坂本事件民事裁判終了
1999/7/9
1999年7月9日(金)午前9時30分,横浜地方裁判所101号法廷において、坂本事件民事損害賠償請求訴訟の口頭弁論が開かれました。
先日もご案内した通り、最後に残っていた新實被告が突然請求を認諾したため、否応なく本裁判は終了することになります。
「請求の認諾」というのは、理由や内容はともかく、原告が請求している「結論」部分を認めるというもの。つまり、「払いますよ。言うとおり払えばいいんでしょ!」ということで、事実を認めたのでもなければ、謝罪したのでもありません。
民事訴訟法203条により、認諾があったことを裁判所が調書に書けばそれでお終い。判決も出ません。
前回、「原告の請求通りの判決が下される」と書いてしまいましたが、それは間違いです。お詫びして訂正いたします。
つまり、原告の方では、そんなことは認めない。最後まで証拠調べをしてきちんと事実認定をしてくれ、と言うことはできないのです。
普通、裁判は勝つことが目的ですから、被告が認諾すれば万々歳ですが、本件のように真相究明自体が目的であり、しかも勝ったからといって現実にお金が取れる目処の全くないようなケースでは、「認諾」による終了は最悪の結末といってもいいでしょう。
1999.7.9 9:30am 横浜地方裁判所101号法廷
出頭者
原告側 大山友之、坂本さちよ、弁護士10数名
被告側 不出頭
裁判長)新實被告から請求認諾の書面が提出されました。これで本裁判を終了することになりますが、最後に原告の方で意見はありますか?
大山友之)陳述書要旨朗読
「殺人集団・鬼畜集団オウム真理教の魔手によって一家3人の生命のみならず、私たち親子三代の人生全てを奪われてしまった」
※19頁に及ぶ陳述書は大山さんが自ら書かれました。現在の心境、法制度に対する思い、反省の見えない実行犯、良識のない神奈川県警、新實智光被告の認諾について、等々この裁判が終わるにあたっての複雑な思いを切々と述べられています。追って全文掲載します。
坂本さちよ)
裁判の終結を迎えて、これまでご尽力いただいた裁判官、管財人、弁護士の皆さんに改めてお礼を申し上げたい。
今の心境は、大山さんが述べたことと同じです。
オウム真理教が未だに全く罪の意識を感じていないこと、そして人の心を全く持っていないことが許せません。松本、地下鉄のサリン事件で何の罪もない人々を大勢殺し、それを何とも思わないオウム。この裁判で何とか人間の心をかいま見たいと思っていましたが、それが全くなく、とても残念です。
その後もオウムがどんどん大きくなっていることをテレビなどで見るに付け、どうしてこうなって行くんだろうと思っています。国民全体で考えていただきたいと思います。
岡田尚弁護士)
生きて帰れと3人を探し続けた5年10ヶ月。しかし3人は当日に殺害されていました。この民事裁判を提起した思いは一つ、事件の真相を究明したい、それだけです。
また、弁護士に対する卑劣な業務妨害事件であり、その意味でも真実を究明しなければなりませんでした。
しかし、結局この裁判でも、真相究明が十分になされたわけではありません。
我々は可能な限りの立証活動をしました。しかし東京地裁が刑事記録の送付に応じなかったのは残念です。他方,当裁判所がアパートの現場検証を実施して下さったことは評価したいと思います。坂本事件で裁判官が現場を訪れたのはこのときだけです。また、早川、岡崎両被告を証人として尋問したことも大きな意義がありました。坂本さん一家をその手にかけた犯人をほんの1・2メートル前に置いて、なぜ坂本さんなのか、なぜ殺されなければならないのか、なぜ無関係な二人までも殺さなければならなかったのか、など聞き出したかった。しかし2人の証言は責任逃れに終始し、全く不十分な思いでありました。他方、警察の対応の不十分さも浮き彫りになった。
現在、オウム真理教は法的には存在しないのですが、現実には厳然と存在し、活動を続けています。被害者に対する謝罪も反省もなく、どんどん活動を拡大しているのです。
本裁判は終了いたしますが、決して私たちの追及活動が終わるわけではありません。あらゆる手段を持って真相を究明し、オウムを追及し、原告らの悲しみに応えていかなければならないと考えます。