麻原公判傍聴記
1996/11/8
1996/11/8 本日、オウム真理教教祖麻原彰晃こと松本智津夫に対する第15回公判が東京地裁(阿部文洋裁判長)で開かれ、傍聴してきました。内容は、地下鉄サリン事件について、元幹部井上嘉浩証人に対する弁護側からの2回目の反対尋問です。
朝法廷入り口で江川紹子さんに会うと、開口一番「松本劇場へようこそ!」。
ご存じの通り、前日の公判で、「死刑場に連れて行け」「わたしを精神病院に入れるためにやっている」「洗脳やレーザー銃をやめてくれ」「ギロチンや飛び降りる音がする」「もともと国選弁護団なんて存在しない」などと阿部裁判長の制止を聞かずに意味不明の発言を繰り返し、ついに退廷命令を食らった松本が、今日は一体どんなパフォーマンスを見せてくれるのか皆楽しみにしておりました。
入廷した松本は、拘置所が寒いのか、紺色のリーボックのウィンドブレーカーを着、紺色のダブダブのズボン、茶色のサンダル履きという出で立ち。髪とひげは相変わらず雀の巣状態。髭でわかりにくいが、顔色は悪く、頬がこけたよう。被告人席で足を投げ出すように越して腰掛け、時折顔や髭をぼりぼりかいたり体を揺すったりしています。当初クルタを着て出廷することを求めたり、現実に修行服で出廷するなどして、法廷でも教祖としての威厳を保とうと一応努力していたと思われる松本ですが、今日の姿は、教祖の威厳も何もない刑事被告人そのものでした。
さて、昨日の今日でしたが、一転してほとんど無表情、井上被告の証言を黙って聞いていました。 井上被告は、9月の検察側主尋問で、地下鉄事件2日前に村井秀夫が「地下鉄にサリンをまけばいい」と提案し、松本被告が犯行を指示した「車中謀議」を初めて証言。前回の反対尋問では仮谷さん監禁致死事件なども「松本氏の指示でかかわった」と述べていました。それを受けて今日の反対尋問では、証言の不明確な点や他の被告との矛盾点などをかなり細かく問いただしていきました。それに対し井上被告は、はっきりとした少し甲高い声で早口に証言を繰り返し、特別言い淀むところもありませんでした。
午前中は、拍子抜けするくらいに静かな法廷でしたが、11時40分頃、尋問中、松本被告が突然「水を飲んでいいですか」と発言し、裁判長の許可を得て、コップが手渡されました。ところが手に持っただけで全く飲もうとせず、ジッとしています。裁判長が「飲むなら早くのみなさい」といっても聞きません。また何かやるのではないかと傍聴席が色めき立ち、尋問も集中できない状態となりました。そこは手慣れれた阿部裁判長、直ちに午前の審理を打ち切って休廷とし、続きは午後からということになりました。
午後1時、再開された法廷で、井上嘉浩被告に対する尋問が、大阪VX事件、仮谷さん事件、永岡さん事件などに及んだとき、松本被告は突然「裁判長」と静かに立ち上がりました。阿部文洋裁判長が「昨日と同じじゃ駄目ですよ」と制止しましたが、「事件全体についての尋問が行われており、私の立場を明確にしたい。私の愛する弟子たちのために話す必要がある。今述べるのが最高だ。事件の背景にある彼らの美しい真実の姿を述べなければならない。話は15分くらい。」などと淡々とした口調で述べました。
弁護団と10分間ほど協議していましたが、結局この段階では弁護団も証人尋問を続行するということになりました。
さらに午後2時すぎにも「被告人の発言はいかなる裁判でも認められている」などと意見陳述と被告人質問を求め、弁護団も「15分くらい陳述を」と要求しましたが、阿部裁判長は許可しませんでした。
しかし、松本被告が初めて全体的な起訴事実について意見陳述する意向を示したことは大きな意義があります。阿部文洋裁判長はその当たりをにらみながら、「次回冒頭に認否としてやってもいい」として、反対尋問を続行させたものです。
さて、井上被告は、警察庁長官銃撃事件で「銃で撃った」と供述している元信者の警視庁巡査長との関係について質問された。地下鉄サリン事件直前には巡査長から捜査情報を受けていないとする井上被告に、弁護人は「本当は受けてたんでしょ」と詰め寄り、井上被告は一段と大きな声で「一切ない」「うそついてどうするんですか」などと強く否定する言葉を繰り返しました。地下鉄事件前には接触していないとし「巡査長だしレベルも低く捜査状況について知らないなと思った。部下からは公安のスパイじゃないかと言われ、全面的には信用していなかった」などと述べました。
次回は、11月21日、地下鉄事件の実行犯とされる元幹部豊田亨被告への検察側主尋問が予定されています。そして、井上被告に対する証人尋問の続行は翌22日です。今度は何をしでかすのか全く予断を許しませんが、松本がどの様な認否・意見陳述をするのか一応注目しましょう。
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