97〜98 駅 伝 時 評

3th 全国都道府県対抗男子駅伝
【 見どころは、中学、高校生たちの激走だ! 】

 都道府県対抗形式の「ひろしま男子駅伝」は今年で3回目である。同じ都道府
県対抗駅伝でも京都でおこなわれる女子にくらべて、どことなく影が薄いのはど
ういうわけだろうか。ただ歴史がちがうというだけではない。過去の2回をみる
かぎり、大会そのものの狙いが、明確になっていないせいだろうと思う。だから
何をポイントに観たらいいのか、よくわからない。そういうある種のとまどいが、
大会そのものの印象すらも希薄にしてしまっていた。

 第3回の本大会(1/18)を観て、ようやくこの大会の位置づけがはっきりとみ
えてきたように思う。「ひろしま男子駅伝」は、発展途上の若いランナーたちの
檜舞台であると言いきってもいいだろう。区間の構成をみても、中学生の区間が
二つ、高校生の区間が三つ……。7区間のうち5区間までが中・高校生で占めら
れている。

 中学、高校ともに全国規模の都道府県対抗の駅伝大会がある。本大会にもそれ
らの代表選手たちの多くがやってきたが、府県代表になれなかった学校にも、力
のあるランナーたちはたくさんいる。かれらにも全国規模の大会に出場できるチ
ャンスを与えたい。それが本大会は隠れた存在理由ではあるまいか。

 たとえば1区の区間賞をもぎとった長野の佐藤清治のダイナミックな走り、4
区での揖斐祐治(岐阜)と杉山智基(佐賀)の息づまる競り合いなどは、本大会な
らばこそのみどころだった。とくに今回は実業団の選手たちが、今ひとつピリッ
としなかった。年ごとに駅伝スケジュールが過密になるなかで、この時期になる
と、実業団の有力選手たちはヨレヨレになっている。それでけに中学生、高校生、
大学生の一部選手たちの熱気がきわだった大会だったように思う。

 女子の京都駅伝では埼玉が「オール埼玉栄」で勝ったが、男子のひろしま駅伝
は福岡が「オール大牟田」で勝った。現役3人に「ふるさと選手」の二人を加え
れば大牟田高勢は5人になるからである。福岡の優勝はまず順当なところだろう。
福岡と地元の広島がはげしくトップを争い、それを兵庫あたりが追いかける……
というのが予想された展開だったが、福岡は下馬評以上にに強かった。

 優勝した福岡と2位の広島、明暗をわけたのは中学・高校生のデキのちがいだ
ったと思う。過去2回の大会はともにアンカーの実業団選手が力でねじふせたた
が、今大会は中学・高校生が勝負をきめた。福岡は1区の高校生・小池(区間5
位)が最後の競り合いで転倒するという思いがけないアクシデント、だが2区の
中学生・古賀孝志(区間賞)がリズムにのった走りで5位から一気にトップに立
って、かれが福岡優勝への道すじをつくった。3区の実業団選手・礒松大輔(区
間9位)はむしろつなぎ役だった。4区の池田圭介、5区の野村佳史の大牟田高
勢二人で45秒という大差をつけて、この時点でほぼ優勝をきめてしまったので
ある。

 広島は1区の徳本一善が2位と好位置につけたが、3区の内富恭則(区間12
位)が思ったほどのびず、さらに4区(区間19位)、5区(区間14位)のデ
キが悪すぎた。それが最大の敗因だろう。さらに6区では10位まで落ち、アン
カーにタスキが渡ったときには、トップ福岡と2分あまりの大差がついていた。
最後は2位まで追いあげたエース国近友昭の走りはさすがと思わせるものがあっ
たが、優勝候補の面目を保つのが精一杯というありさまだった。

 埼玉の3位は大健闘である。高校生区間の4〜5区で小林秀行、堀口貴史がと
もに区間3位と健闘、アンカーは箱根駅伝でも快走した佐藤裕之(駒澤)が区間
4位と粘走。やはり高校生と大学生が上位進出の原動力となった。高校生の活躍
といえば、暮れの高校駅伝を制した西脇工の3人をかかえる兵庫、計算できる高
校生たちの走りで6区までは、広島にかわって優勝争いを演じていた。けれども
アンカーの大川久之が精彩を欠き、区間40位ではどうしようもなかった。前回
優勝の京都も6区までは7位ぐらいにつけ、今年のメンバーからみて大健闘して
いたが、やはり一枚コマ不足だったようである。福岡が優勝した今年は全般的に
九州勢の活躍が目立った。優勝した福岡のほか、5位・大分、6位・佐賀、8位・
鹿児島、9位・熊本……と、ベストテンの5県もが名を連ねている。

 ひろしま駅伝は順位の変動がはげしいのが特徴である。過去2回の大会は、い
ずれも最終7区で大逆転があった。今回、トップ争いこそ比較的に平穏だったが、
最終区で8位入賞までの順位はめまぐるしく動いた。実業団の選手が担当するこ
の7区、距離が14.5キロもある。総距離47.0キロ(広島市西区の広島ス
タジアムをスタート、同市平和記念公園がゴール)の約3分の1を占めている。
それゆえに選手の力の差やコンディションの良し悪しが、はっきりと結果に反映
され、区間成績のうえで大差がついてしまうことが多い。

 だいたい最終区の14.5キロというのは長すぎるのではないか。さらにもう
ひとつ、3区(9.2キロ)を加えると、実業団選手が走る距離は約24キロ、
総距離の半分を上回っている。中学・高校生5人が走る距離を実業団選手2人で
走ってしまう。総距離からみても、最終7区の14.5キロというのは、バラン
スを欠いているように思えてならない。たとえば最長区間を10キロぐらいにし
て、実業団選手の走る約24キロを3区間ぐらいに分割すべきではないだろうか。
そうすればスピード感あふれ、一瞬として眼のはなせない駅伝になるだろうと思
う。(98/01/19)

総合成績
福 岡 2:18:15
広 島 2:19:06
埼 玉 2:19:16
長 野 2:19:19
大 分 2:19:33
佐 賀 2:19:37
岐 阜 2:19:40
鹿児島 2:20:07
熊 本 2:20:08
10 静 岡 2:20:15
11 山 口 2:20:42
12 宮 崎 2:20:44
13 愛 知 2:20:46
14 兵 庫 2:20:54
15 京 都 2:20:57


区間優勝者
1区 5.0キロ 佐藤清治(長野) 14:19
2区 3.0 古賀孝志(福岡)  8:45
3区 9.2 瀬戸智弘(山口) 26:23 
4区 7.3 杉山智基(佐賀) 21:13
5区 5.0 野村佳史(福岡) 14:39
6区 3.0 竹内賢弥(静岡)  8:58
7区 14,5 国近友昭(広島) 41:12
もどる