98〜99 駅 伝 時 評

10th 出雲全日本大学選抜駅伝
【今年の駒澤は、ひと味ちがうぞ! 】

 週のうち5日、朝のランニングで6キロばかり走っている。今年は春から爽や
かな陽ざしに恵まれたことがない。真夏の朝でさえも曇天つづき、さらに湿気が
やたら高くて、走り出すとすぐに汗まみれになってしまう。秋になっても、すっ
きりしない天候つづきだったが、めずらしく今朝の空は青く澄みわたっていた。
湿気も低かったのだろう。汗をかいても肌にまとわりつくことがない。ひさしぶ
りに清々しく、まさにラン日和というべきであった。

 出雲地方も秋らしい青空にめぐまれ、ランナーたちの思惑はともかく、テレビ
観戦する側の私たちからみれば、まさに駅伝日和というべき天候にめぐまれたよ
うであった。

 「10th 出雲全日本選抜大学駅伝」(出雲大社--浜山公園陸上競技場 6区間
43.1キロ)は、今年も10月10日の体育の日に16の大学、4つの地域選
抜、さらに米国IVYリーグ選抜を加えた21チームが参加しておこなわれた。

 神奈川、駒澤の〈KK〉対決か! その2強に山梨学院が割ってはいり、〈Y
KK〉のまんじ巴の激闘にもちこむか。ダークホースといわれる拓殖大がアッと
いわせるか! 今年も関西勢はとどかないのか……。シーズンの幕開けを彩る駅
伝だけに、いろんな意味でみどころがたくさんあった。

 短い距離の区間が多いこの大会、それゆえスピード駅伝といわれるが、今年は
ほとんど最後まで眼がはなせなかった。観戦する私たちには、まれにみる面白い
レースとなった。1区から3区までは、鹿屋体大、京産大、神奈川大とトップは
めまぐるしく入れ替わった。4区で駒澤がようやくトップに立って、レースは落
ち着くかに見えたが、いちど死んだはずの山梨学院が5区から追撃、6区のワチ
ーラが京産大、神奈川を抜き、ひとたびはトップがみえるところまで追いすがっ
たのである。

 駒澤の2連覇は終わってみれば順当な結果だろう。強力な二人の新人を加えた
今年の陣容は充実している。1区の大西雄三が5位と出遅れ、2区の藤田敦史も
伸びを欠いたが、3区以降の安定した戦いぶりで圧勝した。エースがこけても、
きっちりと帳尻を合わせるころに、今年の駒澤の強さというものを感じる。とく
に4区の北田初男の冷静な走りは圧巻だった。先をゆく京産大(村山豪)、神奈
川大(野々口修)をゆっくりと追いかけ、2.2キロでとらえるのだが、すぐに
は動かない。しばらくようすをうかがいながら併走、あと600メートル付近で一気
にスパートして、二人をまとめて置き去りにした。いかにも4年生らしく落ち着
いていた。だが、その流れをつくったのは3区の揖斐祐治である。恐さを知らな
いこの1年生のスピードランナーこそが、今大会いちばんの殊勲者だろうと思う。

 今回で特記すべきは1区、2区での関西勢力の健闘であろう。第1区は鹿屋体
大の永田宏一郎が昨年につづいて区間賞、日大の山本祐樹ほか関東のエース級の
ランナーたちをまとめて一蹴した。2区では京産大が前田貴史の爆走でトップに
立った。渡辺聡(神奈川大)、藤田敦史をまじえ3人のデッドヒートは、4区と
ともに今大会いちばんの見どころであった。京産大は4位に終わったが、5区ま
では2位をキープしていた。すでにして関東勢と互角に戦える地力がついている。
「大健闘」などと持ち上げられても、それで満足することなく、さらに満足度レ
ベルをあげて、大学選手権では優勝をねらってほしい。

 出雲駅伝は区間距離の関係などから、大学選手権や箱根との関連性はないとい
えるが、各大学の好・不調、成長度などを知るバロメーターにはなる。大学選手
権はやはり今回優勝した駒澤、神奈川が中心になるだろう。神奈川は3位に終わ
ったが選手層が厚さはいちばん。だが駒澤も肉薄、実力差は昨年よりも接近して
いるとみていい。2位の山梨はエース古田哲弘がまだ完全に復調していないので
不安が残る。5位順大、7位中大、9位大東には往年の勢いがなく、今年も1区
で出遅れて10位にもこれなかった早稲田はさらに苦しい。むしろ怖いのは6位
の拓殖大だろう。1区で大きく出遅れながら、2区吉田が7人ぬきで一気に6位
まで押し上げた。確実に地力をつけているだけに、次が楽しみである。

 出雲駅伝は6区(11.3キロ)以外は5〜7キロの短い区間で構成されてい
る。5区まではつなぎの区間で6区だけで勝負をかける。オツオリやマヤカが大
逆転……。いままではそういうレースが多かった。今年はいかにもスピード駅伝
らしく、つなぎの5区まででレースのゆくえは決まってしまった。スピード駅伝
がねらいなら、いっそのこと6区の11.3キロも2つに割って、7区間にしたら
いいと思うのだが、いかがなものだろうか。

総合成績
順位
チーム名
記 録
1 駒澤大学 2:04:48
2 山梨学院大学 2:05:29
3 神奈川大学 2:06:08
4 京都産業大学 2:06:25
5 順天堂大学 2:06:44
6 拓殖大学 2:06:49
7 中央大学 2:07:12
8 第一工業大学 2:08:35
9 大東文化大学 2:09:46
10 日本大学 2:10:06
11 早稲田大学 2:10:10
12 東洋大学 2:10:33
13 広島経済大学 2:11:04
14 鹿屋体育大学 2:11:20
15 米国IVYリーグ選抜 2:14:10
16 中国四国学連選抜 2:15:31
17 東北学連選抜 2:16:00
18 北信越学連選抜 2:16:18
19 北海道学連選抜 2:16:25
20 立命館大学 2:17:53
21 愛知工業大学 2:21:23


区間優勝者
区間 チーム名 選 手 名 記録
第1区
鹿屋体育大学 永田 宏一郎 0:20:04
第2区 神奈川大学
京都産業大学
渡邉 聰
前田 貴史
0:16:39
第3区 駒澤大学 揖斐 祐治 0:16:00
第4区 駒澤大学 北田 初男 0:15:51
第5区 駒澤大学
拓殖大学
神屋 伸行
東 勝博
0:21:38
第6区 順天堂大学 三代 直樹 0:33:20

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