていますが、万が一著作権上の問題等、お気づき の点ございましたらメール等で教えて頂けるようお願いします。

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