オウムウォッチャー芳賀氏の
オウム裁判番外編
3月27、28日 麻原彰晃公判
<3月27日>
国選弁護団の出廷ボイコット騒動後、初の裁判は坂本弁護士事件の審理が行われた。
27日の証人尋問には、平成元年にオウム審理教の宗教法人化を担当した都職員が出廷。
「未成年の出家者に家族が会わせててもらえない」との苦情が約20件あったことを証言した。
さらに、血のイニシエーションやセックスを用いたイニシエーションなど“社会通念上”問題のある点についても、口頭で見解を求めると、教団側は「家族とのトラブルは宗教上の問題。セックスの修行は特殊なもので現在はやっていない。血のイニシエーションは過去に1度で今後は考えていない」などと回答したという。
その後、麻原らは200人以上の信者を連れて都に文化庁に陳情。「早く受理すべき」と口々に叫んでいた。
さらに、青山元弁護士が現れ、内容証明も送付され「申請を受理すべき。決定を出されなければ行政訴訟を起こす」と脅しをかけた。
その後、6月には坂本弁護士が来訪。平田雅之の親らも訪れ、「絶対に認証しないでほしい」と訴えた。だが結局、東京都は8月25日「家族とのトラブルなどはあったが、法令違反に該当する問題の事実が確認できない」との理由から、宗教法人とすることを認めた。
続いて、文化放送「本気でドンドン」の当時のディレクターが出廷。サンデー毎日の記事をきっかけに番組で取り上げた経緯などを証言した。
10月9日、第1回目の放送は麻原や18歳の男性信者らが出演。麻原は未成年の出家問題について「報道はすべてウソである。否定はしないが、未成年も含めて信仰の自由はある」などと発言し、麻原が紹介する形で出た男性信者は「一生修行したい」と話した。
また、お布施については「ケースは色々。無料のセミナーもあり数千円から数万円まで。強制的ではない」などと答えた。この後、麻原は木村弁護士や宗教評論家の丸山照男氏らと激しくやりあった。放送終了後には「内容は大変偏っているので抗議文を送りたい。責任者の名前を教えろ」と電話があり、女性のチーフ・プロジューサーMの名前を教えたという。
10月16日2回目の放送。坂本弁護士も出演し「消費者被害を救済するという印象で携わることになった」と話していた。
上祐からは抗議があり、「番組で対決させろ」などと要求。抗議文でも「謝罪せよ。さもなくば法的手段に訴える」などとする2通が届いた。さらに、文化放送周辺でもスピーカーを使って抗議、都内でビラがまかれたほか、Mプロジューサーの自宅周辺の電柱や塀に名前や電話番号まで書かれたビラがはられ、恐怖を感じたため家族ともども一時、ホテル暮らしを強いられたこともあったという。
文化放送側も11月10日ごろ、当時の世田谷本部に申し入れを行い、対応した上祐が「放送局として謝罪するのはメンツが立たないだろうから、麻原尊師だけが出演する番組をやれ」と荒唐無稽な意見を言ったため、その場で断った。上祐は「黙ってはいないぞ」とさらに脅す。その後も抗議は続いたが、なぜか「坂本弁護士一家が行方不明になっていると報じられると、その日を境に一切抗議がなくなった」という。
<3月28日>
サンデー毎日の当時の取材キャップで、現次長が出廷。牧編集長経由で信者の家族からオウムの情報が入った経緯を証言した。
掲載が決まる前の取材で、「生ごみを指定期日以外に出す」「コンテナに入れた子供が騒いでパトカーが来た」「麻原が『ヒマラヤで修行した』という時期は、薬事法で逮捕されていた」などが次々明るみに。
平成元年9月27日、はじめて取材を申し入れると、麻原は「不在だ」と出ず、代わりに来たのは妻の知子。種々の質問に「未成年は親の承諾を得ている。(麻原の)前科は不起訴。コンテナの件は一切ない」と返答した。食い下がるサンデー毎日は「薬事法は起訴になっているし、罰金となっている。パトカー来たのも確認している」と言うと、知子は突然「不法侵入だ」とわめき取材は打ち切られ、追い返されたという。このため、証人は「ウソが通用しないと、高圧的で攻撃的になる面が強い」との感想をもったと証言した。
さらに翌日、家出届けが取り下げられた信者の母親が心配になり、再取材すると、再び知子が応対。「そんな信者は名簿にない」と答えた。
結局、10月2日に第1弾が発売。その日に麻原は5〜6人の信者を引き連れてサンデー毎日編集部を襲撃。「出家は自由意思だ」と話すあたりまでは穏やかだったが、「未成年に30〜40万円は高いのでは」というと、「いくらならいいんだ。話にならん」とイスを蹴って立ち去った。
証人の印象は知子に負けず劣らず「都合が悪いと騒ぎ、エキセントリックになる」と感じたという。
その後はおなじみの抗議行動。ビラをはりまくり、10月11日にはビデオを回しながら上祐が現れ、「デタラメだ」と抗議。「記事の前に質問しろ」という要求に、「教祖からワイセツ行為をされた女性がいるが」と質問すると、「彼女には虚言癖がある」と自分を棚に上げた回答を送ってよこしたという。
また坂本弁護士と10月25日に会った際についても証言。
「布施を返還させ、子供の目を覚まさせるため欺瞞を暴きたい」「被害者の会もでき、集団で裁判ができる。血のイニシエーションの100万円返還訴訟で証明されればウソとわかり、きちんとした教団になる」と向きな発言をしていたという。
続いて、血のイニシエーションを100万円返還訴訟を坂本弁護士に依頼した元信者K氏が証人として出廷した。
K氏は、前出のサンデー毎日編集者の紹介で11月1日坂本弁護士に相談。委任状を書いた。しかし、その後は事件に。K氏は「裁判は立ち消えになった。横浜法律事務所は探すが先という感じであきらめた。自分より数多くの被害者がいることの方が問題。金はドブに捨てたと思っている」と述べた。
<麻原の様子>
弁護団の欠席では消え入るような声だったクセに、やはり“寂しがり屋”なのか、両日とも不規則発言は絶好調。
27日にはいきなり「保釈の許可が出ている。身元引き受け人は中央大学中沢新一先生でいい。さもなくば、フリーメーソンのリーダーの主任弁護人(実名)でいい」などと言うことはメチャクチャ。
証言に割って入り、サンデー毎日次長からは「被告人、静かにしてもらえませんか」と怒られてしまう情けなさ。
それでも、「ワイセツ行為があった…」との証言中には、「あの女性は拉致事件に関与した。精神病の薬も飲んでいるんです」。
自ら子供の数をばらし、「ヤソーダラー(知子)は6人、後は3、2、1といる。よろしく頼むぞ」「つまり暴行、強姦をするなと言ってるんだ。私の娘なら責任を取ります」などと意味不明発言が続いた。
幸福の科学への敵対心も激しくみせ、お布施の証言中にも「幸福の科学は○万円なんだ。うちよりも高いぞ」と迷走。
法人格も消され、自ら「教祖をおりる」と発言していたくせに、「宗教法人オウム真理教の代表の麻原彰晃だ」などなど、完全に“コワレテ”しまった。
審理上の面ではいずれも予定は主尋問のみだったが、28日の尋問は当初、サンデー毎日次長は2時間、元信者は1時間半のハズだったのが、なんと約1時間づつに大幅短縮。検察側はこれで立証十分と判断したのだろうか。ちなみに、東京地裁公判部は3〜4人を残して、若手、中堅を含めて大幅に移動が決定している。
一方、麻原弁護団は4月の公判も1回は休むことを決めており、審理の行く末は依然、不透明といえそうだ。