97〜98 駅 伝 時 評

プロローグ
【 駅 伝 時 評 子 の 口 上 ! 】

  駅伝に親しむようになってから、もう30年あまりにもなるだろう。箱根駅伝
はラジオ時代もふくめて、毎年欠かさず観(聴)戦してきた。ほかの駅伝は暇が
あれば図書館にゆき、スポーツ紙で結果をチェックしていた。

  昔、東京・大阪間駅伝というのがあった。現在の青東駅伝の全日本版である。
学生時代だった当時、京都に住んでいたが、選手が市内を通過する日は、かなら
ず烏丸通りで出迎えた。当時、駅伝はマイナーなスポーツで沿道にやってくる人
影はまばらだった。朝日新聞社の配布する小旗を振るのが、なんだか気恥ずかし
かった。

  東京・大阪間駅伝には実業団だけでなく大学生、高校生も出場できた。女子駅
伝でおなじみのワコールの藤田監督、京都産業大の伊東監督などは、京都チーム
中心選手だった。伊東監督はまだ高校生だったと思う。現在ともに京都にあって、
女子駅伝の強豪チームを引っ張っているのは奇遇というべきである。

  駅伝は現在、ビッグなスポーツである。主なレースのほとんどはテレビ放映さ
れる。駅伝を今日のようにビッグスポーツにしたのはテレビである。もともと駅
伝のテレビ放映は12月の高校駅伝しかなかったと記憶している。起爆剤となっ
たのは、女子駅伝の登場である。全国都道府県女子駅伝のテレビ放映は、たちま
ち駅伝を人気スポーツに押し上げてしまった。女子選手の走る姿の華やかさはス
ポーツ番組として、きわめて新鮮なものとして眼に映ったのである。

  駅伝のもつ本当の面白さを知らしめたのは、やはり箱根駅伝だろうと思う。箱
根は数ある駅伝のなかでも頂点にある。10区間で一人の受け持ちが20キロ以
上という駅伝はほかに類がない。ハードなレースである。それはテレビ放映によ
って、たちまちドラマになってしまった。

  テレビ実況による駅伝の面白さは何か。アガッてゆく……。つまり「上昇のイ
メージ」のもたらす興奮であはないかと思う。同じ長距離レースでもマラソンと
駅伝はちがう。マラソンは「落ちてゆく」イメージである。トップ集団から、ひ
とり、またひとりと落ちてゆくドラマである。駅伝は順位変動がめまぐるしい。
だからカメラは落ちてゆくさまよりも、下位から上昇してくるほうを追いもとめ
るのである。

  駅伝はライブにかぎる。ビデオでは観る気がしない。実況だからこそ迫真的な
ドラマ性が発揮される。10月10日、今年もまず出雲からはじまる。翌年の2
月まで、駅伝のある休日の予定はブランクにしてある。正月の3カ日も外出しな
い。元旦は全日本実業団駅伝、2〜3日は箱根駅伝があるからである。

  自称・駅伝評論家として、今年はテレビ観戦記を連ねてみたい。まずは10月
10日、出雲からである。
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