98〜99 駅 伝 時 評

4th 全国都道府県対抗男子駅伝
【 気魂の走りから、元気をもらった!  】

 雨上がり(?)で、湿度57パーセント、気温11度……。ランナーにとって走り
やすい気象条件だったのだろうか? それとも、前半はフォロー(2.6M)の風が吹
いていたせいなのか。第4回を数える都道府県対抗男子駅伝は1月24日に行われ、
7区間のうち4つの区で区間新記録がとびだした。優勝タイムは惜しくも大会記
録にとどかなかったものの、2時間16分台ならばまずまず、思いのほかの盛りあ
がりをみせてくれた。記録的に低調だった前週の女子駅伝とはきわめて好対照と
いうべきだろう。

 広島、京都、福岡……、これまで優勝チームは年毎に交替、いまだ連覇という
ものはない。それはエントリー構成のせいもあるだろう。7区間のうち、5区間
までを中・高生(高校生3人、中学生2人)が占めていて、年毎に戦力の振幅が
大きくなってしまう。社会人も年毎に顔ぶれが一新してしまうから、最終エント
リーが発表されるまで、ほとんど上位予想も立たないのである。

 今年は兵庫が本命の呼び声たかく、あとは長野、福岡、広島、埼玉、福島、京
都、鹿児島など……。つまり上位候補は高校駅伝の勢力地図と正比例したかたち
になってていた。昨年はオール大牟田で福岡が制したが、今年は西脇工のOB・
現役を軸にした兵庫というわけか。中学生をのぞいて、将来は〈オール佐久長聖〉
〈オール埼玉栄〉〈オール田村〉などという様相になるのかもしれない。

 終始レースを支配したのは長野であった。1区では昨年につづいて佐藤清治が
2.3Kすぎから主導権をにぎり、最後は鳥取の井中との競り合いになったが、持ち
前のスプリント力でねじふせた。エース佐藤が区間新の快走、長野は一気に勢い
にのった。乗りそこなったのは埼玉(32位)、鹿児島(23位)、千葉(47位)などであ
る。埼玉は中盤から上位に進出してくるのだが、結果的には最後まで優勝圏外で
勝負していた。

 今回は各区間ともに激戦、つねに上位がダンゴ状態で競り合い、タイムではな
く順位を争う駅伝のおもしろさに満ちていた。3区を終わった時点で、トップの
長野から10位の茨城まで59秒、5位の兵庫まではわずか29秒、その間に京都、福
島、鹿児島がはいっていた。5区ではトップをゆく長野に福島、鹿児島が追いつ
いてダンゴ状態、さらに兵庫と京都がならんで追いあげ、1位の長野から5位の
京都まで15秒差の激戦となり、6区からこの5チームによるヨードン状態になっ
た。6区を終わった段階では、トップは長野、2位の兵庫まで1秒差、3位の京
都まで7秒差である。さらに京都から16秒差で福島がつづき、20秒差で鹿児島が
追っていた。

 激戦を制したのは兵庫だった。22歳の小島忠幸(兵庫)と34歳の福島正(長野)
のアンカー勝負、7.6Kで小島がスパートして決着がついた。終わってみると兵庫
の戦いぶりは安定していた。1区こそ出遅れたが、2区で6位に押しあげ、3〜
4区では5位をキープ、5区では先の高校駅伝で区間新記録をつくった森口祐介
が快走、トップ長野とほとんど同時にタスキを渡した。6区(中学生区間)では
長野、福島、京都も加わってデッドヒートになったが、トップ長野にくらいつい
た埴岡恭平の粘走が兵庫に勢いをつけた。それにしてもアンカーに小島忠幸とい
う超エースがひかえている兵庫は贅沢というべきだろう。

 福島はアンカーの藤田敦史(駒澤大)が順位を2つあげて2位にとびこんだ。
前週の女子は4位だった。東の福島、西の兵庫……、今や駅伝王国になりつつあ
るようだ。長野は最終区で3位に落ちたが、福島とともに大健闘の部類だろう。
レースの主導権はつねに長野がにぎっていた。各区間どのランナーも粘り強い走
りをみせてくれ、実に爽やか戦いぶりであった。京都も最後まで優勝戦線にのこ
っていたが最後は6位、3区・高岡で貯金できなかったのが響いたようである。

 先週の女子にくらべ、男子の場合は、実業団の選手たち、大学駅伝のスターた
ちが、それぞれ見せ場をつくってくれた。とくに最終区はいろんな意味で興味深
いものがあった。実業団駅伝のヒーロー・小島忠幸を箱根のヒーロー・藤田敦史
が追いかける。こんな光景はめったにみられるものではない。さらに旭化成では
僚友同士の小島忠幸と川嶋伸次が意地をかけて、独自の戦いすすめていた。小島
は兵庫チームの優勝に導く走りに徹するなかで、川嶋は男の意地をかけて区間賞
を狙っていた。22歳の小島に32歳の川嶋が競り勝った。先の実業団駅伝もそうだ
ったが、川嶋は駅伝になれば気迫の塊となる。埼玉を8位から4位まで押しあげ
たその走りに感動を覚えた。

 藤田敦史、小島忠幸、川嶋伸次……、テレビ画面のなかで、それぞれ独自の目
標に向かって爆走していた。若きも中年も、懸命にがんばっている。世の中まだ
まだ、そんなに捨てたものではない。政治の混迷、ながびく不況……、かれらの
ひたむきな走りを観ていると、ふと、そんな湿っぽくて暗い雰囲気をぶっとばす
〈元気〉をもらったような気分になるから不思議である。

☆兵庫チーム  藤井周、大中健祠、木戸真樹、清水将也、森口祐介、埴岡恭平、小島忠幸

総合成績
兵 庫 2:16:50
福 島 2:17:14
長 野 2:17:46
埼 玉 2:17:52
鹿児島 2:17:58
京 都 2:18:14
大 分 2:18:29
広 島 2;18:54
熊 本 2:19:05
10 徳 島 2:19:13
11 福 岡 2:19:35
12 鳥 取 2:19:47
13 愛 知 2:20:10
14 宮 崎 2:20:11
15 三 重 2:20:11

区間優勝者
1区 5.0キロ 佐藤清治(長 野) 14:06
2区 3.0 森本直人(奈 良) 08:34
3区 9.2 入船 敏(鹿児島) 25:41
4区 7.3 大津 誠(福 岡) 21:31
5区 5.0 森口祐介(兵 庫) 14:28
6区 3.0 難波祐樹(京 都) 08:51
7区 14,5 川嶋伸次(埼 玉) 41:41
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