97 千葉国際駅伝
【 JAPANのユニフォームと感動の走り ! 】
現在、日本で開催される国際駅伝は「千葉国際駅伝」と「横浜国際女子駅伝」、 ともに距離はマラソンと同じ49.145キロである。駅伝というよりもリレーマラソ ンといったほうがふさわしい。 11月23日に開催された「千葉国際」には、今年も男子19カ国、女子15 カ国が参加した。いったい<千葉国際>というのは、どういうレースに位置づけ られているのだろうか。テレビ(フジテレビが実況)では、さかんに「今年の駅 伝世界一を決めるレース」なのだとはやした立てているが、参加各国の思惑との あいだには、かなり温度差があるようである。 世界一をきめる大会にわりに、チーム構成をみると参加各国とも、あまり力が はいっていない。とくに近年はベストメンバーで優勝をねらってくる国は、ほと んど見あたらない。長距離で実績のある選手も散見されるが、体調のベストをこ の大会に合わせてきたとは思えないケースが多い。主催者の狙いとは裏腹に、い わゆる「国際親善駅伝」の色彩が濃厚になってきているようである。 ホスト国である日本も外国勢と歩調を合わせたというわけでもないだろうが、 今年は男女ともにベストとはほど遠いオーダーであった。理由はいかにあれ、 <JAPAN>のユニフォームを着るのは、現時点での最強の選手たちであって ほしい。それは駅伝ファンとしては当然の希いというものではないだろうか。 トップ選手たちが大会に顔を出さなくなったのは、国内の駅伝スケジュールが 過密になったせいだろう。国際親善のレースなんかに大事な選手を出せない…… という企業の論理が透けてみえてくるのである。長距離の選手たちに「走る広告 塔」としての役割しかもとめないならば、良くも悪くもテレビを通じて育ってき た駅伝ファンは、やがてソッポを向いてしまうだろうと思う。 今年のJAPANのメンバーでトップ選手といえば、男子では強いていえば花 田、女子では両高橋ぐらいなものである。あとはいずれも発展途上の選手たちば かりであった。とくに女子の場合、昨年のドリームチームにくらべて落差がおお きかった。最初はこれで6連覇などできるわけがないと思った。 男子はケニアが強すぎた。日本の2位はむしろ大健闘の部類だろう。女子も終 わってみればぶっちぎりの6連覇、<意外>と<当然>が明滅する結果となった。 6人のうち4人までが区間賞をとるという圧勝ぶりには驚嘆した。高橋千恵美、 高橋尚子の世界選手権組をのぞいて、あとの4人はどこにでもいる選手たちであ る。それくらいの選手ならば、現在の女子長距離界には数えきれないほどいる。 いままで目立たなかった選手たち、いずれも自己ベストをマークした走りは実 にみごとだった。区間賞こそとれなかったが、一区の上岡の走りが光る。あの粘 りのある走りはやはり父親(かつてマラソン・ランナーで優勝経験もある)ゆず りのものだろう。彼女が6連覇への伏線をつくったといってもいい。差のない3 位で彼女がタスキをつなぎ、二区の田中は一時、トップに肉薄するという積極性 をみせる。それが優勝への「流れ」をつくったのである。 感動の走り……。現役のランナーはもちろん駅伝ファンまでもが思わずうなる ような走りをみせる。それがJAPANのユニフォームを着る選手たちの使命で はないかと思う。今大会で圧巻だったのは高橋千恵美である。高校時代から彼女 の走りは2拍子だった。セカセカとまるで息がつまるようなあわただしさが特徴 であった。ところが、今大会は3拍子になっている。いつのまにか3拍子の緩や かで柔軟な走りに変貌していたのである。やはり世界選手権に出場した成果だろ うか。いまではすっかり大人のランナーに成長している。彼女はトップと僅差で タスキを受けてもあわてなかった。むしろ最初は相手を先に行かせておいて、中 盤からじりじりと差を詰めた。余裕をもって後半でとらえる作戦でトップに立つ と、あとは独走態勢をかためるだけだった。高橋千恵美の一皮むけた走りが今回 のみどころだった。 両高橋はもとより他の2選手も快走した。けれどが、千葉国際の結果をもって、 日本の女子長距離は選手層が厚くなったというのは短絡的すぎる。たしかに日本 選手はベストに近い走りをしたが、相手も弱すぎたのである。最大のライバルで ある中国の主力選手たちは、「全国運動会」の直後で、ほとんど「燃え滓」、ほ かのヨーロッパ、アフリカ勢にしても、勝ちにきていなかったのである。6連覇 はほめられる。だが、今大会に関するかぎり、結果的には勝ってあたりまえのレ ースだったというみかたもできる。 |
1 | ケニア | 1:59:16 |
2 | 日本 | 2:00:55 |
3 | 豪州 | 2:01:21 |
4 | 南アフリカ | 2:01:59 |
5 | ニュージーランド | 2:02:07 |
6 | スペイン | 2:02:30 |
7 | ブラジル | 2:05:07 |
8 | 英国 | 2:05:09 |
9 | フィンランド | 2:05:09 |
10 | モロッコ | 2:05:24 |
区間優勝者
1 | 10キロ | エメルソン・ベン(ブラジル) | 27:59 |
2 | 5キロ | フィリップ・モシマ(ケニア) | 13:26 |
3 | 10キロ | モハメド゙・リアド゙(モロッコ) | 28:49 |
4 | 5キロ | ジャフェット・コスゲイ(ケニア) | 13:42 |
5 | 12.195 | ジョン・グアコ(ケニア) | 34:55 |
総合成績(女子)
1 | 日本 | 2:14:05 |
2 | 中国 | 2:17:20 |
3 | ルーマニア | 2:18:13 |
4 | エチオピア | 2:19:09 |
5 | ロシア | 2:19:51 |
6 | 千葉選抜 | 2:20:31 |
7 | 豪州 | 2:21:17 |
8 | ケニア | 2:22:26 |
9 | 米国 | 2:23:05 |
10 | ポーランド | 2:23:16 |
1 | 10キロ | 王明霞(中国) | 31:12 |
2 | 5 | ケイト・アンダーソン(豪州) | 15:21 |
3 | 10 | 高橋千恵美(日本ケミコン) | 31:54 |
4 | 5 | 大南敬美(東海銀行) | 15:54 |
5 | 5.195 | 松岡理恵(天満屋) | 16:52 |
6 | 7 | 高橋尚子(積水化学) | 22:20 |
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