最近の国選弁護団の活動を見て
1997/6/30
by takizawa
麻原国選弁護団の渡辺団長は、12名の弁護団は常に一体であり、複雑に絡み合った多数の事件について合議をしながら弁護活動を進めている。だから、単純な分担制は不可能だと断言した。また、国選弁護団は、事件の「真相」の徹底究明を目指している、とも言った。
しかし、江川さんの傍聴記や、自分自身の傍聴体験、その他日頃の法廷情報に触れていると、本当にそのような「一体」の、しかも「真相究明」に資するような弁護活動が行われているのかと、首を傾げたくなることがある。
それは、尋問を担当する弁護士によって、尋問の「質」に大きなバラツキが感じられるからだ。微々細々にわたる事柄をしつこくしつこく聞く尋問があるかと思うと、本当に聞いてほしい「事件の核心」部分について検察調書をなぞった尋問だけでお茶を濁し、精神訓話的意見を押しつけるだけのような尋問もある。
細かくしつこく聞くこと自体は大変結構であるが、何を獲得目標にしているのかわからないような尋問が少なくない。我々弁護士が見ていてよくわからないのであるから、一般の人はもっと理解できないであろう。
「まだ裁判の途中である。尋問の成果などすぐ目に見えるものではない。目的が簡単に見えてしまっては反対尋問にならない。」いろいろ反論もあるであろう。弁護団には弁護団の事情も考えもあるのであろうが、残念ながらそれが我々に伝わってこない。我々に伝わらないと言うことは、裁判官にも伝わらないということである。この裁判は弁護団の自己満足のためにあるのではない。
弁護団が検察官の提出した供述調書を不同意にしたのは、法廷の証人尋問で「真相」を明らかにするためであり、その尋問の機会を逃しては、もはや他に「真実」を発見するチャンスはない。弁護団全員の英知を結集し、吟味に吟味を重ねた最高水準の証人尋問が行わなければならない。一問一問の「尋問事項」について、全員で十分検討がなされなければならないはずである。
ところが実際には、嫌がらせをしているとしか思えないような、目的の見えない微細尋問、傍聴席の大半が居眠りをしてしまうような緊張感の無い尋問、傍聴人がここをもっと突っ込んで聞いてほしいのにー、とイライラするような尋問が少なくない。どれも、まさに準備不足以外の何ものでもなく、「真相究明」のチャンスを自ら放棄しているに等しい。
江川さんが鋭く指摘した。
松本被告の「不規則発言」には、核心を突くような尋問の際には大きくなり、ダラダラ尋問の時には大人しくなるという「規則性」があるというのだ。
弁護団の尋問の「質」にもっとも敏感なのは、松本被告本人と傍聴席、そして、もっとも鈍感なのが・・・・
しっかりしろっ!国選弁護団!!