福本武久の著書

小説・新島八重 勇婦、最後の祈り 




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筑摩書房
2012年11月21日刊行
定 価 (本体価格1600円+税)
ISBN4-480-80445-7  C0093
判型A四六/240ページ
小説

 数えで八八歳まで生きた新島八重はいくつもの顔をもっています。「さむらいレディー」というべき会津若松時代は、洋式銃砲という近代兵器に眼をむけていたという一点で先駆的でした。新島襄とともに暮らしたクリスチャンレディーの時代は英語を学び,聖書を学び、文字通り近代女性として颯爽と駈けぬけました。
 先に刊行した『小説・新島八重 おんなの戦い』『小説・新島八重一新島襄とその妻』』は、そういう時代を描いており、それぞれ自立した作品世界をなしています。本書『小説・新島八重 勇婦、最後の祈り』は、それら連作のフィナーレをなす作品です。
 新島襄亡き後の八重は社会活動に身を投じ、たとえば日清・日露戦争では篤志看護婦として従軍、看護は女性にふさわしい職業であり、女といえども国家に役立つことをみずから実証して見せました。晩年は当時としては珍しい女流茶道家として、女性の茶道人口拡大に力をつくしながら、終生にわたり新島襄の、会津戦争の語り部をつとめています。八重はこのように、つねに時代の最先端を歩んでいます。
 女が人間としてみとめられなかった時代にあって、良人を亡くし、独り身となった八重が、どのような思いで社会に関わり、時代をこじあけようとしていたのか。孤独な闘いに挑んだ八重、作品世界に登場する彼女の半生がそれにこたえてくれています。

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