松本公判第31回
オウム教団の宗教法人認証へ圧力
坂本事件の動機立証へ
松本智津夫被告の第31回公判が27七日、東京地裁(阿部文洋裁判長)で開かれた。
教団の宗教法人認証の経緯について、元東京都総務局行政部指導課宗教法人担当主査(現国際部旅券課係長)を証人尋問。元主査の尋問は、坂本弁護士一家殺害事件の動機の一つを立証するため、検察側が申請したもの。
証言の要旨は次の通り。
「1987年から教団は宗教法人の認証を求めて相談に訪れていた。
しかし、信者の家族らから苦情が続出していたこと、教祖の血を飲む儀式があったこと、主要施設が賃貸だったことなどから、当時の指導課長は「慎重に扱うべき」との見解で、申請の受理を保留していた。警視庁などからも教団についての情報が寄せられていた。
これに対し、松本被告は、「早く受理しろ」と都庁に押し掛け、さらに認証しないのは違法として提訴。
その上信者らから二百本を超える電話が指導課や副知事の自宅などに寄せられた。
指導課内では認証すべきでないとの意見もあったが、教団が訴訟を起こしたこともあり、文化庁とも協議の上、認証申請を受理した。こんな宗教団体は初めてだった。」
こうして都は、理不尽な圧力に屈し、89年8月に宗教法人の認証をした。
背後に政治家が動いているのではないか、との噂もあるが、真相は全く分からない。
しかし、一年以内は裁判手続きなしで取り消しうるため、教団に違法行為やトラブルが発覚すれば、即アウトの状況であった。
ちょうどそのころ、坂本弁護士は、教団との対立関係を強め、認証取り消しを求める運動を始めていた他、TBSのインタビューや週刊誌などで教団を批判する活動をしていた。松本被告はようやく手に入れた虎の子「宗教法人認証」を取り消させてなるものかと、「邪魔者」坂本弁護士の殺害を決意するに至ったものであることは疑問の余地がない。
−不規則発言−
松本被告はこの日も開廷直後から証言に割り込み、「保釈されているはずだ」「みんな無実と言っている」などと意味不明の独り言を繰り返した。