福本武久の著書 

織   匠

筑摩書房
1981年5月26日刊行
定 価 (上)1300円 (下)1400円
0093-80210-4604
判型B6/(上)242P  (下)322P
長編歴史小説
 周知のように御一新と呼ばれた明治維新は、日本のさまざまな分野に予想外の近代化の激震をもたらした。この作品『織匠』は京都の西陣を襲った時代の嵐を数人の織匠を中心に描いた、西陣から見た明治維新小説である。
 西陣が体質を近代的に改めるまでに三〇年もの歳月が必要であった。その陰に多くの先覚者のドラマがあったのだ。それを一千枚におよぶ大長編に仕立てたのが、この書き下ろし作品である。(松本鶴雄「サンケイ新聞」書評より)
 太いたて糸に実に多くの緯糸がからまり、様々な模様を織りなしている点に、この小説の成功があると思った。その模様をごく観念的な言葉で言いあらわすなら、東京遷都によって時代から置き去りにされた京都人の焦りとか、文明開化の世への人間の対処の仕方の数々、織屋の組織や取引の変容、景気の浮沈、あるいは統治者たちの間での藩閥の争い、主人公の留学時を中心にした東西文明の比較といったモティーフである。そうしたモティーフを一杯にはらみながら、人間一人の運命をはるかに越えた明治三〇年の流れを描ききった作者の力倆は見事なものである(松本道介 「読書人」書評より)
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