オウム真理教現在の実態 「組織再興を図る」公安調査庁
(1997/8/26 毎日新聞ニュース速報より)
公安調査庁は26日、オウム真理教の現在の組織実態を発表した。
今年1月の教団に対する破壊活動防止法の適用見送り以降、資金調達や信徒獲得活動を活発化させる一方、教団への強制捜査で逮捕された信者427人のうち、ほぼ3分の1に当たる138人が刑期を終えるなどして教団に復帰したことを確認したという。同庁は「人的にも資金的にも組織の再興を図っている」として教団を監視する必要性を強調した。
◇人気アニメで勧誘◇
教団の名前を隠して信者を獲得する方法は相変わらず。人気アニメ「エヴァンゲリオン」の上映会も行い、それを勧誘の手段に使っている。「21世紀に人類がなぞの使徒に襲撃されるというストーリーが、教団が主張してきたハルマゲドン(世界最終戦争)と共通する要素があり、それを利用している」と同庁は見る。信者が恋愛感情を巧みに利用して異性を勧誘する方法も復活させた。
◇ノルマと特典◇
信者には勧誘のノルマを設け、さらに修行の達成の度合いに応じてステージ(階級)を上げるなどの特典を与える「ポイント制」を導入した。教団主催の説法会は、昨年後半には月20回前後だったのが、最近は月80回以上と急増。4月と8月の全国規模のセミナー2回で約4000万円の収益を上げたという。
◇資金集め◇
破防法適用見送り以後、封鎖されていた各地の教団施設を再開している。今年5月に100人以上収容できる「東京本部道場」を東京都新宿区に設け、死者7人を出した松本サリン事件が起きた長野県松本市や、仙台市など5都市で支部活動を再開させたという。施設は信者や関連会社名義で借り、刑事裁判で脱会を表明した元幹部が取得に協力しているケースもあるという。
公安調査庁が教団の関連会社として認定したのは、企業12社と個人名義の5店舗。パソコン部品や書籍などを販売し、従業員の信者は月1万円前後の生活費を受け取るだけ。巨額の資金が教団に流れていると同庁は見ている。
オウム真理教の荒木浩広報部副部長は26日、記者会見を行い、関連会社は1社だけで、パソコン販売などは信者が行っているが、教団の出資や売上の上納はないと主張し、同庁の発表内容を否定。一方で教団の収入・支出は「データがない」と明らかにしなかった。
インターネットの教団のホームページに松本智津夫(麻原彰晃)被告の説法などを掲載し始めたことについて、荒木副部長は「私たちが何を信じているか理解してもらわなければならない。尊師(松本被告)の説法は教義の原則的なものであり、個人崇拝しているわけではない」と話した。