98〜99 駅 伝 時 評

10th 千葉国際駅伝
【 アベックでお祭り駅伝を制す! 】

 フジテレビによれば「今年の駅伝世界一」が決まるという千葉国際駅伝は、11
月23日に行われた。第10回にあたる今年は、男子18カ国19チーム、女子15カ国16
チームで争われた。(千葉総合運動場発着 42.195キロ 男子5区間、女子6区
間)

 今年からコースは一部変更されたようだが、前半は平坦だがカーブが多く、後
半はやたらアップダウンが多い。スピードとスタミナを要求されるという意味で、
なかなかおもしろいコースである。

 世界の長距離走者たちが、年にいちど本家・日本に集まる「駅伝フェスティバ
ル」……。あまり勝敗にこだわることなく友好第一で気楽に走る「お祭り駅伝大
会」、この大会は、いつのころからか、そういう意味あいを持つようになりつつ
ある。今年の日本のオーダーをみても、何をもくろんで代表に選んだのか、もう
ひとつはっきりしない。女子は1週間後に「全日本実業団女子」があるから、主
力は出てこない。片山にしても、小島にしても実業団各チームの当番制にのっと
って、しかたなく送り出されてきた感がある。

 日本女子は6連勝中だが、男子のほうはもう7年も優勝から見放されている。
エチオピア(今回は欠場)、ケニアやモロッコなどのアフリカ勢、オーストラリ
ア、二ジーランドなどスピードで勝負にくるチームに、これまでの日本の選手た
ちは、まったく太刀打ちできなかったのである。

 今年もオーダーをみた瞬間に、「これじゃ、勝てっこないな」と思い、男子の
部の中継はパスするつもりだった。1区、2区が奈良修、実井謙二郎、かれらの
スピードでは、まちがいなく置いてゆかれてしまう。アンカーの高橋健一は好調
だが、それまでに大勢は決しているだろうと思っていた。

 ところが、その奈良、実井の大東大コンビの走りが、8年ぶりの勝利への道筋
をひらいたのである。奈良は区間4位ながらトップとはわずか14秒遅れ、実井
も持ち前のしぶとさを発揮して2位まで押しあげた。さすがは駅伝のベテランら
しく、味のある走りをみせてくれた。

 学生代表ともいうべき三代直樹、中馬大輔の若手も踏ん張った。ニュージーラ
ンド、オーストラリアと激しくトップを争い、2秒差の2位でタスキはアンカー
の高橋健一につながったのである。オーストラリアのP.キャロル、ニージーラン
ドのR.ポッヅをあっさりと振りきった高橋の走りは終始安定していた。今回は全
員がそれぞれ持ち味を発揮、代表チームとしてみごとなまとまりであった。タス
キを高だかと頭上にかかげてゴールした高橋……。駅伝はタスキこそが主役なの
だと各国のランナーたちにアピールしているかのようにみえた。

 あらためてレースを振り返ると、駅伝経験の有無が勝敗の分かれ目になったよ
うに思われる。日本の選手たちは、いずれも駅伝のベテランたちである。だから
こそ区間賞をひとつも獲れなくても、総合力で優勝できたのである。外国選手た
ちは、この大会でしか駅伝を走る機会がないのでは……。タスキを受けたあと、
最初の入りで突っ込みすぎて、ほとんどが後半になって足にきていた。

 女子は危なげない7連勝である。昨年もそうだったが日本女子選手たちは、誰
が走ってもJAPANのユニフォームに恥じない走りをする。ブタもおだてりゃ
木に登る……というわけではないが、7連勝……と言われれば、その気になって
本当に実現してしまうのだから、勢いというものはコワい。

 男子とちがって、女子は力で相手をにじふせた。6区間のうち、2区の小崎ま
り(ノーリツ)、3区の片山弘美(NEC九州)、4区の藤川亜希(ラララ)、
5区の小島江美子が、それぞれ区間賞の快走ぶりである。終わってみれば2位の
中国に3分あまりの大差をつけていた。

 お祭り駅伝に勝っても、それほど自慢にもならないだろうが、負けるよりは勝
ったほうがいい。10回目の大会で奇しくも初めての男女アベック優勝、JAP
ANを背負って走った選手たちにとって、この大会が世界に眼を向けるきっかけ
になれば、お祭り駅伝もそれはそれで大きな意味をもつことになるだろう。

  ■男子日本チーム
  (奈良修、実井謙二郎、三代直樹、中馬大輔、高橋健一)
  ■女子日本チーム
  (市川良子、小崎まり、片山弘美 藤川亜希 小島江美子、山口衛里)

総合成績(男子)
日本 2:00:19
豪州 2:00:39
ニュージーランド 2:01:29
ブラジル 2:02:20
アメリカ 2:02:21
ブルンジ 2:02:28
デンマーク 2:02:45
ケニア 2:03:14
南アフリカ 2:03:47
10 メキシコ 2:03:59
11 スペイン 2:04:00
12 コロンビア 2:04:26
13 ポーランド 2:05:25
14 カナダ 2:05:33
15 英国 2:05:45
16 イタリア 2:06:20
17 ハンガリー 2:06:21
18 千葉選抜 2:06:27
19 中国 2:09:38

区間優勝者

10.0 フメルソン・イサー・ベム(ブラジル) 28:08
5.0 デビット・エバンス(豪州) 13:46
10.0 アロイス・ニジガマ(ブルンジ) 28:19
5.0 キム・ギラード(豪州) 13:56
12.195 カールステン・ヨルゲンセン 35:04

総合成績(女子)

日本 2:16:11
中国 2:19:25
ルーマニア 2:20:15
ロシア 2:20:26
米国 2:20:55
ケニア 2:21:24
英国 2:21:47
千葉選抜 2:22:46
ニュージーランド 2:23:48
10 ポーランド 2:24:31
11 カナダ 2:25:45
12 スペイン 2:26:12
13 アイルランド 2:26:53
14 韓国 2:27:09
15 フィンランド 2:28:19
16 チェコ 2:28:19

区間優勝者
10.0 孫迎杰(中国) 31:47
5.0 小崎まり(ノーリツ) 15:46
10.0 片山弘美(NEC九州) 32:38
5.0 藤川亜希(ラララ) 16:07
4.767 小島江美子(旭化成) 15:21
7.428 キャリン・ヌデレバ(ケニア) 23:31

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