北アルプス 赤牛岳縦走

北アルプス 赤牛岳縦走


Twitterでつぶやく

日程 2010年7月27日〜31日
メンバー 辻川(6期)金子(7期)大坪(7期)小松崎(13期)大寄(25期) 江成(小松崎友人) 
報告文 小松崎
昨年8月に、堀井さんの上京を機に銀座の「銭形」でOB会有志が集まった。立山から薬師岳への縦走から帰ってきたその足で参加した私が五色ヶ原から見た赤牛岳を話題にしたところ何人かの方が来年登ってもよいと賛同して下さったことがこの山行の発端である。
 今年5月にまた「銭形」で集まった時に、堀井さんより、後立山から縦走してくるので7月29日水晶小屋集合なら都合がよいと提案をいただいた。そこで各自好きな登山口から入り、7月29日に水晶小屋に集合し、そこから一緒に赤牛岳縦走をして読売新道を下るという計画が具体化した。結局、堀井さん以外では、大寄さんが上高地から槍ヶ岳経由で入山するという他は5名は新穂高からの入山となった。
 この記録は主にその5名の山行に基づいている。

7月27日(火)晴 新穂高温泉―わさび平小屋 4.3Km 1時間16分

関東からの大寄さんを除く4名は新宿を高速バスで9時に出発、平湯で路線バスに乗り換え、入山口である新穂高温泉に14:15到着。出発前から暑い日が続き、体調も心配ではあったがこの日はコースタイム1時間20分、高度差約300mの行程のわさび平小屋で宿泊なので高度順応と休息もでき、気が楽であった。ゆっくりと準備を整え、ゆるい登りの林道をのんびりと歩き、わさび平小屋に16:25に到着。関係者は林道を車で通行できるためであろう、山小屋にはめずらしくびんビールがあり、それでまずは入山の乾杯。
 広島から参加の大坪さんは5時半に到着、うまく夕食に間に合った。5名で一部屋、ふとん1枚をひとりでゆっくり使えて、お風呂で汗も流し、快適な初日を過ごせた。

7月28日(水)晴 夕方より雨 わさび平―鏡平―双六小屋泊 6.2Km 8時間

 本日の行程は標高2600mの双六小屋まで高度差約1200m、標準コースタイム6時間20分で登りのヤマ場となる日である。辻川さんをトップに小池新道を歩く。雪渓がかなり下からあらわれて、秩父沢との交差では水場もあり、さっそく、持参した砂糖入り粉末抹茶と練乳をかけてかき氷にして食べた。大気のごみがはいっていて清潔ではないだろうが暑い中、疲れがいやされる。
 高山植物もキヌガサソウ、ミヤマキンポウゲ、クルマユリなど、7月に他のエリア(恵那山、高妻山)で見た花とはちがう花がいろいろ咲いていた。
 休憩をとりながら、まずまずのペースで鏡平小屋(2289m)に10:25着。本来ここからは穂高連峰の大キレットはじめ、迫力ある稜線が望めるはずなのだが、あいにく上部は厚い雲におおわれていて見えず残念。22年前に黒部五郎、三俣蓮華を経て下ってきた時にはまるで絵葉書のような風景が展開していて、鏡池にも逆さの風景が映し出されていたことが記憶によみがえる。 ここで昼食とし、その後、高度差約300mをひとふんばりして登り、12:10弓折乗越着。穂高連峰上部は相変わらず雲に隠れているが西鎌尾根や双六岳の展望がひろがっている。ここまでくれば双六小屋まではお花畑の楽しい稜線歩きである。時間的にも余裕があるので雄大な風景を眺めながらこの日2回目の雪渓かき氷タイムとなる。 双六小屋への途中で雲が切れ、槍ヶ岳の穂先まで見ることができ一同歓声をあげる。
 14:10 双六小屋着。この日も5人で一部屋をもらえた。外で生ビールを楽しむが雨が降ってきて中にはいる。そこで、上高地から槍ヶ岳―西鎌尾根を歩いてきた大寄さんが現れた。当初の予定では、翌日水晶小屋で合流となっていたが、翌日の行程もきついので、がんばって11時間歩いてこの日のうちに双六小屋に着いたそうだ。 翌日は風雨が強かったのでこの日にがんばってよかった。夜中、時折気がつくと風雨の音が強かった。






7月29日(木)雨、風  双六小屋―三俣蓮華岳―三俣山荘―黒部源流―水晶小屋
             (別チームは三俣山荘―鷲羽岳―水晶小屋)7.8Km 7時間30分

 6:30 双六小屋出発。本日は水晶小屋で堀井さんと合流予定の日ではあるがあいにく天候は雨。風も強いので双六岳の頂上は通らず中道ルートを歩き、8:40三俣蓮華岳頂上着。晴れていれば360度の展望が得られ、鷲場岳の迫力ある山容はもちろん、予定の水晶岳から赤牛岳への稜線も見渡せるはずであった。雨の中、およそ雰囲気が違い、頂上が平らなこともあり、最初ここが三俣蓮華岳山頂とは気がつかなかった。辻川さんを先頭に大坪さん、金子さんはどんどん歩を進め三俣山荘に9:35に着くが、私のペースに合わせてくれたあとの二人とともにかなり遅れて三俣山荘に着いた。相当風雨が強く、雨の中、外で食事をとるのは大変なので少し早いがここの喫茶室で飲み物を注文し、昼食の弁当を食べることにした。ここから水晶小屋まで鷲羽岳頂上を通るコースと黒部源流を通るコースと3名ずつ分れることになった。先の3名は早々と用意して鷲羽コースに出かけた。私のゆっくりチームは山荘のトイレを借りるのに靴を脱いだり、20分ほど出発するのが遅くなったが、その時気づいたら「鷲羽岳ルートは本日稜線上風が強いので危険、黒部源流コースを行くように」との注意書があったが先輩たち3名はもうはるか上を登っているのが見えた。
 黒部源流まで100mほど下ることになるが登山道は半ば沢のように水が流れていた。 岩苔乗越まで黒部源流の沢沿いに、晴れていたらなかなかよさそうなところであったが、雨の中300mの高度差を登るのはけっこうくたびれた。このあと、翌日泊まる予定の奥黒部ヒュッテまでは水場はないので乗越の手前で水2Lを補給した。大寄さんは4L持ったそうだ。コースタイムより相当時間をくい、ワリモ北分岐には13:25着。ここから水晶小屋までは本来そんなに厳しいところではないが、風雨が強く、何度か耐風姿勢をとり、水晶小屋には14:20着だった。 危険と警告の出ていたコースを行った先輩チームは、風が強くて寒くて止まっておられず急いで歩き、鷲羽岳頂上着11:30、水晶小屋には13:00と標準コースタイムより早く着いたそうである。だが、ここで合流するはずで、予定なら先に着いているはずの堀井さんがいないので心配した。後でご本人から聞いたところによると25日に扇沢を出て烏帽子小屋まで4泊、予定通り順調に進んでいたそうであるがこの日の風雨で、それまでの疲れと気持ちが薙いだせいか水晶小屋の手前、野口五郎小屋で歩を止め、宿泊と決めたそうである。
 小さな水晶小屋での混雑は覚悟はしていたが定員40名のところ、この日は60名で、雨で着衣、装備がずぶ濡れだったこともあり、相当な居心地悪さであった。割り当てられたスペースでの飲食は禁じられていたし、混みあっていたのでアルコールを飲む雰囲気ではなかった。予定ではここでメンバーが合流し、乾杯をするはずであった。



7月30日(金) 霧、曇り、後時々晴れ 水晶小屋―水晶岳―赤牛岳―奥黒部ヒュッテ 12.3Km 11時間42分

水晶小屋を6時出発。ガスってはいるが幸い雨は降っていない。水晶岳までは比較的広い稜線、水晶岳6:55着。水晶岳はまたは黒岳とも呼ばれ、頂上付近は岩が黒っぽい。ここも雲の平はじめ360度の展望が得られるところだがガスで回りは見えず、記念写真のみ。
 そこから赤牛岳まではゴロゴロとした岩の稜線歩きで、途中ガスの切れ間に裏銀座の稜線や赤牛岳に続く赤い地肌の尾根が見渡せた。いかにも赤牛という名前のような雰囲気がする。今日のコースは迷いやすいところもあるので、ペースの遅い私が2番手につき、パーティが離れないようにして慎重にゆっくり歩いていたので地図のコースタイムよりかなり時間がかかり赤牛岳に着いたのは11:10だった。昨年、立山の五色ヶ原から、北アルプスのど真ん中に聳える立派な山容をみて縦走することを思い立った山がこの山だと感慨深かった。それと干支が丑の私の60歳の還暦祝い登山でもある。大寄さんが運んでくれたパイナップルの大缶二缶を開けてみなで登頂を祝った。重いのに大寄さんありがとう。あとは長くて大変との評判の読売新道を奥黒部ヒュッテまで下る行程である。最初は赤っぽい岩場を下り、下に稜線が見はらせ明るいムードである。途中8分の7とか、東沢との出会いまでの割合を示す標識が出てきて大体の位置がわかる。黒部ダムがはるかかなたに見える。8分の3の標識のあと森林限界の下にはいり、噂にたがわない長い道のりを経て5:40奥黒部ヒュッテに到着。予約していたとはいえ、遅い到着に嫌な顔も見せず、おいしい夕食を用意していただき、お風呂にも入れて、ゆっくりした部屋に泊まれて、やっとたどりついた秘境、奥黒部での桃源郷のようでした。ここでの夕食の時に、読売新道で後から追い付いてきたパーティの人たちとの会話で、野口五郎小屋で堀井さん(とおぼしき人)と同宿だったことがわかり、所在がはっきりとしたことで一同安心した。






7月31日(土)晴 奥黒部ヒュッテー平の渡―黒部ダム 14.6Km 8時間43分

この日のコースは地図で見ると一見平坦で、気楽に歩けるような錯覚をおこすがそうでないことは実際に歩いた経験者より聞いている。登山道の状況を出発前に小屋(電話は室堂山荘)に確認したところ、「まあ、読売新道はだいじょうぶです。奥黒部ヒュッテからの道は・・・」と歯切れが悪かったが橋が流されたり、通れないという状況ではないことを確認していた。  昭文社の地図にも「上下の激しい梯子多数、転落要注意」と出ている。なるほど、かなり高低差のある丸木の梯子がいくつもいくつも出てくる。黒部湖へとそそぐ黒部川ははるか下に見え、登山道は狭くてうっかりすると足を踏み外しそうである。9.55ようやく平の渡しの船着き場に到着。乗り場となる水面までまた長い梯子をおりる。
 船は関電の委託をうけて平の小屋の若主人が操縦しているそうだ。対岸に渡り、また長い梯子と階段で縦走路まで上がる。ここからまた黒部湖に沿って、梯子の上下の多い登山道がえんえんと続く。これだけ歩いても高度計は1500Mからほとんど変わらない。
 14時ごろはるかかなたに黒部ダムが見えてきたが16:00にようやく黒部ダムにたどりつき4泊5日の長かった赤牛岳縦走山行も終わりとなった。黒部ダムの堰堤の歩道を歩いている時、はるかかなたに赤牛岳が望めた。





心肺力があまり強くなく、また、膝も悪いので牛歩のごとくのペースで、コースタイムよりもかなり時間がかかったが、何とかばてずに赤牛岳縦走をこなすことができて充実感を味わっています。私のペースに合わせて一緒に歩いて下さり、楽しい山行をさせていただきました。みなさまありがとうございました。
小松崎 記

辻川写真集
大坪写真集