エルツリレー妄想コメディ編




第一話(金山)「あのリボンをはずせ!」


 退屈だ・・・
 どうしてこう教室っていうのは毎日毎日変わり映えしないんだ。
 いつもと同じ机、いつもと同じ黒板、いつもと同じ学長の顔、いつもと同じ顔のクラスの連中。
 つまらん・・・
 朝来てみたら机がみんなちゃぶ台になっていたとか、黒板が七色にフラッシュしてるとか、学長の手と足が反対に着いているとか、ヘレンが素っ裸で登校してくるとか、そんな刺激的な変化を期待したっていいじゃないか。
 ダメ?
 ダメなの?
 ふん、お前もつまらない奴だぜ。ルシヨンと同じだ。
「お早う、みんな。」
 ありきたりの挨拶を吐きながらまた一人、いつもと同じ顔が教室に入って来やがった。あのもみあげのところに長く垂らした前髪も、束ねられた後ろ髪も、それをまとめるあのバカでかいリボンも、よくもまあ毎日飽きもせず同じ出で立ちで出てこれるもんだ。
 せめて制服を前後ろに着てくるくらいのユーモアがあってもいいじゃないか・・・・って、どだいエルツにユーモアを期待するのが間違いだ。
 そういえばあいつに酒呑ませると突然脱ぎだすってのは本当かね。今度試してみたい気もするが・・・
 だが・・・
 ふと、俺の頭に何かがよぎった。もし、あのエルツがリボンを取って髪を下ろしたら・・・どんな感じになる?
 考えてみたらあの女はどんな時でも俺達の前でリボンを取ったことがない。だから俺達はリボンをしている時のあの女の髪型しか知らないのだが・・・あのリボンを取ったら・・・・
 ・・・ダメだ。色々想像していたらどうしても我慢できなくなっちまった。見たい。リボン無しのあの女はいったいどんな感じなんだ?
 俺は思いっきり正面からエルツに言った。
 リボンを取ってくれ!
「嫌よ。」
 ・・・無情だ。
 たった二文字で退けられちまった。まあ、特にこいつと親しかった訳でもねぇし、当たり前といやぁ、当たり前か。ちっ、エルツの野郎、思いっきり変な目で俺を見てやがる。

  「・・・・・・」
 眠れねえ。ダメだ、想像したら止まらなくなっちまった。リボンを外したエルツ・・・妄想は天井知らずだ。俺の頭の中には髪を下ろして驚くほど雰囲気の変わったエルツと、バケモノのようにおどろおどろしくなったエルツが交互に入れ替わり立ち替わり現れている。
 「・・・・・・」
 だめだ・・・・。このままでは俺に安眠の時はやってこない。この妄想を止めるには、やはり実物を見るしかないだろう・・・。
 決めたっ!!
 俺はやる!!
 どんな手を使っても、エルツのリボンを取った姿をこの目で見てやる!!
 だが・・・さすがに掴みかかって押し倒したり、夜に部屋に侵入したりするのはマズい。何らかの小細工が必要だろう。 そうなると一人じゃ無理だ・・・仲間を募るとしよう・・・。
 翌日、俺は密かに「同志」を集めた。その結果、思ったよりも大勢の「同志」の結集に成功した。ルシヨン、ネルトは当然として、フォルラーツやリンデルも協力を約束してくれた。さらに、スタンベルクまで協力を申し出て来たのには驚いたぜ。まだ声を掛ければ協力者は集まるかもしれねえ。
 どうやら、エルツのリボンは俺が考えていた以上に、クラスにとっても大きな命題だったようだ・・・・
 さあ、やるぞ!!
 必ずエルツからリボンを奪うのだ!!
 いくぜ、みんな!
 「イーッ!!」
 やめろ、そんなどっかの戦闘員みたいな返事は・・・。
 だが、気を付けなければならない。エルツについては、先の「呑めば脱ぐ」の他にも、色々奇妙な噂が流れている。目から怪光線を出すだとか、過マンガン酸カリウム水溶液をグイ呑みしても平然としてるだとか、リミッ○ブレイクすると瞬獄○を使うだとか・・・・
 計画の立案と実行には、特に注意を払わなくては・・・


 どうも、クラスの雰囲気がおかしい。授業中に痛いほど視線を感じるのは気のせいなのかしら。
 それに、どうもルシヨン君やネルト君の私を見る目がいつもよりよそよそしい、というかわざとらしい。リンデルとフォルラーツも、何となく態度がいつもと違う。そして、二人とも それを無理に隠そうとしているような気がする。とにかく、何か不自然なのよね。
 時々、背後に妙な気配を感じて振り向いたりしてみても、何もない。確かに、誰かにつけられているような気配はあるんだけど・・・・これってひょっとしてストー○ー?
「エ〜ル〜ツっ!」
 妙に間延びした声で名前を呼ばれ、脇を振り返るとモリッツがいた。
 どうしたのモリッツ?
「エルツ、気を付けた方がいいわよ。」
 気を付ける?
 何を?
 まさか本当にス○ーカーが私をつけ回してるの?
「当たらずと言えど遠からず、かな? ハイデルが何か企んでるわよ。どうやら、あんたのリボンを奪い取る計画をしてるみたい。」
 私のリボンを? そう言えば、昨日あのバカはいきなり私に「リボンを取れ」とか言ってきたっけ。何様のつもりなのかしら、ってその時は思ったけど。
 ・・・・でも、面白いじゃない。何を考えてるのか知らないけど、久々に燃えてきたわ。私のリボンを取ろうって言うのね?
 ハイデル、その勝負、受けて立つわ!!
 絶対に取らせないわよ・・・
 かくて、エルツとハイデルの不毛な闘いの火蓋は切って落とされた・・・




第二話(ぴんく)早速四本勝負!




・・・というわけで、エルツのリボン奪取計画(通称「E計画」)が開始された。
当面は、E計画参加者の自主性を尊重し、各自のやりたいようにやることになったのだが・・・

●ネルトの場合

 確か、エルツからリボンを奪い取ればいいんだよな・・・うん!
 「あっ!危ない!!」
 リッカーボールがエルツの頭をかすめた。
 「キャッ!」
 「ごめんごめん、ボレーシュートの練習してるんだけど、なかなか上手く  いかなくて・・・」
 「なんでこんな、陸上部の近くでやってるのよ!」
 「他に場所が無いんだよね、これが・・・」
 「気を付けてよね!もう!」
 「あれ?エルツ、リボンに当っちゃった?」
 「ええ!?」
 「少し土が付いてるみたいだけど」
 「本当?」
よし!ナイスシチュエーション!!チャンスだ!!! 土をはらう振りをして、リボンを強奪だ!
「きゃ〜!いやらしい〜!痴漢〜!」
「モ、モリッツ」
「エルツ気をつけて!このバカ、あんたを抱きしめようとしてたわよ!」
「なんですってぇ〜?」
「そ、そんな!ち、ちがう!わ〜〜〜〜!!!」
気の毒なネルトの悲鳴が校庭にこだました。

●ナックの場合
 
 え〜と、リボンを取ったエルツの髪形がわかればいいんだったよな。
 「お〜い、エルツ〜!」
 「あら、ナック君どうしたの?」
 「君の姿をこの目にしっかりと焼き付けたい!」
 「え?」
  (何よいきなり!照れるじゃない!)  じ〜〜〜っっ!!!
  (キャ〜!真剣な目!舞台に上がるより恥ずかしいわ〜!)
 「よしっ!ありがとう!」
 「へ?」  (ガクッ!なんだったのよ!いったい!!)
   :  
   :
 ふふふ、なにもエルツ本人に無理強いしなくても、 創造魔法で作ったエルツに自分でリボンを取らせれば簡単じゃないか!
 「ノイシュ〜!」
 「あら、どうしたのナック君」
 「ちょっと創造魔法に付き合ってくれないか?」
 「いいけど、何を創造するの?」
 「エルツだけど?」
 「ゴホン!・・・エルツを創造して・・・いったい何をしようって言うの!?」
 「いや、ちょっと個人的に興味があってね・・・って、ノイシュ、目が恐い!」
 バキッ!!!
 「いてて・・・わ〜!ちょっと待ってよ〜!誤解だよ!誤解〜っっ!!」

●リンデルの場合

  エルツのリボン・・・あれは何か魔性の力を封印するためのものに違いない。
  きっとそうよ!そうだ!そうに決まった!間違いないわ! そうと決まれば、よぉ〜し!!・・・焼き払ってやる・・・ふふふふ
  「目標を肉眼で確認!」
  「武術魔法準備よし!」
  「ターゲットロックオン!」

  「ファイヤー!」
  偶然、石につまずいてエルツがよろけた。 そしてその頭上30cmをの武術魔法の炎が通過する。
  「キャ〜!何するのよ!リンデル!!」
  「問答無用!エルツ!覚悟!!」
  「キャ〜!!!!」
  陸上部対魔法部の鬼ごっこが始まった。
    :
    :
  さんざ走り回って武術魔法をぶっ放しまくったが、エルツの足の速さって 尋常じゃないわ・・・当たらない。
  気がつくと夕暮れ。
  逃げ足の速いエルツの姿はどこにも見えない・・・ ぐぅ〜〜〜 あははは、さぁて、よく運動してお腹も空いたことだし、今日はそろそろ寮に帰るか!
  魔法も体力も使ったし、今日の夕食はきっと美味いぞ〜! (といって初期の目的をすっかり忘れ、夕食をいつもの3倍程たいらげるリンデルであった・・・)

●フォルの場合

  エルツがリボンをとった時の顔? バカバカしい!どうだっていいじゃない!そんなの!
 今回の騒動に付き合うのはあくまでもこのヘアピンサイズ超小型動画像 撮影装置の実験のためよ!
  (まぁ、ちょっとは興味ないこともなくなくはなくなくないけど・・・ん?)
 「あら、エルツもお風呂? それにしてもなんか汚れてるわねぇ」
 「ああ、フォル、珍しいわね、お風呂で一緒だなんて。
 もう今日は最低よ!みんなでよってたかって私のリボンを付け狙って・・・  ・・・って、まさかあなたも?
 「なんであたしが、あなたのリボンをほしがらなきゃならないわけ?」
 「ま、まぁそうよね・・・ちっとも科学的な話じゃないものね・・・」
 そうこうしている間に、エルツが服を脱ぎはじめた。
 こんなところを男共に見せるわけにはいかないわね・・・はいそっぽ! あ!リボンに手を掛けた!よしズームイン!!
    :
    :
「あ〜、いいお湯だった!で?どうだった?ばっちり見えたでしょ!」
「最初のうちはちゃんと写ってた・・・」
「最初のうちは?」
「そう、でも脱衣場に入ったら途端に湯気で曇って何にも見えなくなった!」
が〜ん!そういえば曇り止めなんてまるで考えていなかった〜!!
    :
    :
 うぅぅ〜!! どいつもこいつも頼りにならん!一体何をやってやがるんだ!
 しかし、エルツの奴、まるで見えない壁に包まれているみたいに ガードが固い!
 どうも通常の個別攻撃では 奴のガードを突破するのは、 無理なようだ。
 こうなりゃ、みんなで、一致団結して集中攻撃で行くしかない! さ〜て、どの手で行こうかな・・・?



 第三話(がーらんど)そして緊急会議!


 

今までのレポートは各自の独白のもとに綴られていたが、この編ではお互いの公正をきたすために、著者の客観的な観点で綴る事にする。

 この日、各自の計画が失敗に終わり、何一つ情報を得られないまま攻撃の幕を閉じた。
 そこで急遽作戦変更、それぞれ一致団結して攻撃?を仕掛ける事に。これには個人的な攻撃をかけなかったスタンベルクが指揮をとることになる、この日の夜スタンベルクの部屋で緊急会議が開かれる事になった。
 なお参照までにこの部屋の入り口にはこうかかれた豪華な札が立てかけられていた。
「エルツのリボンの秘密に迫る会、トリフェルズ支部」
 ちなみに誰が制作したかはわからない。
 エルツとモリッツはこの札の前に耳を澄まし、中の様子をコップを使って盗聴していた、なお聞こえたかどうかはわからない。
 まあ聞こえたとしても何も役にはたちはしないだろうが。
 そしてこの部屋の中で展開された議題は大まかにこんな感じだった。
「ねえねえネルト、今日の晩御飯のおかず何か知ってる?」とリンデル。
「われわれは心地よい眠りのためにあのリボンの秘密を明かさねばならない!」と鼻息荒いハイデル。
「くかーすぴー・・・・」と安眠をむさぼっているナック。
「もうちょい、もうちょい」とビュレットを持ち込みなぜかテキテイなぞしているフォル。
 これでは会議では会議になってない、と言う事に懸命な読者たちなら直感的に気づいているだろう。
 しかしこの作戦にハイデル以上に熱心に情熱を傾ける一人の少年が居た、その名はスタンベルク。彼の演説を少し聞いてみよう。
「さあ君たち、私の話をよーく聞くんだ!なお変なリアクションは無しにしてくれたまえ」
「おぉぉぉぉぉぉ」
「・・・・・君たちは私の話が聞こえなかったようだな、まあいい、君たちにはそこまで期待はしてないからな」
「あんた私に喧嘩売るつもり?」
「まあリンデル落ち着きたまえ、ここにこれからの作戦の計画書がある、これは私が夜なべしてあつらえた珠玉の計画書だ!君たちにはこの計画書の通りに行動してもらう。意見のあるものは居るかな?」
「くかーすぴーー」
「全員で寝るなーー!」
 とこんな具合に会議は模様された、なおこの会議が終わり部屋から出たナックの手には「無罪」とかかれた札があり、これを見たエルツたちは「おぉぉぉぉ」と意味の無いリアクションをとっていた事を付け加えておこう。
 この会議の終わった後、エルツとモリッツは緊急対策会議を開いていた。なお彼女たちのテーブルの上にはワインがあった事を付け加えておく。
 彼女たちの緊急対策会議は夜半まで模様された。
 その一部ではあるが録画で読者たちにお見せする事にしよう、なおこれを誰が撮影したかは演劇部の誰か、と言う事しかこの場では公開できない。
 と、いうわけでガチャッとな、レッツプレイ!
「へへへへ、この私のリボンを取ろうなんて・・・うふ」
「でもでも、なんか面白いじゃない、いい暇つぶしになるわ」
 健全な読者たちにお見せできるのはこの辺まで、この後は・・・まあそういう分けでありまして・・・
 これでは読者の皆さんが納得できないので、彼女たちの心の中をちょっと覗いてみる事にしましょう。
 まずエルツから・・・
「なんで今更リボンなの、もう頭に来ちゃうわ!なによ、みんなでよってたかって。でもここはこの状況を利用して・・・うふ、うふふ。でもこのモリッツ、この子だけは信用ならないわ、きっと何か企んでいるにちまいない・・・まあこの場は味方に付けておいて間違い無いわね。この子の目的さえつかめれば問題無いんだけど・・・油断ならないわ!
 そしてモリッツ・・・
「なんか面白い展開になってきたわ、この場はエルツの側についていた方が得策ね、でもあのリボンにはどんな秘密が・・・・これはいい記事になりそうだわ。エルツったら私の事すっかり信用しているみたいだし。この状況を利用して・・・・ぐふ、ぐふふ」
 この夜、会議が模様された演劇部部室では彼女たちのふてきな笑い声が響き渡った。
 そして次の日の朝攻撃隊は、寮の前に集まり点呼を取った後各持ち場に散っていった。そしてこの日の作戦が始まっていった。
 ちなみのこの日の早朝、エルツとモリッツは目を真っ赤にはらしてふらふらと寮に帰っていったのをカステルが目撃している。
 前の日の夜、彼女たちに何があったのかなぜか話すものは居なかった。
 なお彼女たちの作戦は、朝をキャンセルしてお昼頃から始まった。
 攻撃隊は朝から作戦変更を余儀なくされたのは言うまでもないだろう。

 その後については著者の記す勇気はない、このレポートは勇気のある某演劇部員によって形を変えて書かれる事だろう。
 これにてこのレポートはいったん終わる。


最終話(elthy)愛の逃避行



まだ半分アルコールの残ったようにふらふらゆれるエルツのリボン頭を校舎の上から見届けてほくそえむ「エルツのりぼんを奪え連合軍」略して「えりれん軍」の面々。
「ふっふっふ。このスタンベルク様特製の『愛の逃避行!トリフェルズの白薔薇の騎士と紅薔薇乙女の舞い散る先には満開の緑髪作戦』発動の時がやってきたようだな。」
「しっかしなっげー名前だなあ。おぼえらんねぇぜぇ。その上にエルツの髪は黒じゃねーよなぁ」
「いちいち細かい事にけちを付けないでくれないか、ハイデル。それより見てくれ給え。僕のこの美しき雄姿を!」
とスタンはマントを翻す。 かれの今日の衣装はわざわざ実家から取り寄せた白馬の騎士をイメージしたという純白の衣装はいかにも薫立つ白薔薇のごとく・・・なのだが代わりに薫ってくるのはなんとも妖しげなニオイ・・・・
「わっ!ごほごほ!くっさーいっ!なんなんだ、このニオイは、スタンベルク!」
「はーっはっはっは。男女の仲に鈍感なナック君が気づかないのも無理もない。これはな、古今東西の惚れグスリをスペシャルにフォルラーツが調合した、超ベリグスーパーファインラヴィングマーベラスポーションだ!!
「ほーっほっほっほ。科学の力に、不可能はないわ!」
「もっとも、この僕には惚れグスリに頼らなくてもエルツならあっさり落とせるがな」
「スタンベルクじゃ、薬がないとヘルムスさんでも落とせねえぜえ・・・・」
「リンデル、ここで僕と勝負したいのか?」
あわてて止めに入ったネルト。乱闘にまきこまれた彼がどう骨が折れ、頭の打ち所が悪かったかは、誰もどうでもいいからほっといて、ともかく、乱闘だけはなくなった。
「はあ、はあ、えりれん軍がいきなり内乱になるところだった・・・・取り合えず、われらの目標はただ一つ!」
「イーッツ!」
「・・・・・・、コホン(またかい)、エルツのあの、真紅のリボンであーる!!」
「エルツ、このまえはごめんよぉ。リボンごときで、あんなにむきになったりして。」
「いいのよ。ハイデル君・・・べつに気にしてないから。」
エルツはほっとした顔で、うふふっと笑う。モリッツは耳うち・・・
「一寸、あんた、そんな簡単に油断していいと思ってるの?」
「首謀者が謝れば簡単な話しよ。やっぱり私の・・・・・(こそこそ)」
ストップ。それ、一寸エルツらしくない。(こそこそ)」
「そうね。それなら・・・・許して・きゃあ!」と見せかけてうしろから思い切りエルツにパロスペシャルをかけに行くハイデル!
それをモリッツが止めようとする前に飛んでくるサッカーボール!後頭部を直撃(のつもり)でハイデルうずくまって退場・・・(ふふふ、作戦どおり)
「危なかったね、エルツ。大丈夫??あーあー、こんなに服もどこもどろどろで。はたいてあげるよ。あ、リボンも。」
「リボン・・あんたもまだねらっているのね?こうなったら意地でも渡さないわよ!」
「そうはいかないわよ!」
「そうだ!エルツ!そこまでリボンにこだわるからには何かとんでもない魔法が隠されているにちがいない!」
「リンデル、それにナックまで・・・・・」
「覚悟!!」
そこに飛び込んでくる白馬の王子・・・・・にしては少々胡散臭いスタンベルク。
「エルツ、大丈夫かい?こいつらのくだらない企みに惑わされる術はない。早くここから逃げよう。」
味方の少ない中ではスタンベルクの付けた媚薬は強烈で、あっさりエルツはスタンの胸元にもたれかかる。
二人は一目散に逃げるが、エルツは足をもつらせ、あっさりと追いつめられてしまう。(おや、エルツはこんなに足が遅かったかな?)
「そこまでだ!覚悟!!」
ここで一斉にナックとリンデルは左右からエルツの頭めがけ炎の攻撃魔法をぶつける。(うまく当たってリボンが焼き切れればよし、もし避けたとしても・・・・炎には後ろに広がるプールの水だ!エルツが泳げるという話しは聞いた事がないし、第一、服を着ていれば泳げなくておぼれるはず。気を失えばこっちのもの・・・はっははは。)
「エルツっ!あぶないっ!
どっぼーん。ところがエルツはしっかり捕まえているはずのスタンの腕の中からするりと抜け出すと武術魔法をくぐって水面をすいすい・・・・・ん、エルツの通った後には薄茶色の液体が一筋?さらに泳いでいく内にその服がだんだん張り付いていくが、おや、エルツの胸はこんなには・・・
「お前は誰だ!?」
「うふふ。ごきげんようスタンベルク。」
その少女はプールの反対側までわたってしまうと、サイドに足を組んで腰掛ける。すっかり染料の落ちてしまった黒いストレートの髪ときっちりしたウエスト、しかも水の上で無敵となれば・・・
「マリエン!そうか・・・エルツはマリエンだったのか。」
ずでっ!
スタンを除いた全員が吉本新喜劇のように盛大にコケル
「今日は楽しかったわ。みんなして思いきり私の罠にはまってくれるんですもの。これで今週の特ダネは決まりね。エルツのリボン略奪大作戦、壊滅!」
「このスタンベルク様がモリッツごときにしてやられるとは・・・道理でエルツにしては足が遅いと・・うわっぷ!あ、足がつった・・・」
そのころ、エルツ当人は、ベッドで二日酔いの頭を抱え込んでこううわごとを言っておりました・・
「う、ううぅ、もりっつぅ、わたしはあいあるかぎりぃたたかうわよぉ・・・今日の作戦は、きっと大成功させてみせるわぁ・・・・・・」

おしまい。


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