今日の松本公判(96/11/21)
松本被告のわがまま認められず
地下鉄サリン実行犯豊田被告が松本被告を批判
21日東京地裁で開かれたオウム真理教の松本智津夫被告の公判で、検察側証人として出廷した元幹部豊田亨被告は、松本被告の最近の言動について「怒り、憤りを通り越し、悲しい感情に駆られる」と厳しく批判した。
豊田被告は、まず「地下鉄日比谷線でサリンを散布する実行行為をしています」と述べ、村井秀夫元幹部からの犯行の指示を「松本被告の指示と思った」「指示には何か深淵(しんえん)な意味があり、(指示された内容は)救済と考えた」などと証言。次々と事件前の経緯を明かしていった。
尋問の中で被害者への思いを聞かれ、同被告は「犯人を殺してやりたいと遺族の方が言っているのを聞いた。しかし、今の僕たちは殺されることすら許されない」と、うつむきながら言葉を絞り出す。「知っている事実を話すのがせめてできることです」と付け加えた。
また、同被告は、積極的に証言した理由について、松本被告が退廷させられた公判の様子などを伝えた新聞記事を読んで、「(松本被告が)初公判で地下鉄サリン事件の背景になった考え方に触れず、失望と落胆の気持ちが強まった。破防法の弁明では一転して教典の翻訳者と発言したりし、矛盾を感じた」と述べた。さらに「こうした言動は単に一貫性がないでは済まされない。」とし、「松本被告は以前『宗教の指導者は責任が重い』と話していた。本当のことを話してほしい」と批判した。
最後に豊田被告が「(地下鉄サリン事件を)実行した自分の愚かさを後悔しても仕切れない」と言うと、松本被告は座ったまま「それについてわたしは…」としゃべり始めたが、阿部文洋裁判長に「静かにしてなさい」と制止され、黙り込んだ。
これにより、これまで検察側証人として出廷した信徒被告のうち、証言を拒否した遠藤誠一被告を除く四被告がすべて、松本被告から指示があった、との認識を示したことになる。
松本被告が退席を求め始めたのは証言が始まって約30分後。
最初は弁護人に話し掛け、弁護人が「被告は熱があって体調が悪いので、退席させてほしい」と求めた。さらに松本被告は「体調が少し悪いもので」「退廷させてもらいたい」と再三退席を求めたが、阿部裁判長は「我慢しなさい」と認めず、公判を続行した。
その後も松本被告は落ち着かない様子で、顔をしかめたり、首を回したりした。
10月の公判から体の変調を訴える松本被告は拘置所の房内で暴れ、国選弁護団との接見も拒否。今月7日の公判では「死刑場に連れて行け」などと発言を続け、退廷を命じられている。
地下鉄サリン事件の実行行為は断じて許し難い。しかし、松本被告の言動に失望と落胆の気持ちを抱き、面と向かって批判できるようになっただけまだ救いがある。多くの信者が未だに松本被告への信仰帰依を捨てていない現状を見るにつけ、一刻も早く真実の姿に目を向けてほしいと願わずにいられない。