98〜99 駅 伝 時 評

99 横浜国際女子駅伝
【 実力ある個性派ランナーたちの競演 ! 】

 横浜国際女子駅伝……。駅伝シーズンの最後を飾るお祭りレースである。出雲
(10/10)で始まった今シーズンも2月28日の横浜国際で閉幕となる。そして駅伝
が終わるころからプロ野球のオープン戦が始まる。3月いっぱいでマラソンも終
わると、テレビのスポーツ中継は完全に主役交代となる。

 プロ野球といえば、今年の目玉ともいうべき西武・松坂大輔が、奇しくも同じ
日、オープンに登板した。阪神戦に初先発した松坂は2回を投げて2安打1失点、
3奪三振という成績だった。2回に大豊に本塁打されたものの、最高球速148
キロのストレートに大器の片鱗をみせた。とても高校出のピッチャーとは思えな
い……という評がもっぱらである。
 高校生と思えないといえば、藤永佳子(長崎・諫早高)……。期待通りといえ
ばそれまでだが、全国の駅伝ファンをあらてめてアッと言わせた。終始、白い大
きな歯をのぞかせ、笑っているとも喘いでいるとも判別つかぬ面立ち、どことな
くあどけないその表情は松坂と一脈通じるものがある。……

 99横浜国際女子駅伝は2月28日に行われ、昨年につづいて1区からトップに
立った日本代表がぶっちぎりの圧勝、5年連続7度目の優勝でシーズン最後のレ
ースををしめくくった。1〜4区まで連続で区間賞、5〜6区も区間2位という
成績だから、まったく危なげなかった。

 中国、ルーマニアが優勝に絡んでくると思われたが、ともにそれほどヤル気が
なかったようで少々物足りなさを感じた。今年の日本代表はそれにしてもクロウ
ト好みの実力派ランナーぞろいだった。闘志のかたまり・高橋千恵美、走る貴婦
人・田中めぐみ、野性味あふれる小鳥田貴子、優雅・竹元久美子、華麗・永山育
美……。いずれも昨年から今年にかけて急成長したロード・ランナーたち、いず
れもユニークな個性の持ち主である。

 勝ってあたりまえ……。前半は高橋千恵美、田中めぐみ、後半は竹元久美子、
永山育美……。日本代表にはスキというものがなく、2重3重のリカバリーが利
くチーム構成になっていた。最優秀選手賞に輝いた高校生・藤永の快走は、そう
いう用意周到な布石のなかから生まれるべくして生まれたといえる。

 たとえ失敗しても……。後の先輩たちがかならず挽回してくれる。藤永の1キ
ロ=3分3〜7秒というハイペースの飛び出しは、そういう精神的な余裕が生み
出したとみる。逆にいえば、高橋以下の一クセも二クセもある強者に担ぎあげら
れて、怖いモノ知らずの藤永は踊ったのである。お祭りに参加するつもりで(走
った)……と自ら言う藤永は、3キロすぎで、中国、タンザニアを振りきった。
最後まで区間新記録の期待がかかる快走ぶりであった。(結果的には7秒足りな
かったが……)藤永の1区起用を決断した監督・コーチ陣の名演出ぶりを高く評
価しておきたい。

 レース半ばから興味はもっぱら中国と九州選抜の3位争いにしぼられた。昨年
2位の九州選抜は今年も大健闘、1区で15位と出遅れたが、2区の岡本幸子が11
人抜きの快走(区間3位)、一気にチームに弾みをつけた。まるでコバンザメの
ように菫朝霞にくらいついて離れなかった松尾里美の闘走、最終区で逆転した藤
丸麻美の粘走……、駅伝のおもしろさを満喫させてくれた。

 今年も地域選抜チームが健闘、九州のほか10位までに近畿、中国・四国、東海
・北陸が入った。とくに5位の近畿は若手中心のオーダーながら一時は中国を押
さえるほどの勢いであった。3区堀江知佳(須磨女子高)の区間3位(19:56)は
大健闘の部類だろう。

 女子長距離は確かに選手層が厚くなった。藤永や堀江などニュースターがどん
どん出てくる。だが一方において、女子選手の消長は実にはげしいものがある。
同じ日、99大阪シティハーフマラソンに出場した日本のエース・千葉真子は古傷
がぶりかえし、15キロ付近であえなく棄権した。復活にはまだまだ時間がかかり
そうである。

 高校時代から注目された期待の女子ランナーたち、けれども数年でツブれてし
まうケースが多いような気がする。女子の場合、体調の維持がむずかしいせいも
あるのだろうが、選手育成のシステムやトレーニング方法にも問題があるのでは
ないかと思えてならない。

 有望な選手が消耗品のように消えゆくのは、なんともモノ悲しい。目先だけの
結果をもとめるのではなく、長いスパンで選手育成を考えてゆく。頑丈で息の長
い女子ランナーを育てるシステムを確立してほしいものである。

☆日本代表チーム
 藤永佳子 高橋千恵美 田中めぐみ 小鳥田貴子 竹元久美子 永山育美

総合成績
1 日   本 ◎2:15:06
2 ルーマニア   2:16:45
3 九   州   2:18:22
4 中   国   2:18:42
5 近   畿   2:20:11
6 中国・四国   2:21:05
7 ロ シ ア   2:21:11
8 東海・北陸   2:21:15
9 ポーランド   2:21:44
10 米    国   2:22:23


区間優勝者
1区 5キロ 藤永 佳子(日  本) 15:36
2区 10キロ 高橋千恵美(日  本) 32:19
3区 6キロ 田中めぐみ(日  本) 19:24
4区 6.195 小鳥田貴子(日  本) 19:17
5区 10キロ タルボス(ルーマニア) 32:31
6区 5キロ ジョセフ(タンザニア) 15:27

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