松本被告公判 証言拒否の過料は不適切−弁護団
1997/6/21 毎日新聞より
オウム真理教の松本智津夫被告の国選弁護団は、19日の第41回公判後の記者会見で、林郁夫被告の公判に証人出廷しながら証言を拒否した松本被告への過料について、「性急で、適切な処分とは言えない」と疑問を呈し、松本被告の意向次第で、期限の20日に即時抗告(注)する可能性があることを示唆した。
松本被告は17日の林被告公判で宣誓書への指印を拒み、刑事訴訟法に基づいて裁判長から過料10万円を命じられていた。会見した渡辺脩弁護団長は「(証言拒否には)麻原被告の都合のよさを感じる」としながらも、「彼の姿勢を糾弾するだけでは何も解決しない」と述べて、複雑な心境を示した。
(注)即時抗告とは
裁判所が下す「裁判」(未確定のもの)に対する不服申し立ての一種です。
不服申し立ては、その対象となる「裁判」の種類に応じて、「控訴」「上告」「抗告」の3種類があり、これらを「上訴」と呼んでいます。
この「上訴」の内、「判決」に対する不服申し立てが「控訴」(主として高等裁判所)、「上告」(主として最高裁判所)であり、「決定・命令」に対する不服申し立てが「抗告」です。
「抗告」は、最高裁に申し立てる「特別抗告」とその他の「一般抗告」に分けられ、さらに「一般抗告」は「通常抗告」(期間制限のないもの)と「即時抗告」(決定告知から3日間に限定されるもの)に分けられます。(刑訴法422条)
今回は、宣誓証言拒絶に対する過料を命じた裁判所の「決定」が問題となっています。
刑事訴訟法第160条は次のように規定しています。
「@証人が正当な理由なく宣誓又は証言を拒んだときは、決定で、10万円以下の過料に処し、かつ、その拒絶により生じた費用の賠償を命ずることができる。
A前項の決定に対しては、即時抗告することができる。」
証人が証言を拒否できる場合とは、刑事訴訟法第146条に、
「何人も、自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受ける虞のある証言を拒むことができる」と規定されており、これは憲法第38条1項に基づいています。
今回、松本被告は、証人として召喚され、出頭しましたが、宣誓をせず、名前すら満足に答えませんでした。このため裁判所は上記160条により10万円の過料を課したものです。