白神山地のあちこち歩き

白神山地のあちこち歩き


今年は、世界自然遺産の一つである白神山地に行ってきました。
東京と大阪から6月19日(金)の夜行で出発。20日の朝、東能代をスタート、24日まで緑また緑の世界を楽しんできました。
                          

1.スケジュール

  6月20日(土) 二つ森、十二湖、日本キャニヨン散策               森山荘泊
  6月21日(日) 白神岳登山                           汐が島泊
  6月22日(月) 天狗岳登山                           アクアグリーンビレッジ泊
  6月23日(火) 暗門近くの古道“菅江真澄のもろ滝の道”散策           熊の湯泊
  6月24日(水) 自然遺産核心部のクマゲラの森、赤石川源流散策

2.メンバー

5期 西野賢貴、6期 岡崎公則、7期 竹辺 肇、富士光弘、三宅昌之、金子勇雄、13期 小松崎幸代子
23日と24日は、著名なルポライター、登山家の根深 誠氏が同行。
根深 誠氏(弘前高校、明治大学山岳部OB。登山家としては特に白神山地、チベットを中心に活躍され、シャハーンドク(6,194m)初登頂など、ヒマラヤの未踏峰6座に初登頂。著書は、遥かなるチベット、ヒマラヤにかける橋、白神山地をゆく等多数。)

3.行動記録 (金子記)

1日目; 6月20日(土)   二つ森登山、十二湖散策

前日21:15上野発のブルートレイン“あけぼの”は7:48に東能代に到着。ごろんとシートを利用した東京からの6名は、大阪から特急“日本海”利用の岡崎さんと合流。ワゴンタイプと普通車のレンタカー2台に分乗して8時半スタート。途中朝飯タイムをとり10:10二つ森登山口に到着。二つ森の登山道は整備されており、家族連れも散策している。
11:00二つ森山頂(1086m)到着。良い天気に恵まれ、白神山地を南から展望。世界自然遺産になったので、山頂の木の伐採が禁じられているとの事で、回りの景色は見にくい。岩木山がほんのうっすらと姿をみせていた。
二つ森登山口にて 二つ森から白神岳を望む
11:55登山口に戻り、十二湖、日本キャニヨンに向かう。名前からはちょっと物足りない日本キャニヨンを遠くから眺めて十二湖めぐりへ。日暮の池から気軽に歩き始め、八光の池などではモリアオガエルの卵が沢山産みつけられている珍しい風景がみられた。渡り鳥のアカショウビンがいるとのことで、冨士さんが色めき立ったが残念ながらどこかへ飛び去った後のようであった。エメラルドグリーンの沸壺(わきつぼ)の池、コバルトブルーの青池と透明度の高い美しい池が印象的であった。全部で33個の湖があるとのこと、鶏頭場(けとば)の池、がま池、落口の池、中の池、越口の池などいろいろな池がどんどん現れ、そこそこ時間が掛った。
今日の宿泊所の、森山荘に17:00過ぎに到着。白神岳への登山客の宿として良く使われているようで、海岸に面した旅館で、部屋から海と山がながめられた。
日本キャニオン 八光の池

沸壷の池にて 青池

2日目; 6月21日(日)  白神岳登山

 6:30宿を車にて出発。雨が心配されたが、何とか持ちそうな様子。6:50白神山登山口駐車場着。7:07登り始める。道は整備されており歩きやすい。森山荘で同宿した関西の9名の団体の前を歩くが、後ろの話し声が大きく落ち着かない。7:46二股コースとの分岐を左に取り進むが、赤松の多い林が現れたり、それを過ぎると両側にブナやハリギリ等樹木の密生した林が現れたりで植生はいろいろ変化している。時々、樹木の名前が書かれているが、なかなか頭に残らない。9:12 マテ山分岐を経て登っていくと、ブナの林を抜けて、日本海が見え、上を見ると白神岳の尾根の建物が見えてきた。
10:48大峰分岐に到着。この辺りから高山植物が現れ、なかでもなかなか見られることの出来ないと言われているシラネアオイがあちこちに群生しており、その他ツバメノオモト、ハクサンフウロ等も顔を見せた。なだらかな登りを行くと立派な建物が出現。少し先にある避難小屋よりずっと立派なトイレであった。ほぼコースタイム通り登り、11:15白神岳山頂(1,232m)に到着。山頂には、何組かの団体がいて結構賑やか。予想した以上に良い天候に感謝。

白神岳への登り 大峰分岐から向白神岳を望む

シラネアオイ 白神岳にて
 1時間、昼食と山頂からの眺めを味わった後、12:15下山開始。下りは静かでひたすら下る。12:37大峰分岐、14:00マテ山分岐、最後の水場で美味しい水をお腹とボトルに詰めて、15:05二股分岐を経て15:47登山口着。今日の宿泊所の汐が島荘に16:30着。当然ながらビールで乾杯。
汐が島荘は漁師の民宿とのことで期待をしていたが、出てきた料理を見てびっくり。竹辺さんの写真を見て頂きたいが、刺身(これがまた大きい)はマグロ2種、飛び魚、アジ、ひらめ、もう1種、ウニ、マグロの珍味(メフン、胃袋)、自家製のはたはたのへしこ、アジの塩焼き、さざえの壺焼、黒藻(ヒジキに似た海藻)、ふぐの鍋などでもう食べきれない状態。食事の途中で、宿の主人が夕日を見に車で案内してくれた。残念ながら夕日は見えなかったが、美しい海岸を楽しんだ。海の幸を楽しみたい人はこの宿のご利用を是非。
白神岳頂上付近は花が多い 汐ヶ島の食事は盛りだくさん

3日目; 6月22日(月)  天狗岳登山

 県道白神ラインは、天狗峠と赤石川分岐との間で道路工事を行うため、6月22日から7月10日まで土日以外は通行止めとなるとのことであり、天狗岳に登るには時間的に困難であるとの問題が生じていた。 しかし、「今日は初日であり、工事開始までに、工事現場を車で通り越して、向こう側に駐車しておけば、時間の節減が出来る」との竹辺さんのすばらしい提案があり、この案にそって行動することとした。
 5:30 朝と昼の2食分の弁当を持って汐が島荘を車で出発。ほとんど舗装されていない白神ラインを揺られながら6:45天狗峠到着。 天狗峠と赤石川源流までの距離は約5km、高度差500mであり、工事現場がどこにあるのかがポイントであった。天狗峠の工事通知看板には、工事現場は2km先と記されていたが、車1台で偵察に出かけ、まだ工事現場は通過出来ること、工事現場の少し先に車2台置ける場所があること、そこから天狗峠まで戻るには登り道で結構厳しいが、何とかなる距離とのことから、この案を実行することとした。竹辺さん、三宅さんにレンタカーを工事現場先まで移送し、帰りは歩いて戻ってもらうこととし、7:10出発。その少し後、7:35に天狗峠を工事用の重機を乗せた大型トラックが通過。 予想以上に早い工事着工であったが、無事対応できて一安心。7:57予想していたよりもずっと早く、竹辺さん、三宅さんが戻る。ご苦労様でした。

白神ラインから天狗岳(わずかに見える)を望む ブナの森を行く
天狗岳から望む核心地域の展望
休憩 このルートで最大のブナ
朝飯を詰め込んで、8:10天狗峠を出発し、天狗岳に向かう。白神岳とは違いこちらの道は、あまり整備されていず、両側がえぐれたやせ尾根の部分が多い。2か所ほどガレ場があったがそれほど危ないところはない。心配された天候は回復しており、ガレ場から岩木山の独特な姿が眺められた。道標は500m毎に整備されているが、道は整備されていないところが多く、ところどころ笹を掻き分けながら進む。しばらく進むうちに、緑色の古い動物の糞らしきものが道の上に現われてきた。たけのこや笹を食べた熊の糞とのことで、ほんの身近な所に熊が出没しているのが感じられた。また、熊の存在は、道標につけられたなまなましい傷跡からも実感した。人工物に対する敵意が感じられ所業である。尾根伝いに大きなブナが散在する林の中をたどり、11:20天狗岳頂上(958m)に到着。天狗岳頂上直下は自然遺産の核心部に入る部分であり、天狗岳は世界自然遺産のほぼ中心であり、向白神岳、赤石川源流の山と谷全体を見渡すことができた。昼食後、11:53 天狗岳山頂を出発し、14:53 天狗峠に到着。コースタイム3時間。

 天狗峠から白神ラインを工事現場先の車までロード。工事現場は道路脇の崖を崩して道路一面に新しい土が山ほど引きつめられており、車の通過は全く不可の状態。歩いて通り抜けたい旨告げると、ショベルでひとなでし、通路を造ってくれた。感謝、感謝。無事車までたどり着き、白神ラインをまた揺られて17:00頃宿泊所のアクアグリーンビレッジに着。 西野さん、小松崎さんが弘前まで、根深さんを迎えに出発。18:30頃根深さんも合流。根深さんの多岐にわたる話題を肴に、夕食とその後のヒュッテでの懇談で、ウィスキーなどお酒は見る見るうちになくなって夜が深まった。
白神ラインの工事 根深さんを交えて

4日目; 6月23日(火)  暗門の滝

 今日は朝早くから本格的な雨。これまでの行程でも雨を覚悟していたが、幸いなことに降られずに来ていたがここにきて出会ってしまったとの感じ。根深さんの案内で、昔(1783年2月との説)、菅江真澄が暗門の滝を訪ねた足跡である山の中のルートを辿る予定にしていたが、この雨ではちょっと無理とのことで予定を変更。 暗門の滝を巡り、後はブナの巨木のマザーツリーやクロクマの滝見物を行うこととした。残念と思った人も、ちょっと安心と言う人もいたかも知れないが、朝食後小雨の中を、暗門の滝に向かって出発。
このルートは、白神山地のメインルートで、平日にも拘わらず多くの人が訪れていた。渓流沿いの平坦な道を進む。この辺りにも早朝には熊が顔を出しているようで、熊が右側の急坂を駆け登った様な後がいくつか見られた。最初に滝壺の広い第3の滝(落差26m)が現れる。 第3の滝の右側を滝の上まで登り進むと、 一直線に落ちる第2の滝(37m)に出る。 この滝も右側を登りトンネルを抜けると、最大規模の第1の滝(42m)に出る。しぶきが爽やか。この3つの滝を併せた暗門の滝は、なかなか見事なものである。

暗門の入り口 第三の滝

第二の滝 第一の滝
 アクアグリーンビレッジで昼食を取った後、今日の宿泊所の熊の湯に向けて車で出発。途中あちこち寄っていくこととし、先ずは、津軽峠の近くにある、どっしり構えたブナの巨木「マザーツリー」を観察。樹齢約400年、幹回り465cm、直径148cm。しかし、太さは白神山地の中の第3番目とのこと。それでは一番太いブナの巨木はどこにと言うことになるが、赤石川沿いにしばらく走っていると、あれですよと根深さんが教えてくれた。こちらは、くろくまのブナと呼ばれており、山の中にでんと座っており、ワイルド。幹回り5.40mとのこと。近くには行きにくいので、車道から写真を撮影。 次はくろくまの滝。滝入口から15分そぞろ歩くと、滝が出現。高さ85m、幅15mと形の良い見事な滝。気持ちが洗われる。日本酒を仕入れてから熊の湯へ。熊の湯は猟師の宿であり、山菜づくしの料理に舌鼓をうつ。今も熊の猟をしている、宿の主人の吉川さんにも加わってもらい、日本酒を楽しみながら四方山話を聞かせてもらう。熊に襲われた時に、咄嗟に拳を熊の喉の奥まで突っ込んで難を逃れた話や、熊撃ちの失敗談など盛り沢山。根深さんもお酒が好きで、ぐいぐい飲んで、あれやこれや。今日もついつい飲みすぎて、ぐっすり就寝。
渓谷に沿って マザーツリー

クロクマの滝 酔っ払い二人

5日目; 6月24日(水)   奥赤石川源流、くまげらの森探策

 今日はこれまでの中で、最も天気が良く、青空がみえる。朝食後、7:40出発。車で、昨日通った赤石川に沿った道を白神ラインまで戻り、赤石川源流へ通じる林道入口ゲートに8:15到着。津軽森林管理署の許可を得て、 津軽白神森林環境保全ふれあいセンターから借用した鍵で、ゲートを開けて林道に入る。この林道を車で進むのはこれは大変。道路の中央は盛り上がり、道の周りからは木が覆いかぶさり、右に揺れ、左に揺れて「運転手さんご苦労様です」との感謝の気持ちで一杯になる。この道に比べると、昨日走った未舗装の白神ラインは舗装道路の感じ。9:15頃、13kmほど進んで林道終点に着く。ここは、日本山岳会が50周年記念植樹を行った場所で、記念碑が立っている。
13:30頃までに、この場所に戻ってくる予定で、クマゲラの森、赤石川源流に向けて出発。根深さんの案内で、あまり整備されていない、静かな山道を櫛石山まで登り、鉈目が付けられたブナの木があちこちに現れるのを見ながら進む。 この辺りも、熊が通るようで、美味しいところだけ齧ったタケや笹の固い部分がそろえて捨てられている光景は奇妙なものであった。10:30頃、ここから世界自然遺産の核心部になるとの表示が現れた。これまでは、白神岳、天狗岳と核心部の端っこをかすめてきたが、やっと核心部に入ることとなる。核心部に入っても同じような林が続き、所々道が判りにくいところがあるが、根深さんは着実に歩を進める。 やや平たいブナの林がクマゲラの森であった。静かなたたずまいの中に、クマゲラの古い巣の穴がいくつか見られるが、クマゲラの姿はなし。もうこの場所に戻ってくるのは期待できないようだ。11:15頃、赤石川源流まで行くのは時間的に難しいことから、クマゲラの森のそばの水場で昼食を取る。ここで、巡視員として巡回している熊の湯の主人の吉川さんと出会う。

熊の湯にて 途中天狗岳方面をのぞむ

ここから核心地域 クマゲラの森付近で

クマゲラの巣穴(今は使われていない) 古い鉈目のある木
 帰路は順調に進み、13:30頃林道終点着。14:30頃林道ゲートに到着。この林道をこのタイプのレンタカーで入るのはちょっと厳しいものがあったようだ。ゲートの鍵を熊の湯に返却する必要があるため、1台は鰺ヶ沢回りで弘前へ、1台は直接弘前へ向かうため、赤石川分岐で別れた。

竹辺写真アルバム